18日の日経平均は、4円高の15,322円でした。強弱材料が拮抗して、上下とも大きくは動けない相場が続いています。日本を含め世界的に景気回復に力強さが見られないことが、上値を押さえています。

一方、景気回復が緩慢で、日米欧で金融の緩和的状況が長期化しそうなことは、株式相場にとって好材料となっています。

(1)欧米で金利低下トレンド続く

ドイツの4-6月GDPは前期比年率▲0.2%と、マイナスに転落しました。欧州経済の機関車役であったドイツまで失速し、欧州全体にデフレ色が強まっています。ドイツの長期金利は、ついに1%を割れました。スペインやイタリアですら、長期金利は2%台半ばまで低下してきています。

米国・ドイツ・日本の長期金利推移: 2005年12月末~2014年8月18日

(注)楽天証券経済研究所が作成

金利低下は景気が失速した欧州だけでなく、景気好調な米国でも進んでいます。米景気が短期的に好調であることよりも、長期的な成長性が低下していることが、金利低下につながっています。これは、1990年代に日本で構造的な成長性低下→インフレ率低下→金利低下が進んだのと、同じ現象と考えられています。

今、欧米で続く金利低下は、ジャパナイゼイション(日本化)と呼ばれています。ちなみに、金利低下「先進国」日本では、長期金利は足元0.5%を割りました。

(2)欧米でインフレは沈静化、日本でもインフレ加速の兆しはない

欧州は、1990年代の日本と同様、低インフレ・低金利経済へまっしぐらに見えます。ユーロ圏のCPI(消費者物価指数)上昇率は、2014年6月で前年比0.5%、7月は同0.4%まで低下しています。

米国・ユーロ圏・日本のCPI総合指数上昇率:2009年12月~2014年6月

(注)日本の2014年6月のインフレ率は消費増税の影響(2%)を除いた
実質値(前年比+1.6%)、楽天証券経済研究所が作成

米国は短期的な景気が好調なので、欧州ほどインフレ率・金利の低下が進んではいません。ただし、長期的な成長性が低下していることに注目が集まっているので、長期金利は低下トレンドが続くでしょう。

(3)ジャクソンホールでのイエレン講演に注目

イエレンFRB議長は、21-23日にワイオミング州ジャクソンホールで開催される金融・経済シンポジウム「テーマ:労働市場のダイナミズムの再評価」で、労働市場について講演します。

イエレンFRB議長は、従来から主張している持論「労働参加率の低下や長期失業率の増加に労働市場の脆弱さが現れている」を繰り返すと見られています。米FRBは、金融緩和を終了しても早期に利上げすることはないとの期待が継続すると考えます。

 

(4)好配当利回り銘柄に改めて注目

米FRBの金融緩和によって世界的に金利が低下した効果で、世界的に「高利回り債券」を買い漁る動きが広がっています。この流れは長期化すると予想しています。

日本は既に長期金利が0.5%まで低下した低金利国ですが、それでも日本株には配当利回りが2-3%台と比較的高いものが多数あります。安定的に好配当利回りが期待できる株には、いずれ見直し買いが入ると予想しています。

好配当利回りの参考銘柄

コード 銘柄名 業種 予想配当利回り
2914 日本たばこ産業 食品 2.7%
4502 武田薬品工業 医薬品 3.9%
6301 小松製作所 機械 2.5%
7201 日産自動車 自動車 3.4%
7203 トヨタ自動車 自動車 3.0%
7267 本田技研工業 自動車 2.7%
7751 キヤノン 電機 3.9%
8001 伊藤忠商事 商社 3.6%
8031 三井物産 商社 3.7%
8058 三菱商事 商社 3.3%
9432 日本電信電話 通信 2.7%
9433 KDDI 通信 2.7%
9437 NTTドコモ 通信 3.4%

(出所)8月18日時点で時価総額2兆円以上、予想配当利回り2.5%以上、経常利益率5%以上、自己資本比率10%以上の銘柄を、楽天証券スーパースクリーナーを使って抽出