9日の日経平均は前日比117円安の15,478円でした。前日の米国株上昇を好感して、朝方に前日比136円高まで上昇しましたが、その後売られて117円安で引けました。

(1)8月の機械受注は、一見、良好

9日朝8時50分に内閣府が発表した8月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+4.7%増と、事前の市場予想(+1.0%)を上回ったので、「機械受注はポジティブ」というコメントが市場に流れました。それを受けて、ファナックが9時8分に前日比+1.6%高となるなど、朝方、機械関連株が買われました。

 

<機械受注(船舶・電力を除く民需)の前月比変化率:2013年1月~2014年8月>

(出所:内閣府)

(2)8月は総受注がマイナスなので良い内容とは言えない

ところが、8月の機械受注は、総受注が前月比▲2.2%減で決して良い内容とは言えません。大引けにかけて機械関連株は、売り直されました。ファナックは引けで前日比▲0.9%安でした。東証の業種別指数で、機械は前日比▲1.7%のマイナスで、日経平均の下落率▲0.8%を上回りました。

景気動向をもっとも表すものとして、昔からエコノミストは、船舶・電力を除く民需を見てきました。ただし、今後の機械セクターの業績に与える影響を考える場合は、船舶・電力を含む民需全体や、公共投資・外需まで含む、機械受注全体も見る必要があります。

<機械受注総額の前月比変化率(実績ベース※):2013年7月~2014年8月>

  2013年 2014年
7-9月 10-12月 1-3月 4-6月 7月 8月 7-9月
受注総額 5.9% -0.2% 4.3% 14.4% -13.5% -2.2% -15.3%
   内 民需 5.1% 2.0% 6.1% -10.0% 16.4% -12.4% -1.6%
   内 官公需 8.8% -11.5% -11.5% 30.3% 9.3% -29.9% -14.2%
   内 外需 10.7% -4.4% 6.5% 42.2% -42.6% 29.1% -28.3%
   内 代理店 7.7% 6.7% -7.9% 7.2% 2.3% -3.6% -1.1%
民需(除く船舶・電力) 4.8% 1.9% 4.2% -10.4% 3.5% 4.7% 2.9%

(出所:内閣府)
2014年7-9月は、9月が未発表のため、見通しベース

8月の機械受注は、民需(全体)が前月比▲12.4%減、官公需が同▲29.9%減でした。外需が同29.1%増でしたが、受注総額は前月比▲2.2%でした。7-9月の受注総額は、4-6月比で▲15.3%減の見通しとなっており、足元の受注トレンドが良いとは言えません。

なお、機械受注は、月ごとの変動が大きいので、1ヶ月のデータだけでトレンドを判断することはできません。受注は8月よりも9月に集中する傾向があるので、9月の機械受注(季節調整済み前月比変化率)を見ないことには、7-9月のトレンドを判断することはできません。

(3)今後の景気シナリオ

2~8月に国内景気は「ミニ景気後退」といえる状態に陥りました。今、それを織り込むかたちで、日経平均が下がっています。

今後の日経平均の動きを予想するために重要なのは、10月以降の景気がどうなるかです。現時点で、以下の2つのシナリオを想定しています。

  • リスクシナリオ(確率35%):10月以降、さらに景気が悪化します。この場合、日本株はここからさらに下がるので、買いは時期尚早です。
  • メインシナリオ(確率65%):10月から消費増税の影響が薄れ、景気は回復にむかいます。日本株は、今が買いの好機と考えられます。
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