29日の日経平均は、596円安の20,109円と急落しました。ギリシャ政府は今日(6月30日)、IMFから受けた16億ユーロの融資を返済する必要がありますが、EUから支援延長を引き出すことができずに、デフォルト(債務不履行)となる可能性が高くなったことが嫌気されました。

ただし、ギリシャ問題の行方にかかわらず、日本の景気・企業業績の回復は続くと考えていますので、日本株は引き続き「買い場」と判断しています。

(1)29日の欧米株式、為替、日経平均先物の動き

  • NYダウ:350ドル安の17,596ドル
  • 独DAX指数:409ポイント安の11,083ポイント
  • ドル円為替:1ドル122.55円(日本時間30日午前6時20分)
  • CME日経平均先物(円建て):20,050円(29日の日経平均終値対比▲59円)

(2)ギリシャは、今日「テクニカル・デフォルト」となる可能性もある

ギリシャは、本日返済の必要があるIMF融資16億ユーロが返済できません。「テクニカル・デフォルト」となる可能性があります。本来は返済能力があるのに、債務継続に必要な条件(コベナンツ)を満たさなくなったためにデフォルトとなることを、テクニカル・デフォルトといいます。

ギリシャは、7月5日にEUが求める緊縮財政を受け入れるかどうか、国民投票を行います。国民投票で緊縮財政受け入れが決まれば、EUの金融支援延長が得られるので、IMFの債務も返済できるようになります。ところが、6月30日時点でギリシャ政府は、緊縮財政を受け入れていないため、6月30日期日のIMF債務は返済できません。

今日の支払いができない時点で、ギリシャに対してすぐに「デフォルト」が宣言されるかは、わかりません。IMFという公的機関への支払いが滞っただけでは、即デフォルトが宣告されない場合もあります。7月5日の国民投票の結果が出るまでデフォルト宣言が控えられるか、あるいは、即デフォルト宣言がされるのか、現時点ではわかりません。

(3)テクニカル・デフォルトとなった後のギリシャはどうなる?

7月5日の国民投票の結果次第で、「ユーロ離脱」へ進むか進まないか決まることになるでしょう。

国民投票で緊縮受け入れが承認され「ユーロ離脱」が回避されるケース

国民投票で、EUが求める年金カットを含む厳しい緊縮受け入れが承認されれば、EUも金融支援を継続するでしょう。そうなれば、7月以降に満期を迎えるギリシャ国債はデフォルトにならないで済みます。緊縮受け入れが6月中に決まっていれば、IMFへの返済もできたわけですが、6月末に間に合わず、テクニカル・デフォルトは確定しています。それでも、デフォルトが6月末のテクニカル・デフォルトだけで済めば、ギリシャは「ユーロ離脱」までは強制されないで済むでしょう。ギリシャは厳しい緊縮を受け入れてEUに留まり、粛々と財政改善を進めることになります。「ギリシャ人の誇りを守るために緊縮財政を放棄する」と宣言して政権をとったチプラス首相はいずれ退任し、ギリシャにはEUと協調しながら財政再建を目指す新政権が誕生することになるでしょう。

国民投票で緊縮受け入れを否決、ギリシャが「ユーロ離脱」を余儀なくされるケース

緊縮受け入れ否決後、以下のことが起こるでしょう。

  • ギリシャ国債もデフォルト
  • ギリシャの銀行預金封鎖は長期化
  • ギリシャ通貨は、「ドラクマ」に戻る
  • 「ドラクマ」が対ユーロで急落
  • 輸入物価が高騰、ギリシャにハイパーインフレが起こる
  • ギリシャ国民の銀行預金は引き出しができないまま、価値が大幅に目減り
  • ギリシャ国民の実質給与(ドラクマ建て)の実質価値も、激減

銀行預金価値も、実質給与も激減するので、ギリシャ国民にとっては、EUの厳しい緊縮財政を受け入れるよりも厳しい状況にさらされるでしょう。そうなることがわかっているギリシャ国民もいるので、7月5日の国民投票では、緊縮受け入れが可決される可能性が高いと考えられます。実際、ギリシャ国内での世論調査では、現時点で緊縮受け入れ派が、拒否派を上回っています。ただし、ギリシャのチプラス首相は、「緊縮受入れはEUへの隷属を意味する」と、国民に「否決」を呼びかけていくと考えられ、最終的にどのような結果が出るか予断を許しません。

(4)ギリシャの銀行預金引き出し規制は長期化の見込み

ギリシャでは29日から、銀行が営業停止しています。銀行からの預金引き出しが止まらないために、ギリシャ政府が資本規制を導入したものです。EUが、ギリシャの銀行への追加の資金支援を拒否したので、ギリシャの銀行が資金繰り破綻するのを避けるために、預金の引き出しを制限せざるを得なくなったものです。

ギリシャが国民投票で緊縮財政受け入れを承認し、ユーロに留まることができる場合でも、ギリシャの銀行への不安は続く可能性が高いといえます。ユーロ残留が可能な場合でも、預金引き出しの制限は続けなくてはならないと考えられます。