27日の日経平均は、35円高の20,472円でした。これで、なんと9営業日連続の上昇となりました。最近、読者の方からよくいただく質問が、今日のレポートのタイトル「急落のリスクはないか?」です。

今日・明日、考えられるリスクを書き出して、お示しします。

(1)日経平均急落、3つのパターン

過去の急落局面を見ると、3つのパターンがあります。

  • 相場過熱時に、ちょっとした小さな出来事をきっかけに大きく下がる:2013年5月のバーナンキショックなど
  • 相場は過熱していないが、突発的な悪材料が海外で起こって世界的に株が急落する:2008年9月リーマンショック・2001年9月米国の同時多発テロなど
  • 相場は過熱していないが、突発的な悪材料が国内で起こって日本株が急落する:2011年3月東日本大震災など

今から株が急落すると仮定すると、②または③のパターンになります。なぜならば、現在、日本株に「やや過熱感」があるが、とりたてて警戒を要するほどのレベルではないからです。

(2)テクニカルで見ると「やや過熱」しているが、特に警戒を要するレベルではない。

日経平均が短期的に「買われ過ぎか」判断するのに使える、さまざまなテクニカル指標があります。テクニカルでは「やや過熱」しているものの、「はっきり過熱」といえる状態ではありません。

  • 25日移動平均線からの乖離率:2.8%(過熱感なし)
  • 騰落レシオ(25日移動平均):106.9%(過熱感なし)
  • サイコロジカルライン:91.7%(買われ過ぎ)

日経平均の日々の動きと、25日移動平均線からのかい離率、サイコロジカルラインの動き:2015年4月27日―5月27日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

サイコロジカルラインとは、過去12営業日で、日経平均が上昇した日数の比率のことです。日経平均は、過去12営業日で11営業日も上昇しています。下がったのは、1営業日だけです。したがってサイコロジカルラインは11÷12=91.7%となります。これは、とても珍しいことです。通常、上昇相場でも、3日上がれば1日下がるなど、適宜押し目を入れながら上がるのが普通です。12営業日で11営業日もプラスになるのは、株式市場がややリスクに鈍感になっているともとれます。

ところが、25日移動平均線からのかい離率でみると、過熱感はありません。5月27日まで9営業日連続で日経平均が上昇していますが、毎日の上昇率を見ると、小幅です。少しずつじわじわと上昇しているために、移動平均線からのかい離率でみると、特に過熱感が出ません。

(3)バーナンキショックの直前(2013年5月)は、明らかに相場が過熱していた

2013年5月、バーナンキショックによる世界的な株の急落が起こる直前、世界中で株が過熱していました。日経平均の25日移動平均線からのかい離も10%まで開いていました。さまざまなテクニカル指標が、一斉に短期的な過熱感を示唆していました。

そのような状態で、当時アメリカFRBのバーナンキ議長が「将来、金融緩和の縮小が必要になる」と発言しただけで、世界中の株が急落しました。日経平均も1ヶ月で約20%も急落しました。

後から振り返っても、この時は、日本経済にも世界経済にもとりたてて何ら悪材料はありませんでした。バーナンキ発言だけで世界中の株が下げたので、「バーナンキ・ショック」と呼ばれています。今振り返ると、きっかけはなんでも良かったと考えられます。世界中で株が過熱していたので、何か投資家を冷静にするきっかけがあれば、株は自律的に急落しかねない状態にあったと言えます。

(4)現在の日経平均のPERは約16.5倍

株の割高割安を判断するのに使われる最も重要な指標はPER(株価収益率)です。日経平均のPERは今約16.5倍で、特に割高感はありません。日経平均は過去、PER20倍以上に買われることが多かったので、そこからみると、むしろ「やや割安」と言えます。

それでは、日経平均が急落することはないのでしょうか?相場が過熱していなくても、世界や日本で、突如的に悪材料が出れば、急落することはあり得ます。明日、その可能性について検討します。