先週の日経平均は250円高の17,621円でした。先週前半は、原油急落への不安から世界株安が続き、日経平均は16,600円台まで急落しました。ところが、米FOMC(金融政策決定会合)議事録の「緩和的状況が相当な期間続く」との文言を受けて米国株が急反発してから、世界的に株が上昇し、日経平均も急反発しました。

原油急落は、ロシアなど産油国の経済にダメージを及ぼしますが、日米など先進国にはプラスとの見方を再確認した形となりました。

(1)米景気好調で、NYダウの上昇トレンド続く

先週は、NYダウが急反発しました。先々週、原油安・ロシア経済への不安で急落した分を、ほぼ取り返した形です。

NYダウ週足:2013年1月25日~2014年12月19日

(出所:楽天証券経済研究所が作成)

NYダウが急反発した直接のきっかけは、米FOMC(金融政策決定会合)議事録に「緩和的状況が相当な期間続く」との文言があったことです。ただし、NYダウ上昇の背景はそれだけではありません。12月の米クリスマス商戦が好調と考えられること、イエレンFRB議長が、ロシア経済が悪化しても米景気への影響は限定的という趣旨の発言をしたことも追い風でした。

「米景気は好調でも、金融緩和的状況が続く」と、株式市場にとってベストな組み合わせに米経済があることを示唆した形となりました。

原油価格下落は、米国株に2つの追い風をもたらしたことになります。

  • エネルギー価格低下で家計の可処分所得が増加し、アメリカの消費を押し上げる効果
  • インフレ率の低下によって、早期の金融引き締めの必要を低下させた効果

(2)今週の日経平均は、続伸を見込む

日本は、原油急落の恩恵をもっとも大きく受ける国です。NYダウが反発し、為替も1ドル119円台の円安水準に戻ったことで、年末までにもう1回、18,000円をトライすると予想します。先週末のCME日経平均先物は17,715円に上昇しています。

日経平均週足:2013年1月1日~2014年12月19日

(出所:楽天証券経済研究所が作成)

ただ、NYダウ18,000ドル、日経平均18,000円は、節目として意識されやすくなっています。今週の日経平均は続伸を見込みますが、18,000円が近づくと、戻り売りも増えます。一本調子の上昇とはならないでしょう。

(3)原油価格はどこまで下がるか?

ニューヨーク原油先物(WTI)期近:2014年4月1日~2014年12月19日

(出所:楽天証券経済研究所が作成)

原油急落を引き起こした最大の原因は、アメリカで非在来型(シェール)ガス・オイルの増産が続いていることです。原油急落によって、今後アメリカでは、シェールガス・オイルの開発にブレーキがかかる可能性があります。北米シェール・オイルの生産コストは1バレル40ドルから80ドルの範囲に分布していると考えられるからです。既にコスト割れしてきている採掘業者も出ています。ただし、価格下落が生産調整につながるには、時間を要します。短期的な供給力の削減は見込みにくくなっています。

長期的には、多くのシェール・オイル採掘業者の採算が取れる1バレル60ドル以上に原油価格は戻ると考えられますが、短期的には1バレル50ドルまで下がるリスクも残っています。

原油下落は、トータルでは世界経済にプラスと考えられますが、短期的な下落ピッチが速すぎると、逆オイルショックと言われる混乱を生じ、世界経済の足を引っ張ります。具体的には、ロシア・ベネズエラ(南米)・ナイジェリア(アフリカ)などの産油国が危機的状況に至ると、世界経済に波乱を生じます。

目先は、原油が反発し、原油価格が安定した方が、株式市場にプラスの影響を与えると思います。