日銀が18日発表した資金循環統計(速報)によると、日銀が保有する国債残高は3月末時点で201兆円と過去最高になりました。保有残高で保険会社を抜いて、日銀が最大の国債保有主体になっています。

(1)インフレをカバーできない低い利回り

日本の長期金利(新発10年国債利回り)は、18日時点で0.595%。一方、日本のコアCPI(消費者物価指数)の前年比上昇率は、4月時点で3.2%です。4月のCPI上昇には消費税引き上げの影響1.7%が含まれていますので、増税影響を除いた実質的な物価上昇率は、1.5%(3.2%-1.7%)です。

物価が1.5%上がるときに、利回りが0.6%しかない長期国債に投資していたのでは資産価値は目減りしてしまいます。インフレ控除後の実質リターンは、マイナス0.9%(0.6%-1.5%)です。仮にインフレ率が10年間1.5%に留まると、10年間で投資資金は実質9%(マイナス0.9%×10年間)も目減りしてしまいます。

(参考)日本の長期金利とコアCPI上昇率推移(2003年7月~2014年4月)

実質金利 (長期金利ーコアCPI上昇率)

(2)大手金融機関は日銀が国債を大量に買い付けるうちに、売り逃げ

千載一遇のチャンスだったそうです。昨年4月、黒田日銀総裁が異次元緩和を始めたとき、10年国債の利回りは一時0.455%まで低下(債券価格は上昇)しました。日本の大手銀行や保険会社は、これ幸いと、保有する国債をかなり売却しました。人為的な低金利で国債を売却し、将来金利が正常化して上昇したら買い戻そうとの腹でした。ところが、日銀が長期国債を買い続けるので、国債利回りはなかなか上昇しません。それでも、期間の長い国債は、将来金利が正常化(上昇)する前に、減らした方がいいと考える主体が増えています。

(3)インフレ・リスクをカバーする株式投資

インフレに強いアセット(資産)は、株です。インフレになれば、企業の利益が名目上増加し、株価も上昇します。仮に、すべてのモノ・サービスの価格が一律に10%上昇するとしましょう。企業の売り上げは10%増えます。給料もその他の経費もすべて10%増加します。すると、利益も10%増えます。PER(株価収益率)が変わらないと仮定すると、株価も10%上昇します。

私は、今後10年、インフレは年率プラス1~2%で推移すると予想しています。その前提にたてば、長期国債を売った金で、日本株を買い増すべきです。

(4)GPIF改革

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは、世界最大の預かり資産約128兆円(昨年末時点)を有する公的年金のことです。GPIFは、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、それに従って、分散投資を行っています。現在の基本ポートフォリオ(中心)は、国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%です。株価の上昇で、時価ベースで見ると国内株式は17%程度に上昇しています。

それでも、これからプラスのインフレ率が定着すると仮定すると、まだまだ国内株式の保有高は小さすぎると思います。GPIFの運用改革提案で、国債を減らして、国内株式をはじめとするリスク資産の保有を増やすのは、きわめて妥当な提案だと思います。

GPIFばかりが話題になりますが、日本の公的年金は他にもいろいろあります。いずれも、やや安全性にかたよった運用で、国債の保有が多すぎる傾向があります。

GPIF、および他の公的年金の運用改革が進むことで、今後、日本株の継続的な買い手として、公的年金が注目されるようになると思います。