8日朝、日本の1-3月GDP改定値が発表されました。前期比年率+3.9%で、速報値(+2.4%)をさらに上回る高成長でした。成長の中身は良好で、景気回復が始まっていることが確認できます。4-6月期も順調に成長が続いていると考えられます。

ただし、8日の日経平均は、前日比3円安の20,457円でした。強弱材料ががっぷり組み合って、目先は上下とも大きくは動きにくい状況です。

日本の景気・企業業績の回復色が強まる
米金利上昇とNYダウ調整が続いている

日経平均は世界的な金利上昇が終息するまで、しばらく上値が重いと考えられます。

(1)1-3月から日本の景気は力強く回復

日本の実質GDP成長率(前期比年率):2012年1-3月期~2015年1-3月期

【注】内閣府データより楽天証券経済研究所が作成。2012年4-11月は内閣府が暫定的に景気後退期と定めている。
2014年4―9月については楽天証券経済研究所では短期景気後退期に該当すると判断

1-3月から景気回復が明らかになりつつあります。「景気回復の実感がない」という人は今でもいますが、景気は確かにしっかり回復してきています。景気回復の恩恵は大企業から先に広がります。中堅・中小企業で景気回復を実感するにはさらに時間がかかります。景気が過熱するまで、個人レベルで広く景気回復を実感することはできないこともあります。

(2)1-3月の成長の中身は良好

今回発表された1-3月GDP改定値で、項目別の内訳を見ると、内容も良好といえます。1-3月GDPは、前期比年率で3.9%増でした。非年率では、前期比1.0%増加しています。その内訳は以下の通りです。

1-3月のGDP成長  項目別寄与度

    1-3月
内需 消費 +0.2%
設備投資 +0.4%
住宅投資 +0.0%
在庫増加 +0.6%
公共投資 ▲0.1%
外需 輸出増加 +0.4%
輸入増加 ▲0.6%
合計 +1.0%

(出所:内閣府)

  • 消費・設備投資の回復傾向がはっきりしてきた
    を0.2%、0.4%拡大させる要因となりました。設備投資の回復がはっきりしてきたことが特にポジティブです。円安を受けた設備投資の国内回帰の動きが出てきていると考えられます。

  • 在庫増加がGDPを0.6%押し上げていることはネガティブ 景気回復が徐々にはっきりしてきた1-3月では、売れ残り在庫が積み上がったというよりは、意図的に在庫積み増しに動いた企業が増えたと考えた方がよいと思います。

  • 公共投資がマイナスであったことはポジティブ
    公共投資によって景気を支えているわけではないことがわかります。

  • 輸出増加がはっきりしてきたこともポジティブ
    円安効果による輸出拡大傾向がようやく明確になってきました。

  • 輸入増加がGDPを押し下げるのは1-3月までと考えられる
    1-3月では輸入増加がGDPの足を引っ張っています。1月の輸入額が大きく影響しています。原油急落前の高値で契約した原油の輸入が1月までは影響しています。既に原油の輸入価格は大きく下がっているので、4月以降、エネルギーの輸入金額は大きく減少すると考えられます。4-6月は輸入減少がGDP押し上げ要因になる見込みです。

(3)世界的な長期金利の上昇が、株式市場にとって重荷

アメリカ・イギリス・ドイツ・日本の長期金利の動き:2013年12月30日~2015年6月5日

(注:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

世界的な長期金利の上昇が続いていることが、株式市場の上値を重くしています。特に、ドル金利の上昇は、世界の金融市場に大きな影響を与えます。

(4)長期金利上昇を引き起こしている3つの要因

  • 米FRBイエレン議長が年内利上げを示唆
  • 原油などコモディティ市況が今年に入ってから反発
  • 日本・米国・欧州に景気回復色

上記3要因によって、目先世界的に金利は上昇しやすくなっています。ただし、原油下落を受けて世界的にインフレ率は低下しており、いずれ世界的な金利上昇は頭打ちになると予想しています。日経平均が再度、上昇基調に入るのは、世界的な金利上昇が止まる時と考えています。ただ、それがいつ頃になるか、慎重に見きわめていく必要があります。