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タイ経済の現状と、日本株への影響
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

タイ経済の現状と、日本株への影響

2014/8/22
先週、タイを視察しました。現地の声などを踏まえ、タイ経済の現状と今後の展望、日本株への影響について考えてみました。
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先週、タイを視察しました。現地の声などを踏まえ、タイ経済の現状と今後の展望、日本株への影響について考えてみました。

(1)政治混乱で経済が低迷したタイ

まず、タイ経済の過去の推移を簡単におさらいします。

 

<タイ実質GDP成長率(1980年-2014年)2014年はIMF予測>

(出所:IMFデータより楽天証券経済研究所が作成)

タイは、1980年以降、おおむね年率5%以上の高成長が続いてきました。1980年代後半から1990年代前半にかけて一時10%を超える高成長がありましたが、1997-98年のアジア危機で頓挫しました。その後は、成長率が5%に届かない年も多くなりました。経済が不振であった年について、背景は以下の通りです。

  • 1997-98年:新興国(中南米・アジア・ロシア)経済危機
  • 2001年:アメリカのITバブル崩壊による不況が影響
  • 2008-09年:2008年のリーマンショックの影響
  • 2011年:タイ大洪水で工業地帯が深刻なダメージ
  • 2013-14年:政治の混乱によって経済が停滞

2013年11月からタクシン派・反タクシン派の対立が激化して政治が機能不全となりました。予算執行も滞り、経済が停滞しました。解決の糸口が見えない中、2014年6月にタイ国軍がクーデターを起こし、軍が全権を掌握しました。現在、タイ国軍の任命した暫定政権が政策運営を担当しています。なお、タイ国軍は、2015年中に総選挙を実施して民主政治に戻す方針を表明しています。

(2) タイの政治・経済の見通し

2014年のタイGDPは2%台の低成長に留まるでしょう。ただし、2015年には4%台の高成長に復帰すると予想しています。2013-14年に経済を停滞させた政治の混乱が収束に向かうと判断しているからです。政治の混乱さえ収まれば、経済は再び活気を取り戻すでしょう。

タイは、新興国として、経済成長が続く条件が整っています。①社会インフラが充実。②勤勉で手先の器用な若年人口が豊富。③資本主義国。④国内に民族や宗教の深刻な対立がない、などです。既に、自動車・電機産業から多数の日本企業が現地に進出しています。親日国家として知られています。

(3) 政治の混乱が収束に向かうと考える理由

軍事政権が支配するタイで「政治の混乱が収束する」と考える点について説明が必要と思います。日本では、タイについて「軍事クーデターによって民主主義が否定された」「軍事政権の支配が続く限り国際社会の信頼も失う」「政治・経済の停滞は長期化する」という悲観的トーンの報道をよく見かけます。現地の感覚とは、やや異なると思います。

「これ(軍事クーデター)で政治・経済の混乱が収束する」は、現地(バンコク)庶民の一般的感覚です。タイは1932年に王国から立憲君主制に移行して以降、軍部によるクーデターはこれで実に19回目です。

タイ国軍は、国王を総帥としています。タイ国民に国王のことを尋ねると、ほぼ間違いなく「国王(ラーマ9世)は(タクシン派・反タクシン派を問わず)幅広く国民から尊敬されている」との答えが返ってきます。政治の混乱が大きくなるたびに、タイ国軍はクーデターを実施しました。国王はそれを承認し、ほとんどの国民も、国軍による政治の安定化策を受け入れてきました。

クーデターは軍部による政権の恒久支配を狙うものではなく、一時的な政権安定を取り戻すために実施されています。前回(2006年)の軍事クーデターでは1年以内に政権を返上しています。今回も、2015年中に総選挙を実施して政権を返上する方針です。軍事クーデターというと、日本では戦前の226事件や515事件が連想されますが、タイの軍事クーデターは、それとは性格の異なるものです。

タクシン派(地方の低所得層と農民層が支持基盤)と反タクシン派(都市部の中間層と富裕層が支持基盤)の対立は、宗教や民族の対立ではありません。あくまでも、経済政策をめぐる主張の違いです。タクシン派は低所得層からの支持をねらった経済政策を実行しましたが、タクシン自身は実業で大成功した富豪でもあります。現地では「政治の権力闘争に過ぎない」との冷めた声もあります。

タイ国内には、民族や宗教上の対立はあまりありません。人口の約85%を占めるタイ族と、10%を占める華人(中国系)の融和が進んでいるからです。仏教徒が中心で、それがタイの治安の良さにつながっています。その意味で、民族・宗教の対立が絡むウクライナ・イラク・イスラエルの地政学リスクとは、性質の異なるものです。

現地でデモが起こっていた時も、「一部の人がやっているだけで、多くの人は静観していた」「デモのシーンだけ繰り返し海外で報道されたので、タイは危険な状態にあると誤解を与えてしまった」が現地の偽らざる感覚です。一部で暴力行為があり、6月には一時外出禁止令(午後10時~翌朝5時)まで発せられましたが、今経済は正常化に向かっています。

(4) 日本株投資へのインプリケーション

タイ経済低迷の影響を受けて、業績が悪化している自動車株は、タイ経済の回復にともなって現地の利益が回復すると考えられます。日本のタイ関連株は、買いの好機と考えます。

ただし留意すべきことは、一口に「タイ関連の日本企業」といっても、自動車産業と電機産業で、業績への影響の出方が異なることです。自動車産業は、タイで生産してタイ国内で販売する部分が大きいので、1-6月でタイの自動車販売が前年比41%減の44万台と大きく落ち込んだ影響を大きく受けました。いすゞ自動車、トヨタ自動車、本田技研工業などが、マイナスの影響を受けています。また、クボタも、現地で農業機械の販売がマイナスの影響を受けています。

一方、ミネベアや日本電産はタイでの生産が大きいが、タイで生産したものは最終的にタイ国外へ輸出される部分が大きいので、タイ経済低迷の影響はほとんど受けていません。タイの通貨が下がった効果は、むしろタイからの輸出に追い風となっています。ミネベア・日本電産は業績好調で、株価も上昇基調が続いています。

私は、来年以降、タイの自動車販売は回復すると見ています。自動車販売の落ち込みについて現地で聞くと「自動車購入に対する政府のインセンティブ(補助金)が打ち切られた影響が大きい」とのことです。来年には自動車販売の反動減の影響は薄れるでしょう。

ただし、私には、1つ気になることがあります。自動車の保有台数の増加に道路整備が追いついていない為に、バンコクで慢性的な渋滞が起こっていることも、自動車購入意欲に悪影響を及ぼしているかもしれないと感じたことです。バンコクで渋滞を縫うように大量の二輪車が走り回っている姿が印象的でした。現地では、渋滞によって重要な仕事に間に合わなくなりそうな場合には、自動車を乗り捨てて二輪車タクシーに乗り換えることもあるそうです。

 

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