20日の日経平均は、4円高の15,454円でした。膠着色の強い展開です。今日は、昨日に続き、含み資産株についての考えを述べます。

(1) 都市部の不動産に上昇機運

昨日レポートで書いたことですが、都市部の不動産に上昇機運が出ています。私は今後1~2年、東京を中心とした不動産価格の上昇が続くと予想しています。

今日は、都心不動産が上昇するときに株価が上昇することが期待される「含み資産株」の参考銘柄を、ご紹介します。

2010年度から日本の会計基準で、賃貸不動産の時価を開示することが義務付けられました。それから、保有する賃貸不動産に含み益がある企業も明らかになりました。今日は、2014年3月末時点の含み益データに基づいて参考銘柄を探します。

(2) 一等地に優良物件を所有する大型株が第1候補

不動産ブームの初期は、都心一等地の優良物件だけが上昇します。今は、それに近い状態です。ブーム中期には、都市部全般に値上がりが広がりますが、地方物件まではなかなか上昇が波及しません。過去の経験則では、ブームの末期になって、やっと地方の物件まで上昇します。しかし、その時はブーム終了が近づいているので、注意が必要です。

日本では過去、1973年・1990年・2007年に不動産ブームがありました。過去のブームでは、末期には地方物件まで上昇が波及していました。ところが、近年は、都市部の優良物件しか値上がりしない傾向が強まっています。今回のブームで、上昇が地方物件まで波及するかわかりません。

したがって、投資銘柄を選ぶ際は、まずは、東京・名古屋・大阪に優良物件を保有する大手不動産などが、投資候補となります。

(参考)賃貸不動産含み益が大きい上位5社

2014年3月末時点で、含み益が6000億円を超える企業は、以下の5社です。

(金額単位:億円)

  コード 銘柄名 産業分類 含み益 連結PBR 実質PBR
1 8802 三菱地所 不動産 20,965 2.57 1.22
2 8801 三井不動産 不動産 12,159 2.59 1.56
3 8830 住友不動産 不動産 11,326 2.76 1.31
4 9020 東日本旅客鉄道 電鉄 9,193 1.48 1.15
5 9432 日本電信電話 情報通信 6,244 0.92 0.88

(注)各社有価証券報告書から楽天証券経済研究所が作成。
実質PBRは、自己資本に賃貸不動産含み益の70%を加えて計算。

三菱地所(8802)は、「丸の内の大家さん」と言われ賃貸不動産の含み益は2兆965億円もあります。PBR(株価純資産倍率)は2.57倍ですが、含み益の70%を加えて計算しなおした実質PBRは1.22倍となります。今後、都心一等地の不動産評価額が上昇することを前提とすると、株価にはさらに上昇余地があると考えられます。

東日本旅客鉄道(9020)は、東京・品川など駅前の一等地を保有しており、不動産会社として見た場合、三菱地所や三井不動産に匹敵する力を持っています。新幹線など旅客ビジネスも好調であり、株価はさらに評価される余地があると考えています。

(3) 実質PBRが低い会社

中小型の含み資産株には、含み益を勘案した実質PBRが非常に低い銘柄がたくさんあります。

(参考)実質PBRが0.6倍以下の12銘柄

(金額単位:億円)

  コード 銘柄名 産業分類 含み益 連結PBR 実質PBR
1 9302 三井倉庫 倉庫 1,052 0.87 0.40
2 3001 片倉工業 繊維 871 0.85 0.40
3 9308 イヌイ倉庫 倉庫 356 1.02 0.41
4 3106 倉敷紡績 繊維 336 0.52 0.41
5 9304 澁澤倉庫 倉庫 373 0.77 0.44
6 3205 ダイドーリミテッド 繊維 307 0.88 0.46
7 7404 昭和飛行機工業 輸送用機器 680 1.23 0.48
8 5901 東洋製罐グループHLDG 金属製品 826 0.53 0.49
9 9401 東京放送HLDG 放送 1,502 0.64 0.50
10 8841 テーオーシー 不動産 1,523 1.33 0.54
11 9303 住友倉庫 倉庫 543 0.75 0.60
12 8806 ダイビル 不動産 1,087 0.95 0.60

(注)各社有価証券報告書から楽天証券経済研究所が作成。
実質PBRは、自己資本に賃貸不動産含み益の70%を加えて計算。

このような実質PBRが非常に低い銘柄は、敵対的買収が盛んな国では大いに注目されます。ただし、今の日本では、あまり敵対的買収が起こらないので、いつまでも割安なまま放置される可能性もあります。それでも、含み資産相場のピークでは、注目が広がって株価が上昇する可能性が高まります。

(4) 話題性のある含み資産株:羽田空港関連

含み資産株は、ただ安いだけではなかなか買われないですが、何かのテーマや材料に引っかかると、大きく上昇することがあります。今回は、海外からの訪日観光客の増加と、国際便の発着枠増加で恩恵を受ける羽田空港関連の銘柄を紹介します。

かつて羽田空港は国内専用空港で、成田が国際空港でした。その頃は、羽田の国際便というと、政府要人が乗る特別機のみ離着陸していました。その後、羽田空港は沖合い展開が図られ、国際便の発着が大きく増加しました。成田よりも東京へのアクセスが良いことから、成田からシェアを奪っている状態です。羽田空港にはこれからも発着枠を増やす余地が大いにあり、成田からシェアをとり続けると想定されます。

(参考)羽田空港関連の不動産株

(金額単位:億円)

  コード 銘柄名 産業分類 含み益 連結PBR 実質PBR
1 8864 空港施設 不動産 111 0.83 0.71
2 9706 日本空港ビルデング 不動産 1,027 3.01 1.76

(注)各社有価証券報告書から楽天証券経済研究所が作成。
実質PBRは、自己資本に賃貸不動産含み益の70%を加えて計算。

空港施設(8864)は、羽田空港の空港施設・賃貸ビルの運営に加え、冷暖房・水供給事業を行っています。2015年3月期経常利益が▲5.8%減益の29.1億円との会社予想を発表したために、株価が下落して割安となっています。ただし、第1四半期の経常利益は前年比22%増益の12.3億円となり、既に通期会社予想の42%を達成しています。今後、業績上方修正の可能性が高く、今は買いの好機と考えます。

日本空港ビルデング(9706)は、羽田空港ビルの賃貸・管理のほか、直営売店・免税店の運営も行っています。訪日外国人の増加で免税店の売り上げが拡大し、2015年3月期経常利益は前年比33%増の76億円を見込みます。既にテーマ株として人気化しています。