1日の日経平均は、52円高の15,476円でした。大型主力株に膠着感が強まる中、建設・土木株や、建設資材株の上昇が目立ちました。今日は、陸運(トラック輸送)株への投資視点について書きます。

(1) 建設・土木産業と、陸運(トラック輸送)産業の共通点

建設・土木株とトラック輸送株には、2つの共通点があります。

  • 近年、国内で需要が拡大していること

建設・土木産業、陸運産業とも、長年、構造不況産業でした。内需が低迷する中で、過当競争が続いてきたからです。ところが、両産業とも、近年国内需要の拡大で復活の芽が出ています。

建設・土木産業では、公共投資(国土強靭化)と民間需要(都市再開発)が同時に立ち上がってきています。それに、リニア新幹線建設や東京オリンピックなどのプロジェクトも加わり、2020年まで仕事は豊富にあります。

陸運(トラック輸送)産業も、無店舗販売の急拡大を受けて、宅配需要が拡大しているほか、内需復活によって産業用貨物の輸送も増えています。こちらも仕事量は、どんどん増えています。

  • 人手不足が深刻であること

両産業とも人手不足が深刻です。日本中で人手不足が話題になっていますが、建設・土木技術者、トラック運転者の不足は、とりわけ深刻です。建設・土木業は、人件費に加え、建設資材・外注費などの上昇がコストアップにつながっています。運輸産業では、人件費に加え、軽油・傭車費の上昇がコストアップ要因となっています。

(2)建設・土木産業と、陸運(トラック輸送)産業の相違点

建設・土木業は、昨年まで「利益なき繁忙」が続いていました。仕事はいくらでもあるのに、人件費や資材費が大きく上昇しているために、利益が上げにくい状況が続いていました。ただし、今年から、建設・土木業は、「利益ある繁忙」に変わっています。建設単価の上昇によって利益が拡大する局面に入っています。

一方、トラック輸送業界は、まだ「利益なき繁忙」のままです。仕事はどんどん増えていますが、過当競争が続いてきたために輸送単価は低いままで、利益を上げにくくなっています。

(3)料金引き上げに動き出したトラック輸送業界

日本通運(9062)は、日本経済新聞の報道によると、9月から企業向けのトラック輸送の料金を引き上げます。実質的な値上げ幅は平均約15%で、料金改定は24年ぶりです。今年は、ヤマトHLDG(9064)や佐川急便(非上場)も燃料価格の高止まりや、運転手の不足を理由に、値上げを実施しています。大手がそろって値上げに動くことで、ようやく、低迷が続いていた輸送単価も上昇に向かうと考えられます。

陸運業界の値上げはまだ初期段階であり、人件費や燃料費などのコストアップを十分に転嫁できているとは言えません。今期(2015年3月期)は、人件費などのコストアップが重く、収益改善は鈍いかもしれません。ただし、建設・土木業界がそうであったように、陸運業界でも値上げが幅広く浸透すれば、いずれ「利益ある繁忙」期が来ます。2016年3月期には今の建設産業と同様に「利益ある繁忙」期に入ることができるかもしれません。

陸運業界の利益回復が鮮明になっていない今から投資するのは時期尚早かもしれませんが、私は、株価が割安な今のうちから投資を始めていいと思います。

(4)トラック輸送業界の参考銘柄

コード 銘柄名 連結
PER
連結
PER
配当
利回り
%
経常利益
会社予想
億円
前年比
増減益
%
経常利益
4-6月
億円
経常利益
進捗率
%
9025 鴻池運輸 11.4 0.84 2.1% 94 17.4% 25 27%
9037 ハマキョウレックス 8.6 1.00 1.2% 66 7.8% 17 26%
9047 名糖運輸 18.4 0.63 2.2% 7 10.1% 2 30%
9056 ヒューテックノオリン 9.4 0.58 2.8% 19 -4.8% 4 20%
9062 日本通運 16.7 1.01 2.1% 530 5.7% 120 23%
9065 山九 14.4 1.33 1.7% 195 29.2% 57 29%
9068 丸全昭和運輸 9.8 0.54 2.3% 51 8.5% 14 28%
9070 トナミHLDG 8.8 0.47 2.1% 40 13.4% 9 23%
9072 日本梱包運輸倉庫 13.5 0.87 2.2% 163 -0.6% 34 21%

(注)上場するトラック輸送株の中で、以下の条件を満たすものを抽出。
①会社が予想する2015年3月期の経常利益が前年比で増益または5%以下の減益、
②4-6月の経常利益の進捗率が会社の年間計画の20%以上。楽天証券経済研究所が作成。