20日の日経平均は、352円高の17,366円と急反発しました。1ドル118円台へ円安が進んだことから、買い安心感が広がりました。日本株は全般に割安で、買い場との判断を継続します。

(1)年初からの株安の原因となった不安材料が徐々に解消へ

年初からの日本株下落の原因は、以下の4つの不安に集約されます。

  • 原油急落による「逆オイルショック」懸念
  • 銅価格急落への不安
  • ギリシャ信用不安の再燃
  • スイスフラン急騰につられた円高進行

この4つの不安材料が解消すれば、日経平均は、日本企業の今来期の業績拡大を織り込みながら上昇すると考えています。

①原油価格急落と②銅価格急落は、世界経済にとって最終的にプラスと見ています。特に日本の景気・企業業績にとって強い追い風となります。ただし、それが理解されるまでに時間がかかります。資源急落のプラス効果が出るのには時間がかかりますが、マイナス効果(資源国の景気悪化と資源関連企業の業績悪化)はすぐ表面化すると考えられるからです。今は、資源安ショックに先に焦点が当たっていますが、時間が経過するにつれて、資源安のプラス効果も注目されるようになると思います。

③のギリシャ問題は、日本への影響は限定的と考えています。

④についてですが、スイスフランが急騰しても、日本円が連動して上昇する理由はないと考えます。20日の日経平均急騰は、スイスフラン急騰にともなう円高懸念が低下したことが好感されました。注意を要するのは、22日にECB(欧州中央銀行)が追加金融緩和に踏み込む可能性が高いことです。そこで短期的に円高がもう一度進まないか、注意が必要です。

(2)スイスフランと日本円が連動する理由は乏しい

スイスフランと日本円は、かつて「高信用通貨」として連動する傾向がありました。今でも世界経済に不安が高まれば、短期的にスイスフランと円が同時に上昇すると考えられます。ただし、もう少し長いトレンドで見ると、スイスフランと日本円が連動して上昇する理由はないと考えます。その理由を説明します。

①スイスは高水準の経常収支黒字を稼ぎ続けている「高信用国」

スイスは、国土面積では日本の九州とほぼ同じ面積の小さな国ですが、経常収支では黒字を稼ぎ続ける「高信用国」です。

スイスの経常収支

(注:2014年はIMF予想、出所:IMF)

放っておけばスイスフランは対ユーロで上昇を続けることになります。スイスは国内の輸出産業の競争力を維持するため、2011年以降、無制限のスイスフラン売り介入を宣言してスイスフラン上昇を抑えてきました。

ところが、22日にも欧州中央銀行(ECB)が追加金融緩和に踏み込む公算が高まり、ユーロ売り・スイスフラン買いの市場エネルギーが増大し、スイス国立銀行は介入でスイスフランの上昇を抑えることを断念せざるを得なくなりました。

②日本の経常収支黒字は減少

かつて円はスイスフランと同じ「高信用通貨」とみなされ、絶え間ない買い圧力にさらされてきました。為替介入だけでは円高を止められないという、スイスと同じ経験をしています。

ところが、最近、日本円はスイスフランのように上昇はしなくなってきました。日銀が異次元緩和によって通貨供給量を大幅に増やしていることに加え、日本の経常収支の黒字が大幅に減少したことも影響しています。

日本の経常収支

(注:2014年はIMF予想、出所:IMF)

③ドイツも高水準の経常黒字を稼ぐ「高信用国」 

今は存在しないドイツの通貨「マルク」も、かつてスイスフランと連動する「高信用通貨」でした。ドイツは、2014年に中国を抜いて世界最大の経常黒字を計上する見込みです。

ドイツの経常収支

(注:2014年はIMF予想、出所:IMF)

ドイツマルクも、もし今存在していれば、絶え間ない買い圧力にさらされてスイスフランのように上昇を続けていたでしょう。ところが、ドイツは2002年に他のユーロ諸国と通貨統合を行い、共通通貨「ユーロ」を使うようになっています。通貨統合には、ギリシャ・スペイン・イタリアなど信用の低い国が多数含まれるので、通貨「ユーロ」には、売り圧力が働いています。ドイツは、通貨統合という仕組みに入ることで、自国通貨高に苦しまないで済んでいるわけです。