先週の日経平均は、1週間で353円上昇して、19,732円となりました。米景気への不安が薄らいだこと、発表中の日本の3月決算がそこそこ良好であることが上昇要因となりました。

日経平均は、1-3月の米景気失速と、世界的な長期金利上昇を嫌気して4月後半に一時急落しましたが、5月に入り、戻り歩調です。米景気の減速は一時的で4月以降に回復しつつあると見られるようになったことを受け、日経平均・NYダウとも反発しています。

今週の日経平均は、20,000円前後への上昇を見込みます。ただし、20,000円前後では上値が重くなると想定されます。米景気および世界景気の失速懸念がまだ完全には払拭できていないこと、世界的な長期金利が上昇基調であることが、上値を抑えそうです。

(1)日経平均は25日移動平均線の手前まで反発

日経平均日足:2015年1月4日―5月15日

(2)NYダウも戻り基調

NYダウ日足:2015年1月2日―5月15日

1-3月の米景気の失速(GDP速報値で実質年率+0.2%)が一時的で、4月以降回復の見通しとなったことが好感されました。また、米長期金利の上昇にやや一服感のあることも追い風です。

ただし、米景気の減速懸念も、長期金利の上昇懸念も、完全に払拭されたわけではありません。NYダウは、一旦反発したものの、引き続き、上値は重いと考えています。

(3)日本の3月決算発表はそこそこ良好な内容

決算発表で注目されるのは、済んだ期(2015年3月期)の実績よりも、新年度(2016年3月期)の見通しです。日本企業は、期初の予想は保守的(低め)に出す傾向が強いですが、それで二桁の増益が見込まれていることは、評価できます。

主要718社の2016年3月期経常利益率予想

  主要718社 内 金融を除く679社 金融39社
会社予想 + 9.9% + 12.1% ▲ 5.0%
市場予想 + 14.3% + 17.3% ▲ 6.0%

【注】市場予想はQUICKコンセンサス予想。集計対象は、東証一部上場3月期決算企業で15日までに決算発表済みで、
2016年3月期の経常利益予想を公表している主要企業718社。米国基準・IFRS採用企業は、連結税前利益を経常利益としている。

(4)金融が減益予想となっている理由

金融業(銀行・保険・証券・その他金融)では、期初に予想を発表しない企業が多数あります。発表する企業では、期初は減益で予想を出す傾向が強くなっています。

金融業では、株や債券の売買損益が原則、経常利益に含まれます。株や債券の売買損益は、株価や市場金利の変動によって大きくブレます。そこの予想がむずかしいことから、期初に業績予想を公表しない会社が多数あります。予想を出す企業は、売買損益をとりあえずゼロに近い水準で前提するために、期初は減益予想が多くなります。期中に株の売却益を計上するにしたがって、業績予想を上方修正する傾向があります。

銀行や保険などで、2014年3月期には多額の債券売却益を計上した会社が多数あります。また、日本株の上昇によって、近年は株の売却益の水準も高くなっています。新年度予想について、大きな売却益の前提を置かない限り、減益予想となりやすくなります。

金融業については、新年度予想は減益で出されていても、実態的には、前年度と同等の高水準の利益が継続する可能性が高いと考えられます。