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金融市場が不安視する地政学リスク
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

金融市場が不安視する地政学リスク

2014/9/30
2今日は金融市場に与える影響が大きくなりつつある「地政学リスク」について考えを書きます。
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今日は金融市場に与える影響が大きくなりつつある「地政学リスク」について考えを書きます。

(1)ヨーロッパの少数民族独立問題

  • スコットランド独立問題

ヨーロッパでは、少数民族が住民投票によって独立を問う動きが広がっています。9月18日には、スコットランドがイギリスからの独立を問う住民投票を実施しました。結果は、反対55%・賛成45%で、独立が否決されました。独立後のスコットランド経済に不安を感じる住民が反対にまわりました。

ただし、この問題はこれで終わりではありません。「ゲルマン民族大移動」で大陸から移ってきた民族が中心のイングランド人と、先住民が中心のスコットランド人の歴史的対立がなくなるわけでないからです。また、現在は鎮静化しているものの北アイルランド州の独立派の動きも火種として残っています。日本経済への影響は小さいものの、大英帝国の分裂リスクは、これからも続く可能性があります。

  • カタルーニャ州の独立運動

より深刻な問題と捉えられているのは、スペインのカタルーニャ州で独立を求める動きが盛んになりつつあることです。カタルーニャ州議会は、11月に独立を問う住民投票を実施することを決議しました。スペインは住民投票を実施することを憲法違反として認めていませんが、カタルーニャは住民投票を強行する構えです。

州都バルセロナを擁するカタルーニャはかつて国家を形成していたことがありました。カタルーニャ語を話し、スペイン人とは異なる気質を持つカタルーニャ人の間に、「カタルーニャはスペインでない」と独立を目指す運動が活発化しています。

カタルーニャ人は仕事熱心で、経済力があります。カタルーニャ州はスペインのGDP構成比では約2割を占めますが、スペイン経済を牽引する重要地域です。もし、カタルーニャがスペインから離脱したら、改善に向かいつつあるスペインのソブリンデット(国家債務)の信用が、再び悪化する懸念があります。スコットランドと異なり、独立できる経済力があるだけに、住民投票で独立が可決される可能性も十分にあります。

スペインは、銀行がまだ多額の不良債権をかかえており、スペインの信用不安が完全に払しょくされるには時間を要します。もし、カタルーニャの独立問題をきっかけにスペインの信用不安が蒸し返すことになると、世界の金融市場に「リスクオフ」気運が広がる可能性があります。

(2)「イスラム国」の問題

イラク・シリアで、武装勢力「イスラム国」が活動領域を拡大しつつあります。アメリカは、ついにシリア領でも武装勢力「イスラム国」への空爆を開始しました。これまでイラク領内だけで行っていた空爆を、シリアへ拡大したのは、アメリカが「イスラム国」にターゲットをしぼって勢力掃討に本腰を入れることを意味します。というのは、シリアのイスラム国を空爆することは、シリアでイスラム国と戦っているアサド政権を利することになるからです。

アメリカは、アサド政権が非人道的な弾圧政策を行っているという理由で、シリア国内の反アサド勢力を支援してきました。ところが、イスラム国の脅威が強まった今は、アサド政権と同調してでも、イスラム国の掃討を優先する構えです。

2010年ころから、「アラブの春」という民主化運動が、チュニジア・エジプト・リビアから中東全域に広がりましたが、アラブの春には正負、両方の側面がありました。独裁政権を崩壊させて民主化の機運が出たことがポジティブな反面、独裁政権がなくなって秩序が保てなくなって各地で武装勢力の活動が活発化するという負の側面もありました。

イラクでいうと、サダム・フセイン政権の崩壊で、アラブの春と同様の民主化プロセスが始まることが期待されていましたが、結果的には武装勢力「イスラム国」の活動が活発化して、国家分裂の危機に至っています。

日本は欧米諸国とともに、官民をあげてイラク復興に大きな投資をしつつありました。このままイスラム国の勢力拡大が続き、国家分裂に至ると、イラク復興が遅れるだけでなく、これまでに日本や欧米諸国が投資した資金も回収できなくなる懸念があります。

(3)東ウクライナ問題

ウクライナで親欧米政権(ポロシェンコ大統領)が誕生してから、ロシアは、ウクライナと対決色を強めています。まずロシア系住民が多いクリミアをロシアに編入しました。さらに、東ウクライナでウクライナ政府軍と戦闘している親ロシア派勢力を、武器供与などで支援していると考えられています。

この問題をめぐって、欧州とロシアは経済制裁を出し合う泥仕合におちいっています。相互の経済制裁は、欧州とロシアの双方にダメージが大きいので、当初は、本格的な制裁合戦にならないように、穏便に済ませようとする動きがありました。

ところが、親ロシア系勢力が、マレーシア航空の民間航空機を誤って撃墜してから、ロシアと欧州の対立は、抜き差しならないものとなりました。制裁合戦が、欧州・ロシア経済のリスクとして意識される状況が続いています。

(4)日本株への影響

世界中で、地政学リスクが懸念される事例が増えていることに注意が必要です。今のところ、どれ1つとっても、世界経済を悪化させる決定的要因とはなっていません。メインシナリオとして、日本および世界景気の緩やかな回復が続き、日経平均は、来年3月までに18,000円に上昇する予想を継続しています。

ただ、地政学リスクが世界経済を失速させるような問題に波及しないか、今後とも情勢を慎重に見ていく必要があります。

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