今日は2つのレポートをお届けします。

Ⅰ.今週の日本株見通し

Ⅱ.クイズで学ぶテクニカル指標:出来高変化を読む①

Ⅰ.今週の日本株見通し

8日(金)の日経平均は、454円安の14,778円と急落しました。オバマ大統領がイラクの限定空爆を承認したことが下落のきっかけとなりました。欧米株式が下がり、つれて日本株にも外国人投資家と推定される売りが入り、大きな下げにつながりました。

私は、この下げ局面は日本株を買い増す好機と考えます。ただし、下値を確認するまで、今しばらく様子見が必要と考えます。

(1)世界的な地政学リスクの広がりに、懸念が強まる

これまで株式相場が無視してきた地政学リスクへの懸念が、強まりました。

  • イラク・シリアでイスラム教スンニ派武装勢力が「イスラム国」樹立を宣言して支配地域を拡大している問題
  • ガザ地区でイスラエル軍とハマスの対立が深まっている問題
  • 東ウクライナでのマレーシア機撃墜事件をめぐり、欧米とロシアが制裁合戦を繰り広げている問題
  • 中国の海洋進出で周辺諸国との摩擦が強まっている問題
  • 北朝鮮が国際社会の警告を無視してミサイル実験を繰り返している問題

(2)米国と中東スンニ派との亀裂が決定的になることはないと予想します

サウジアラビアを始めとして、中東の親欧米諸国は、ほとんどスンニ派が主導しています。米国は、サウジなどへの配慮からイラクでスンニ派武装勢力を空爆することは避けてきました。ところが、スンニ派支配地域でキリスト教徒が立ち退きを迫られているなどの一部報道もあり、限定空爆を実施する方針に転じた模様です。ただし、米国はサウジアラビアなどとの関係には亀裂が生じないように配慮すると考えられます。

この問題については、7月9日のレポート「分裂危機のイラク、日本株への影響」もご参照ください。

(3)日経平均は、14,000円を割ることはないと予想

日本の景気・企業業績の回復が続くと予想されるので、日経平均が14,000円を割ることはないと考えます。今週の日経平均は軟調に推移すると考えられますが、1~2週間以内に下値を確認して切り返すと予想しています。10月以降に、16,000円を超えて上昇するという予想は継続します。

Ⅱ. クイズで学ぶテクニカル指標

8月11日~15日の間、筆者夏季休暇となります。その間、本レポートは特別編「クイズで学ぶテクニカル指標」を掲載いたします。私がファンドマネージャーをやっていた25年間で重視していたテクニカル指標について、解説します。

本日のテーマは、「出来高の変化を読む①」です。

(1)まずは、クイズです。

A社株チャート、売り・買い、どっち?

(注)筆者が作成

(2)100%当たるチャートシグナルはない

こういうクイズを出すと、「チャートだけでは今後の株価はわかりません」とお答えになる方もいらっしゃると思います。確かにその通りです。チャートに基づく投資判断は、100%当たるものではありません。

ただし、チャートのパターンを見ることで、統計的に今後上がることが多いか、それとも下がることが多いか判断することは可能です。統計的に、7割の確率で上昇するチャートのパターンがあれば、それは立派な買いシグナルです。一方、3割の確率で下落したとしても、それは当然です。100%当たるチャートは存在しないのですから。

それでもチャートのシグナルを見て売買するのは意味があることです。7割の確率で上昇するパターンが出たら買いを実行、上昇すれば利益が得られます。もし外れて下がったら、さっさと損切りするだけです。同じパターンのチャートで勝負し続ければ、長期的には利益を稼ぐ可能性もあるでしょう。

(3)出来高(売買高)を見る習慣をつけましょう

チャートを見るとき、株価だけでなく、あわせて出来高の変化を見る習慣をつけましょう。出来高の変化に重要な鍵が含まれている場合があるからです。

出来高は、概して人気のバロメーターと言われます。一般的には、以下のように考えてください。

  • 出来高が多い=人気が高い
  • 出来高が少ない=人気が低い
  • 出来高が増加=人気が高まりつつある
  • 出来高が減少=人気がなくなりつつある

上記①~④には、例外もありますが、それは後日、解説します。

(4)一般的に出来高急増は買いシグナル

安値圏で出来高が少なかった銘柄が、急に出来高が増えたときは、一般的に買いシグナルです。なんらかの買い材料が出て、人気が出た可能性が高いからです。

高値圏で大商い(出来高が多い)銘柄が、徐々に出来高が減少していく場合には、売りシグナルが出ます。

(5)クイズの答え

今日のA社株の投資判断は「売り」です。出来高の変化を見ていれば、人気の推移がわかりますね。A社は2カ月前に出来高が増えて株価が急上昇したが、その後、出来高が減少しながら高値からだらだらと下がってきています。2カ月前の買い材料が一時的なもので、もう人気がなくなって売りたくなってきた人が増えていることがわかります。

安値を更新しながら下げトレンドに入りつつあります。この辺りから、そろそろ下げが加速する可能性があります。

(6)逆さチャート

それでは、B社チャートは、売り・買い、どっち?

(注)筆者が作成

B社は、安値圏で出来高がどんどん増えています。株価は上昇を始めていますが、まだ安値圏から大きくは上昇しません。これから、上昇が加速すると予想されます。このチャートの投資判断は「買い」です。

ところで、B社チャートは、冒頭のA社チャートの上下をひっくり返して逆さにした「逆さチャート」だと気づきましたか出来高も逆さにしています。出来高増加は減少、減少は増加になるように作っています。

売りシグナルの出ているチャートを逆さにすると、買いシグナルの出ているチャートになります。買いシグナルの出ているチャートを逆さにすると、売りシグナルの出ているチャートになります。

私は、チャートの読み方に迷うとき、チャートを逆さにして見ることがあります。チャートを逆さにした途端、「なんだ買いシグナルが出ているじゃないか」と気づくことがあります。逆さで買いシグナルということは、元のチャートには売りシグナルが出ていたわけです。

株式相場全般に強気見通しを持っていると、個別銘柄の売りシグナルに気づかなくなることがあります。そんな時、チャートを逆さから見ることをオススメします。強気バイアスにとらわれて見えていなかったシグナルが見えることがあります。