4日の東京市場で大手鉄鋼株が商いを伴って上昇しました。6月3日に、もっとも注目している銘柄として本欄でご紹介した、新日鐵住金(5401)は3.8%高、JFEホールディングス(5411)は3.1%高でした。出来高も増加し、テクニカル分析で買いシグナルが点灯しました。

(1)大手鉄鋼株に注目する理由

6月3日に大手鉄鋼株(新日鐵住金(5401)、JFEホールディングス(5411)、神戸製鋼所(5406)、日新製鋼(5413)、東京製鉄(5423))を注目銘柄としてご紹介したのは、株価が割安で業績拡大が続くと予想したからです。詳しくは、6月3日のレポート「鉄鋼株に強気判断を継続」をご参照ください。

また、4月25日のレポート「大手鉄鋼株は割安、買い場が近いと判断」にも業績拡大が続くと予想する理由が詳しく書かれています。

今日は、別の観点から、大手鉄鋼株の魅力を紹介したいと思います。新日鐵住金(5401)は、水素社会実現のためのコア技術を保有する企業として注目できます。神戸製鋼所(5406)も、水素関連の技術を持ちます。

(2)グリーン水素は、持続可能な地球を作る鍵となる

今、私たちは大量の化石燃料を使って生活しています。持続可能な地球環境を維持するには、化石燃料を使わずに人類が使うエネルギーをすべてまかなう仕組みを作っていかなければなりません。その候補が、グリーン水素と地熱発電です。

地球上に降り注ぐ太陽光エネルギーは莫大で、そのわずか数%を思い通りに使うことができれば、人間が今使っているエネルギーをすべてまかなうことができます。ところが、それは簡単ではありません。太陽光エネルギーの総量は莫大でも、地球全体に広く薄く、分散しているからです。

太陽光発電や風力発電で太陽エネルギーをとらえていっても、それは地球上のあらゆる場所に分散した小電力にしかなりません。都市で使うまとまった電力を得るためには、遠隔地の小規模電力を大量に都市まで集めてこなければなりません。電気は保存ができません。需要と供給を常時一致させなければ、周波数が変動してトラブルが起きます。遠距離送電すると、送電ロスが発生します。天候や風力に作用される遠隔地の小電力を集めてきても、都市の電力需給のコントロールはできません。

そこで、重要な役割を果たすのが、グリーン水素です。電気は保存できなくても、電気を水素に変えれば、保存や運搬が容易になります。

地球上のあらゆる場所で自然エネルギーを使って作った電気によってまず水を電気分解します。そうして出てくる水素を、都市部へ運んで、電気に変えて使うのです。自動車も、燃料電池車が標準になれば、水素ステーションで水素を詰めるだけで動かすことができます。

水素は、化石燃料を燃やすことでも生産できますが、化石燃料から作った水素を使うのでは、持続可能な地球環境を作ることはできません。あくまでも、自然エネルギーから得られる水素をグリーン水素と呼んでいます。サハラ砂漠にずらりと太陽電池を並べて大量の水素を作る方法や、アルゼンチンで年中強風が吹く地域に大量の風車を並べて発電し、水素を作る方法が検討されています。こうして作られたグリーン水素を日本に運んで使うことで、化石燃料の使用を減らすことができます。

(3)新日鐵住金の環境企業としての顔

製鉄所では、鉄を作るプロセスで副生産物として、大量の水素が発生します。これまで、この副生水素は有効に活用されていませんでした。新日鐵住金(5401) は、この水素を使って、水素エネルギーを活用する社会実験をやっています。新日鐵住金(5401) が保有する水素エネルギー関連の技術特許は、日本企業の中で群を抜いています。

新日鐵住金(5401) の製鉄所は、北九州市が実施しているスマートコミュニティ(電力の有効活用を北九州市全体で実現するための実証実験)で重要な役割を果たしています。製鉄所は、水素だけでなく余熱で大量の発電ができます。製鉄所の水素や余剰電力を使った、効率的エネルギー利用社会を作るモデルケースとなっています。

日本が将来、グリーン水素を使ったエネルギー循環社会を目指して動き出す時、新日鐵住金(5401) が持つ技術と実績が大いに役立つことになるでしょう。