24日の日経平均は58円高の20,868円と続伸し、ITバブル時(2000年4月)の高値(20,833円)を超えました。日本企業の利益拡大により、この水準でも日経平均の今期予想PERは、楽天証券経済研究所の予想ベースで15.4倍と割安感があります。日経平均は年末に22,000円まで上昇すると予想しています。ただし、24日のNYダウが前日比178ドル安の17,966ドルとなり、CME日経平均先物(円建て)は20,735円まで下がっています。

今日は、海外で成長する金融株について書きます。

(1)満を持して海外事業拡大に舵を切る大手銀行

海外の利益が成長期に入った日本の3メガ銀行(三菱UFJ FG(8306)・三井住友FG(8316)・みずほFG(8411))の投資魅力が高まっていると考えています。3メガ銀行の海外事業拡大には、3つの追い風が吹いています。

  • メガ銀行の財務が強固になったこと
    海外与信拡大の余力が増しました。
  • 欧州の銀行の財務が悪化したこと
    海外のプロジェクト・ファイナンスで邦銀が競争優位にたつようになりました。
  • 円安が進んだこと
    海外事業利益(外貨建て)の円換算額が拡大しました。つまり、邦銀にとって円ベースで見た海外事業の収益性がさらに高くなりました。

また、邦銀には、海外事業の拡大を目指さねばならない2つの事情もあります。

  • 国内の預貸金利ざや低下
    金利低下と競争激化によって、国内では利ザヤの低下が続いています。より厚い利ザヤが得られる海外与信を拡大していく必要に迫られています。
  • 国内与信の成長性低下
    国内では与信の拡大余地が少なくなっています。上場企業は財務内容の改善が進み、銀行融資に頼る必要が薄れています。大企業与信に代わり、住宅ローンや中小企業与信拡大を図ってきましたが、伸び悩んでいます。日本の住宅ローンは、大企業貸金並みに焦げ付きが少なく利ザヤが高いことが魅力でしたが、大手銀行が一斉に注力したために、競合激化で利ザヤが縮小しました。中小企業向け与信は、審査が難しく簡単には増やせない状況です。

実は、海外与信拡大に注力するのは、日本の大手銀行にとって今回が2度目です。最初に海外与信を積極拡大したのは、1980年代でした。日本企業の海外進出が進むにしたがって、大手銀行も海外進出し、主に日系企業向けの与信を拡大しました。東京銀行(現 三菱UFJ FG)は中南米融資も拡大しました。

ところが、1990年代に入り、邦銀は海外事業の縮小を余儀なくされました。日本の不動産バブル崩壊で財務内容の悪化した邦銀は、海外で資金調達コストが上昇したため、海外で利ザヤが得られなくなりました。さらに、1990年代半ばに、中南米危機が起こると、海外でも不良債権が増えました。

3メガ銀行は、今また、満を持して海外与信の拡大に動いています。1990年代に海外事業縮小を余儀なくされた経験から、無理な規模拡大に走らず、慎重に与信管理しながら与信拡大をはかっています。

(2)「成長性ない内需株」から「海外で成長する株」へイメージが変わると株価評価も変わる

小売株などでよく見られることですが、海外での売上(または利益)の比率が20%を超えてくると、「成長性ない内需株」から「海外で成長する株」へイメージが変わります。すると、PER(株価収益率)で高い倍率まで株価が評価されて上昇することがあります。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)(PER47倍)、「無印良品」を展開する良品計画(7453)(PER33倍)、ユニチャーム(8113)(PER39倍)などは、海外で成長する株というイメージに変わってから、いずれもPER評価が高くなりました。

3メガ銀行は、今後、徐々に「成長性ない内需株」から「海外で成長する株」へイメージが変わってくると予想しています。現在、成長性ない内需株としてPER10倍~13倍で評価されていますが、イメージが変われば、PER15倍以上で評価されるようになると予想しています。

ただし、銀行の大半は、今後とも内需株に留まるでしょう。海外で成長できるのは、3メガ銀行を筆頭に一部の大手銀行に限られると思います。PER評価で、銀行株は二極化すると予想されます。海外で成長する大手銀行株のPER評価が高く、内需株に留まる地方銀行株はPER評価が低く、二極化する可能性があります。

 

3メガ銀行の株価バリュエーション

コード 銘柄名 6月24日株価 配当利回り PER PBR
8306 三菱UFJ FG 912.2円 2.0% 13倍 0.82倍
8316 三井住友FG 5,522円 2.7% 10倍 0.83倍
8411 みずほFG 271.8円 2.8% 11倍 0.84倍

(注:楽天証券経済研究所が作成)

(3)保険業も海外事業拡大へ

も、海外の生保を買収して、海外事業の拡大を図っています。第一生命(8750)です。また、東京海上HLDG(8766)大手保険会社の一部も、成長性の乏しい国内に留まらず、海外での成長を求めるようになっています。それに最も成功しているのが、