9日の日経平均は147円高の19,937円でした。年初来高値を更新し、20,000円まであと一歩に迫りました。買い手は外国人と推定されます。高値を取りに行くのは外国人で、外国人の買いがなくなって下がり始めると日本の公的資金(GPIF・共済・日銀)が買いを増やすので、押し目を待っていても大きく押さない展開が続いている模様です。

景気・企業業績の回復を織り込みつつ、日経平均の上値トライが続くと予想しています。今日は、昨日のレポートの続編で、2016年3月期に経常最高益を更新すると予想する企業についてコメントします。

(1) 最高益を更新する企業には、何かキラリと光るものがある

2015年は、円安・原油安・米景気好調のトリプルメリットを受けて、日本の景気・企業業績の回復を見込みます。多くの日本企業が2015年度は増益になると思います。でも、同じ増益でも、最高益を更新する企業と、更新しない企業ではまったく意味が異なります。

景気がいいと増益し、景気が悪くなると減益するだけの企業は、ただの景気循環企業です。それに対して、最高益を更新する企業は、成長企業といえます。そこにキラリと光る何かがあります。

今日は、昨日のレポートに掲載した、東証一部大型株で経常最高益更新を予想する企業についてコメントします。銘柄一覧は、昨日のレポートでご確認ください。

3分でわかる!今日の投資戦略4月9日「最高益を更新する企業に注目」

(2)最高益を更新が続く見込みのセブン&アイHLDG(3382)とファーストリテイリング(9983)

両社の共通点は、①国内小売業で他を寄せ付けない強さを発揮、②海外でも成長を続けるビジネスモデルを確立していることです。

コンビニ業界は、セブン-イレブン一強の様相を呈しています。最近、打つ手がことごとく当たっています。入れたてコーヒーは、コンビニ各社が一斉に参入しましたが、価格設定、販売方式で顧客の支持を最も集めたセブン-イレブンが最大のヒットとなりました。

セブン-イレブンのビジネスモデルの強さは、販売データを重視し、需要密着の商品開発を続けていることにあります。売れない商品は徐々に販売スペースが縮小し、最後には撤去されます。代わりに新しい商品が常に入ってきて、売れればスペースが拡大します。

小売業において、5年・10年の長期に起こる需要の構造変化を、前もって正確に予測することは難しいですが、セブン-イレブンは毎日の販売データを見ながら、商品戦略を毎日少しずつ見直していくことで、結果的に5年・10年の大きな構造変化にも的確に対応しています。実際、セブン-イレブンに置いてある商品構成は、過去10年でがらりと変わりました。20代の若者が外で食べる商品が減り、代わって40代・50代の女性が家庭食用に買っていく製品を増えています。その効果で、少子高齢化が進む日本で、セブンーイレブンは今でも成長を続けています。

セブン-イレブンの今後の成長可能性を一気に高めたのは、海外でも通用するビジネスモデルを作り上げたことにあります。アメリカのコンビニ子会社(セブン・イレブン・インク)は、日本のセブン-イレブンの経営スタイルを導入することで、営業利益約600億円を稼ぐ会社に成長しました。セブンのコンビニ店舗は、2月時点で国内に17,491店が存在します。これに対し、海外に37,790店(子会社直営店とライセンシー店の合計)と、国内の2倍以上あります(海外店舗数は2013年12月末時点)。これからも、海外の店舗数は成長が続くと思います。

それでは、セブン&アイHLDG(3382)の経営に死角はないでしょうか。セブン-イレブンの兄弟会社に当たるイトーヨーカ堂の経営をどう立て直すかが最大の課題となっています。皮肉にも、イトーヨーカ堂はイオン(8267)と同様、セブン-イレブンなどコンビニに家庭用食材を侵食され、苦戦が続いています。

カジュアル衣料品ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)も、国内で高い支持を得つつ、海外で成長できるビジネスモデルを作り上げました。中国やベトナムで生産し、日本および世界で販売するビジネスモデルは、今や世界のアパレル大手が、どこでもやっていることです。ファーストリテイリングは、独自の商品開発と生産管理手法を導入することで、他社が真似できない競争力を獲得することに成功しています。

(3)最高益更新が続く見込みの花王(4452)とユニチャーム(8113)

両社の共通点は、国内で安定的に収益を稼ぎつつ、アジアで利益を成長させるビジネスモデルを作ったことです。花王(4452)は、買収したカネボウ化粧品の品質問題でしばらく低迷しましたが、ようやくその問題から立ち直ってきました。利益の牽引役はアジアです。中国の利益が拡大局面に入ってきました。

中国経済の先行きに不安が増えていますが、中国経済には二つの顔があります。本格的な成長期に入った個人消費と、過剰投資が続いて先行きが不安な投資です。コマツ(6301)や日立建機(6305)のように、中国経済の投資部門に関連する仕事をやっている企業には不安がつきまといますが、花王(4452)やユニチャーム(8113)のような個人消費関連企業には、大きな不安はありません。原油価格が大きく下がったことも、両社にとって利益押し上げ要因となります。

(4)最高益更新が見込まれるのにPER(株価収益率)が低水準の自動車関連株

最高益更新が見込まれるキラリと光る企業は、株価評価も高く、PER(株価収益率)が高めの企業が多くなっています。その中で、最高益更新が見込めるのにPERが低い自動車関連企業は目立ちます。

2015年度に最高益更新が見込まれる企業として私が挙げているトヨタ自動車(7203)・マツダ(7261)・スズキ(7269)・富士重工業(7270)・住友電気工業(5802)・デンソー(6902)・いすゞ自動車(7202)では、スズキとデンソーを除きPERは8倍~12倍に留まっています。

なぜ、自動車関連は低いPER評価に留まっているのでしょうか。私は、リーマンショックのトラウマと考えています。リーマンショックの直前、2007年ころ、自動車各社は絶好調と思われていました。ところが、2008年にリーマンショックが起こると、自動車各社は軒並み赤字に転落しました。その時の記憶がまだ新しいので、最高益更新が続いていても、自動車株は大きく上昇しにくくなっているのだと思います。

私は、2015年度に最高益を更新していくことが見通せるころに、出遅れの好業績株として、自動車関連株が上昇すると予想しています。