先週の日経平均は、1週間で408円下がり、15,300円となりました。①日本の7-9月の景気指標が弱いこと、②ヨーロッパ・中国・ロシア・ブラジルの景気も弱含みであることが懸念される中、円高反転・NYダウ下落をきっかけに大幅安となりました。

(1)今週の見通し

日経平均の値幅調整は、先週の下げでほぼ終わったとみています。ただし、10月以降の景気・企業業績の回復期待が低下したことから、しばらく上値の重い展開が続くでしょう。日経平均は当面、15,000円を中心としたボックス相場に戻ると予想します。

日経平均は再び15,000円中心のボックスへ週足(2012年11月~2014年10月10日)

(注:楽天証券経済研究所が作成)

アベノミクスが実質的にスタートした2012年11月以降、日経平均が上昇したのは、半年だけでした。2013年5月以降、14,000円~16,000円のボックス圏で推移してきました。そろそろ消費増税のマイナス影響が緩和して景気回復色が強まるとの期待から、日経平均は9月25日に16,374円まで上昇しましたが、景気停滞が長びいていることが確認され、再びボックス内に下落しました。

(2)4月~8月は「ミニ景気後退」

内閣府は、8月の景気動向指数が悪化したことを受けて、景気の基調判断を「足踏みが続いている」から「下方への局面変化を示している」に引き下げました。今の状態は、「既に景気後退局面に入った可能性が高いことを暫定的に示している」状態に当たります。

景気一致指数

景気先行指数

(出所:内閣府 経済社会総合研究所)

(3)景気の山・谷の正式な判断は、1年半くらいたってから出る

内閣府による景気の基調判断は、景気動向指数に基づいて機械的に出ます。これは、あくまでも暫定的な判断です。正式な山・谷の判断は、1年半くらい後にしか出ません。さまざまな経済事象をすべて吟味した上で判断するにはそれくらいの期間が必要という事情もありますが、それだけではありません。今、景気後退を宣告すると、来年10月に予定されている消費税の再引き上げができなくなる可能性が高まるので、今は、景気判断は出せないという事情もあるでしょう。

10月から景気回復が鮮明になれば、今の景気停滞は「景気の踊り場」であって「景気後退」ではないと判断されます。その場合は、後から振り返ると、「2014年は景気後退すれすれの状態だったが辛うじてゆるやかな回復を維持した」と判断されることになります。

2004年が今と似た状態でした。私は、2004年には6ヶ月くらいのミニ景気後退があったと分析しています。ところが、政府の最終判断では、2004年は景気の踊り場であって、後退局面ではなかったとされました。そして、2005年には「戦後最長の景気回復が続いている」と宣伝されました。

(4)「ミニ景気後退」の後の日経平均

メイン・シナリオ(確率65%)では、国内景気は10月以降ゆるやかな回復に向かい、日経平均は年末に17,000円まで上昇します。ただし、リスク・シナリオ(確率35%)では、10月以降も景気低迷が続き、日経平均は14,000円まで下落します。

メイン・シナリオとリスク・シナリオを分ける重要な条件は、世界経済の先行きです。円安にもかかわらずこれまで日本の輸出が回復していないのは、世界景気の回復が鈍いことが影響しているからです。

アメリカを除くと、世界中で景気がやや軟化しています。来年、アメリカを牽引役にゆるやかな世界景気の回復が続く(→メイン・シナリオ)か、あるいは、ヨーロッパ・BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の景気が悪化してアメリカの景気も息切れする(→リスク・シナリオ)か、慎重にみきわめていく必要があります。