「中国関連株」と言われる日本株には、PBR・PERなどの株価指標で割安なものが多い。中国経済の停滞が長期化、常に先行きに不安を感じさせる報道が続いていることが影響しています。

(1)中国からの訪日観光客が急増

日本政府観光局(JNTO)が発表した7月の訪日外国人数(推計値)は前年同月比26.6%増の126万9,700人と単月で過去最多となりました。政府が成長戦略で観光立国を打ち出し努力している効果もありますが、それ以上に円安が進んで海外から見た日本旅行の価格が下がった効果が大きいと考えられます。

国別では、中国が前年同月比101.0%増の28万1,200人と、単月では訪日旅行者数トップとなりました。都内の百貨店や空港の免税店は、中国人観光客の買い物で賑わっています。中国経済の不安が議論されているが、日本を訪れる中国人観光客を見る限りその気配はありません。いったい中国経済の現状はどうなっているのでしょうか。

(2)中国で大衆消費が拡大トレンドに

中国経済には、2つの顔があります。「消費」は好調です。ところが、「投資」が過剰で先行きに大いに不安があります。

中国では、中間層の所得水準向上が顕著です。ようやく消費主導で経済を成長させる条件が整い始めていると言えます。中国の名目GDPの約半分は広義の消費(政府消費を含む)ですが、ここは年率2桁の成長が続くと期待できます。中国からの訪日観光客が日本で買い物をするのは、好調な大衆消費拡大の一環と言えます。

(3)投資依存が中国経済の構造問題

一方、中国経済には、先行きが不安な部分があります。それが「投資」です。中国の名目GDPの半分弱は広義の投資と推定されますが、ここが明らかに過剰です。中国は社会主義体制のまま資本主義に移行したため、計画経済と資本主義が混在した経済となっています。計画経済の延長線上にある地方政府や国営企業に過剰投資体質が残っています。

民間企業は、経済状況が悪化すれば投資をストップするが、地方政府や国営企業は、経済が悪化しても計画通り、投資を実行する面があります。それが、製鉄所やマンション開発、資源開発などでの過剰投資を生んできました。これまでは無謀な投資でも、投資資金の調達に困ることはありませんでした。「理財商品」といわれる高利回り商品で資金調達ができたからです。ただし、理財商品にもデフォルト(債務不履行)の懸念が出始めていることから、今後は理財商品による調達もこれまでのように簡単にはできないようになると考えられます。

中国共産党は、地方政府による過剰投資問題を十分に認識しており、今後消費主導の成長経済に移行する方針を掲げています。ただし、投資依存は簡単には止められません。投資を減らし過ぎると景気が悪化して社会不安が生じるからです。現在、小出しに公共投資を続けて景気の悪化を防いでいる状態です。

(4)中国関連株の業績も二極化

こうした中国経済の二面性を反映して、中国でビジネスを行っている日本企業は、事業内容が消費関連か投資関連かで業績が異なります。「無印良品」を展開する良品計画(7453)や、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)の中国ビジネスは順調に拡大しています。花王(4452)は長年低迷していた中国の売上がようやく拡大基調に入りました。日用品・サービスを手がける日本企業はおおむね好調です。

ところが、日立建機(6305)のように、建設機械・鉱山機械を手がける日本企業は苦戦しています。投資に関連する事業は不調です。

(5)買いを検討してもよいと考える中国関連株

中国関連株というイメージを持たれ割安に放置されているものの、中国事業の利益構成比がさほど高くない銘柄もあります。大手総合商社5社<三菱商事(8058)・三井物産(8031)・伊藤忠商事(8001)・住友商事(8053)・丸紅(8002)>、大手鉄鋼2社<新日鐵住金(5401)・ジェイエフイーHLDG(5411)>、大手海運2社<日本郵船(9101)・商船三井(9104)>などです。これらの銘柄は、今来期に業績回復が見込まれるので、株価が割安の今が投資好機と判断しています。