25日の日経平均は、74円高の15,613円でした。日経平均の値動きは小さく、商いも盛り上がりません。一方、ミクシィ(2121)が5%高、CYBERDYNE(7779)が7.5%高となるなど、新興市場の小型成長株は活況でした。

(1) 人気株と不人気株で、株価バリュエーションに大きな差

小型成長株として人気が出ている株と、万年割安に据え置かれている不人気株で、バリュエーションに大きな差が生じています。

人気株の例として、ミクシィ(2121)、CYBERDYNE(7779)を、不人気株として大手総合商社5社をあげて比較したのが、以下の表です。

 

 

コード 銘柄名 株価:円 PER:倍 PBR:倍 配当利回り
2121 ミクシィ 6,030 31.3 22.4 0.8%
7779 CYBERDYNE 3,800 赤字 35.4 無配
 

 

コード 銘柄名 株価:円 PER:倍 PBR:倍 配当利回り
8001 伊藤忠商事 1,335.5 7.0 1.0 3.4%
8002 丸紅 754.1 5.9 0.9 3.4%
8031 三井物産 1,721.5 8.1 0.8 3.7%
8053 住友商事 1,353.5 6.7 0.7 3.7%
8058 三菱商事 2,183.0 8.8 0.7 3.2%

(注:8月25日時点、PERは連結予想・PBRは連結実績ベース、
配当利回りは今期予想ベース、楽天証券経済研究所が作成)

人気株のミクシィ(2121)は利益の急成長局面にあり、株価にはさらに大きな上値余地があると予想しています。一方、同じく人気のCYBERDYNE(7779)は、まだ赤字で無配です。期待先行で株価が上がり過ぎている可能性があります。

不人気株の例として挙げたのが総合商社です。PER・PBRがこのように低く、配当利回りが高いのに、株価は長年にわたり割安のまま放置されてきました。総合商社は割安でも評価できないと考えている投資家が多いからです。

不思議なのは、株式市場で人気のない総合商社は、学生の就職人気ではトップクラスであることです。学生の判断と、株式市場の判断はどちらが正しいのでしょうか。

(2)総合商社は、成長性と割安性を兼ね備えた魅力的な投資対象

私は、総合商社株を、投資対象として高く評価しています。割安に放置されてきたのは、①資源事業の利益構成比が高く不安定、②世界中の新興国でビジネス展開しており地政学リスクに弱い、と考える投資家が多いからでしょう。

現在の商社は、投資家のイメージとはかなり異なった姿になってきています。リーマンショック後、資源価格が下落する中で、資源事業の利益は減少しました。その中で、非資源事業を伸ばしてきたため利益構成は改善しています。食糧や海外独立電力など景気変動の影響を受けにくい安定的事業の比率も高まっています。また、世界中でビジネス展開していながら、特定地域で過度のリスクを負わないようにしています。

総合商社の戦略は、資源もなく少子化が進む日本がどう生きていくべきか、まさにその道筋を示しています。政府が成長戦略としてやっていくべきことは、商社がほとんど手をつけています。大手商社は、原油・LNG・石炭・鉄鉱石・銅・アルミニウム・レアメタルなどの資源開発を古くから積極展開しており、世界中に資源権益を保有しています。資源のない日本が生きていくのに不可欠な貴重な「日の丸資源会社」となっています。

一方、資源に依存しすぎないよう、非資源事業を拡大してきました。なかでも、日本がこれから積極的に取り組んでいかなければならないと考えている、新興国での社会インフラ整備事業には力を入れています。発電所・鉄道・上下水道などの建設・運営を幅広く手がけています。

総合商社は、IT・バイオ・新エネルギーなど、今すぐ花開かなくても、将来いつか大きな成長のタネになりそうなものには、片っ端から手を出しています。その貪欲さこそが、今の日本に欠けている成長力の獲得につながると思います。それでいて、赤字が長期化した場合の撤退ルールについても厳格に適用しています。

大手5社でやっている事業、リスクの取り方は異なりますが、いずれも新興国の成長を取り込みつつ、巧みにリスク管理している有望な投資対象だと思います。