20日の日経平均は、578円上昇して15,111円となりました。今後、世界的なリスク資産の投げ売りは徐々に収束し、割安になったリスク資産の見直し買いが始まると予想しています。

(1)大都市不動産の空室率低下が続く

東京都心5区 空室率(%)

東証REIT指数

(出所:東京都心5区空室率は三鬼商事、東証REIT指数は東京証券取引所)

東京都心の不動産市況に上昇機運が出つつあります。三鬼商事によると、都心5区(千代田・中央・新宿・渋谷・港区)賃貸不動産の空室率は9月末に前月比0.37ポイント低下して5.65%になりました。これを反映して、REIT(上場不動産投資信託)の価格動向を表す東証REIT指数は、上昇基調が続いています。10月に、世界的な株安の影響を受けて、若干値下がりしましたが、上昇基調は崩れていません。

(2)下降トレンドの不動産株もいずれ反発へ

東証不動産株価指数

(出所:東京証券取引所)

ところが、不動産株は、2014年に入ってから下落トレンドが続いています。私は、大都市圏の不動産価格上昇はこれから本格化すると予想しています。円安で割安になった日本の不動産へ海外からも投資資金が入ると予想しています。したがって、不動産株にもいずれ見直し買いが入ると予想しています。

(3)投資の参考銘柄

日本には保有する賃貸不動産に巨額の含み益がある企業が多数あります。含み益の上位5社は、以下の通りです。

<賃貸不動産の含み益が大きい5社>

  コード 銘柄名 産業分類 含み益:億円 連結PBR:倍 実質PBR:倍
1 8802 三菱地所 不動産 20,965 2.36 1.13
2 8801 三井不動産 不動産 12,159 2.30 1.38
3 8830 住友不動産 不動産 11,326 2.32 1.10
4 9020 東日本旅客鉄道 電鉄 9,193 1.44 1.12
5 9432 日本電信電話 情報通信 6,244 0.84 0.81

(注:各社有価証券報告書より、楽天証券経済研究所が作成、連結PBRは10月20日時点、
実質PBRは連結自己資本に賃貸不動産含み益の7割を加えて計算)

また、賃貸不動産の含み益の7割を自己資本に加えて計算した実質PBRが低い8社は、以下の通りです。

<実質PBRが低い8社>

  コード 銘柄名 産業分類 含み益:億円 連結PBR:倍 実質PBR:倍
1 9302 三井倉庫HLDG 倉庫 1,052 0.75 0.35
2 3001 片倉工業 繊維 871 0.78 0.37
3 5901 東洋製罐グループHLDG 金属製品 826 0.41 0.38
4 3106 倉敷紡績 繊維 336 0.51 0.40
5 9304 澁澤倉庫 倉庫 373 0.70 0.40
6 3205 ダイドーリミテッド 繊維 307 0.83 0.43
7 9401 東京放送HLDG 放送 1,502 0.57 0.45
8 7404 昭和飛行機工業 輸送用機器 680 1.19 0.46

(注:各社有価証券報告書より、楽天証券経済研究所が作成、連結PBRは10月20日時点)

(参考)PBRとは
株式時価総額が自己資本の何倍か計算したもの。株式時価総額が自己資本よりも小さくなると、PBRは1倍を割れる。

実質PBR0.35倍の三井倉庫HLDGは、株式時価総額が実質自己資本の35%しかない。欧米では、このような安値に放置されている株は買収のターゲットとなりやすい。ただし、現在の日本株市場では、敵対的買収がほとんど起こらないので、買収価値から見た割安株も、そのまま割安に放置される傾向が強い。

PBR1倍とは

PBR3倍・PBR0.7倍の意味