22日の日経平均は、224円高の20,133円で、終値で2万円台を達成しました。22日の朝8時50分に発表された3月の貿易収支(速報、通関ベース)は2,293億円の黒字と、33カ月ぶりに黒字転換しました。どちらも、日本経済の復活を象徴する出来事です。

私は、日経平均は、今年末に21,000円、来年末に23,000円に上昇すると予想しています。足元の上昇ピッチはやや速過ぎると思いますが、中長期投資の視点で、この水準はなお買い場と考えています。

(1)原油急落の恩恵で輸入が減少、輸出は増加

(出所:財務省貿易統計(通関ベース)、2・3月は速報値)

3月の貿易収支の黒字転換は、原油急落の恩恵によるところが大きいと考えられますが、それだけではありません。輸出の増加も貢献しています。

  • 輸入は前年比▲14.5%:原油・石油製品・LNG(液化天然ガス)の減少が貢献
  • 輸出は前年比+8.5%:自動車・半導体・金属加工機械などの増加が貢献

原油急落が、日本経済に強い追い風となっています。昨年7月に1バレル100ドルを越えていたニューヨークのWTI原油先物(期近)は、足元55ドルまで下がっています。原油は世界的に供給過剰で、価格低迷は長期化しそうです。

ただし、原油の輸入契約は長期契約主体で、スポット価格が急落してもすぐに輸入価格に反映されるわけではありません。日本のエネルギー輸入価格は、今後時間をかけて少しずつ低下していくことになります。日本の貿易黒字額は、原発再稼動がなくても、これから徐々に拡大に向かうと考えられます。

(2)東日本大震災後に、日本は貿易赤字に転落

日本が2011年に31年ぶりの貿易赤字に転落したのは、東日本大震災で原子力発電所が停止し、火力発電の燃料輸入が増えたことが最大の原因でした。原発が停止して電力需給が逼迫する中、中東からあわててLNG(液化天然ガス)を緊急輸入したために、世界一割高なガスを買う破目になりました。

(出所:財務省貿易統計(通関ベース))

日本が緊急輸入したLNGは100万BTU(熱量単位)当たり16~18ドルでした。アメリカのシェールガスが100万BTU当たり3-5ドルであることを考えると、日本は非常に高価なLNGを買わされ続けてきたことになります。

LNGは長期契約で、2018年くらいまで高値で契約したLNGの輸入が続く可能性がありました。ところが、原油急落を受けて情勢が変わりました。日本が輸入するLNGの多くに、原油連動で価格を調整する契約がついています。原油急落を受けて、これからLNGの輸入価格は低下していくことになります。

(3)日本のガス輸入価格は、将来さらに低下が見込まれる

日本は、アメリカから安価なシェ-ルガスの輸入を計画しており、実現すれば日本のガス輸入価格の低下に寄与します。ただし、ガスをLNGに転換するコストや日本まで運搬するコストがかかるので、日本に持って来るとコストは100万BTUあたり10ドルを越える可能性もあります。

実現は難しいかもしれませんが、サハリン(ロシア)からパイプラインを敷設して天然ガスをそのまま(LNGに転換しないで)輸入できれば、日本のガス輸入コストは大幅に低下します。欧州へのエネルギー輸出が減少して苦境に立つロシアから、パイプライン敷設の提案があるが、今のところ日本がそれを拒否している状態です。

(4)伝統の貿易黒字国、復活へ

資源価格の下落は、原油やガスだけでありません。昨年は、石炭・鉄鉱石・銅・ニッケルなど、天然資源が全面安になりました。これまで天然資源は、供給に制約があって増産がなかなかできない中で価格が上昇してきましたが、技術革新によって一斉に増産が可能になりました。

日本は、2010年まで30年連続で貿易黒字を計上していた「伝統の黒字国」です。「失われた10年」といわれた1990年代でも貿易収支は黒字でした。資源全面安の恩恵で、今年の後半から来年にかけて、再び貿易黒字国の地位を固めることになるでしょう。

円安によって日本の輸出企業が競争力を取り戻し、日本の輸出が伸び始めたことも、貿易収支改善に効果を発揮します。自動車・機械・電子部品など日本が技術面で優位を保つ分野の回復が目立ちます。円安を受けて、製造業の一部で生産を国内に戻す動きが出ていることも、貿易収支の改善に貢献します。