先週はゴールデンウイークでしたので、8日・9日の2営業日だけの取引でした。1-3月の米景気が急減速した余波が続き、日経平均は2営業日で▲152円の19,379円となりました。

今週の日経平均は反発が予想されます。9日発表の4月の米雇用統計が予想通りの改善を見せ、米景気失速懸念が薄れ、9日のNYダウが前日比+267ドルの18,191ドルとなったことが好感されそうです。9日のCME日経平均先物(円建て)は、19,675円へ上昇しました。

(1)4月の米雇用統計は予想通りの改善

米雇用統計で、一番注目されるのは、非農業部門の雇用者増加数です。以下2つの理由から注目されています。

  • 米景気の短期的な変動をよく表す。
  • 米FRB(中央銀行)が金融政策を決定するために見る指標として重視している。

アメリカの非農業部門雇用者増加数(前月比)推移:2013年1月~2015年4月

(出所:米労働省)

4月の非農業部門雇用者増加数(速報値)が22万3千人増と、再び景気好調と判断される20万人増を超えたことが、市場に安心感を与えました。3月の雇用者増加数(速報値)は、前回発表の12万6千人増から今回8万5千人増に下方修正されましたが、1-3月の米景気悪化は一時的で4月から回復するとの見方があるので、悪材料視されませんでした。

4月3日に3月の雇用者増加数(速報値)が前月比12万6千人増と発表された時は、ネガティブ・サプライズと受けとめられました。さらに、4月29日に発表された米1-3月のGDP成長率(速報値)が前期比年率+0.2%に急減速し、現在発表中の1-3月の米企業業績も低調であることから、「米景気失速リスク」が意識されるようになりました。

ただし、1-3月は米景気を押し下げる一時的要因【注】が集中しており、「4月以降、米景気は再び回復に向かう」との見方も根強く残っていました。

【注】1-3月の米景気を悪化させた一時的要因

  • 西海岸の港湾労働者による大規模ストライキ(既にストは終息)
  • 寒波(終息)
  • 原油急落による高コストのシェールオイル掘削業者破綻(原油価格は反発中)

なお、4月の失業率は、5.4%と、順調に低下が続いています。

今回、4月の雇用者増加数が20万人増を上回ったことで、米景気減速は一時的との見方が補強されました。4月の失業率が順調に低下トレンドをたどっていることも、安心感につながりました。

アメリカの完全失業率推移:2013年1月~2015年4月

(出所:米労働省)

(2)8日のNYダウは急反発、ただし、NYダウは引き続き上値が重いと予想

NYダウ日足:2015年初~5月8日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

NYダウが直近の三角もち合い(赤の線)を上へ抜けたことはポジティブです。ただし、年初来高値(水色の線)は抜けていません。以下の理由から、NYダウは引き続き上値が重いと予想しています。

  • 4月の雇用統計だけで、米景気失速懸念を完全には払拭できない。
  • 4月以降に米景気復調が鮮明になると、早期利上げへの不安が再燃する。

(3)日経平均は、反発を予想

日経平均日足:2015年初~5月8日

(注:楽天証券経済研究所が作成)

日経平均は、25日移動平均線を下回り、調整局面入りのリスクが出ていました。米景気失速懸念が薄らいだことを受け、今週は19,000円台後半への反発を見込みます。ただし、一気に20,000円を超えていくとは考えていません。今期(2016年3月期)の景気・企業業績の回復が鮮明になり、日経平均が年初来高値(水色の線)を抜けていくのに、しばらく時間を要すると考えています。

(4)2015年3月期の決算発表、これまでの発表分はおおむね良好

日経平均の今後のトレンドを決めるのは、企業業績です。5月8日までの発表分は、比較的良好と言えます。今期会社予想は、例年通り保守的(低め)に出ていますが、期中に、上方修正されていくと予想しています。

東証一部上場の主要327社(除く金融)の経常増益率

  主要327(除く金融)
前期(2015年3月期)実績 +9.70%
今期(2016年3月期)会社予想 +11.10%

(注:5月8日までに決算を発表した3月期決算の主要327社(除く金融)について集計、楽天証券経済研究所が作成)

参考:楽天証券経済研究所が予想する、東証一部上場3月期決算企業(除く金融)の経常増益率

  全産業(除く金融)
前期(2015年3月期)予想 +9%
今期(2016年3月期)予想 +15%

(出所:楽天証券経済研究所)