17日の日経平均は190円高の19,437円でした。日立製作所(6501)・ソニー(6758)・TDK(6762)・村田製作所(6981)など、日本を代表する大手電機株の上昇率が特に高くなりました。日本の景気・企業業績の回復を評価し、日本株を「持たざるリスク」を意識した外国人の買いが続いていると考えられます。

17日、日銀は金融政策決定会合の結果(現状維持)を公表しました。黒田日銀総裁は会合後の記者会見で、消費者物価指数(生鮮食品を除くコア)について、「マイナスになる可能性は排除はできない」と述べました。日本にいよいよ原油安による「良いデフレ」実現が見えてきたと、私は考えています。

(1)低下が続くインフレ率

消費者物価指数(除く生鮮食品)の上昇率は、消費税引き上げの影響(推定2%)を除くと、1月時点で前年比+0.3%まで縮小しています。

 

消費者物価指数の上昇率(生鮮食品を除くコア):2013年1月~2015年1月)

(出所:総務省資料より楽天証券経済研究所が作成)

アベノミクス開始後のインフレ率推移を見ると、上のグラフに示した通り、①~③の3つの動きがあることが、わかります。

  • 年中:円安による輸入物価上昇で、インフレ率が上昇
  • 年4月:消費税引き上げによってインフレ率が上昇
  • 年後半:原油急落の影響で、インフレ率が低下

(2)ようやく実質賃金がプラスになる見込み

トヨタ自動車(7203)の2015年春闘(賃上げを巡る労使交渉)は、過去最高の4,000円のベア(月給の一律引き上げ)支給で決着しました。定期昇給と合わせると、組合員平均の賃上げ率は3.2%となります。トヨタが高額のベアを決めたことで、日本の大手企業全般に賃上げの機運が高まってくることが予想されます。

日本のインフレ率がゼロ近くまで落ちることを仮定すると、実質賃金上昇率(名目賃金上昇率-インフレ率)は、ようやくプラスになります。昨年、消費増税の影響で、実質賃金がマイナスとなり、消費が停滞しましたが、今年は賃金上昇による消費回復が見込まれます。

(3)「良いデフレ」が視野に

デフレという言葉には、「物価下落」と「不況」の2つの意味があります。もともとの意味は「物価下落」だけですが、物価が下落する時は景気が悪化することが多いので、デフレ=物価下落=不況という意味になっていったと思います。

今年は、資源下落によって、インフレ率がマイナスになる可能性が出てきました。資源下落は、日本の景気に大きなプラス効果をもたらします。資源下落によって、一時的に、景気回復とマイナスのインフレ率が同居する可能性も出てきています。

もし、実現すれば、日本は初めて「良いデフレ」を経験することになります。