10日の日経平均は129円安の14,994円。これまで連騰が続いてきたことに警戒感が出て反落しました。さて、今日は、日本株の需給分析をします。

(1)外国人投資家の強烈な売りはなくなった・・・でも外国人は買っていない

日本株の需給分析で、もっとも重要な売買主体は、外国人です。過去20年以上にわたり、外国人投資家が買い越した月は日本株が上昇し、売り越した月は日本株が下落する傾向が顕著です。外国人は、買う時は上値を追って買うが、売る時は下値を叩いて売ってきます。外国人が売るか買うか分かれば、かなり高い確率で日本株の短期的な上昇下落を当てることができます。

去年は、外国人投資家が約15兆円、日本株を買い越したために日本株は大きく上昇しました。今年の1-3月は、外国人投資家が約2兆円、日本株を売り越したために、日本株は下落しました。

日本株は、5月後半から底打ち、上昇トレンドに入りました。外国人の大きな売りがなくなったので、自律反発したと見ることもできます。ただし、外国人はまだ日本株を買い越していません。それでは、いったい誰が日本株を買っているのでしょうか。

<日経平均日足>(2014年4月1日~6月10日)

(2)5月後半からの買い主体は、公的年金と推定される

現時点で分かっている、5月後半(19-31日)の主体別売買動向を見ると、おもしろいことが分かります。

  金額(億円)  
信託銀行 4,281 買い越し
事業法人 799  
投資信託 471  
証券自己 384  
外国人 ▲ 199  
金融法人 ▲ 359  
個人 ▲ 5,385 売り越し

(出所:東京証券取引所)

5月後半、日本株を買い越しているのは、信託銀行です。信託勘定で株を買い付けるのは、主に年金(企業年金と公的年金)です。企業年金は、近年運用を縮小しつつありますので、5月後半の買いは、公的年金と推定されます。

つまり、5月後半は、外国人の売りが少なくなった中、公的年金の買いが主導して日経平均を上昇させたと推定されます。年金基金は値をなるべく上げないように丁寧に買っていきますので、小幅の上昇が何日も続く上がり方になりました。上値で指値の売り物を出していた個人投資家の売りを吸収していきましたので、売り手口は、個人投資家が中心となりました。

(3)GPIFの運用改革について

公的年金というと、すぐに思い浮かぶのは世界最大の預かり資産約128兆円(昨年末時点)を持つ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。GPIFは、基本となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を定め、それに従って、分散投資を行っています。現在の基本ポートフォリオ(中心)は、国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%です。

現在、GPIFの運用改革が議論されています。国内債券の割合が高すぎるので、国内債券の比率を減らして、他のリスク資産の比率を高める提言が有識者から出されています。4月に麻生財務大臣が「6月にもGPIFに動きが出る」と発言して話題になりました。ただ、その後の報道を見る限り、GPIFが実際に運用改革を行うのは、秋以降と考えられます。

では、5月後半に、日本株を買ったのはいったい誰でしょう。まったくの推定にすぎませんが、GPIF以外の公的年金が日本株の比率を高めた可能性もあります。GPIF以外の公的年金も、総じて、国内債券の比率が高いので、同じように国内債券を減らして他のリスク資産の比率を増やしたとしても不思議はありません。

(4)外国人が買わない限り、継続的な上昇は期待できない

年金と推定される買いで上昇してきた日本株ですが、年金の買いだけでは継続的上昇は期待できません。年金の買いが一巡すれば、反落する可能性もあります。外国人の売買動向に注目です。

私は、日本の景気・企業業績の拡大が続くと考えているので、年後半には、外国人が積極買いに転じ、日本株の上昇が加速すると予想しています。ただし、今はまだ外国人が買ってきていないので、すぐには一本調子の上昇は期待できません。

(重要な注釈)本レポートに記載されている5月後半の年金の売買動向は、あくまでも筆者の需給分析に基づく推定です。