24日は、JFEホールディングス(5411)の決算が発表されました。前期実績は予想通り好調でしたが、今期(2015年3月期)業績予想は発表されませんでした。JFEや新日鉄住金(5401)など大手鉄鋼株は、例年、期初には業績見通しを発表していません。早ければ第1四半期の実績を発表する7~8月、遅くとも中間決算を発表する10~11月ころに、今期見通しを発表する見込みです。

今期見通しの発表はなかったものの、24日に開催されたJFEの決算説明会での会社側説明を聞くと、今期も増益基調が続きそうです。中国で鉄鋼の過剰生産が続き需給が緩んでいることを嫌気して、日本の鉄鋼株も割安に据え置かれていますが、今期の業績実態がよいことがわかれば、いずれ見直されて買われる局面が来ると予想します。

(1)アナリストのコンセンサス予想ではJFEは今期31.2%の経常増益

JFEホールディングスの業績推移

(単位:億円)

 

(注)市場予想は、IFISコンセンサス予想

今来期、市場予想通りの増益が続くならば、JFEの予想PERは今期8.5倍、来期6.8倍に低下します(24日の株価1,917円で計算)。日本株の平均PERが15倍程度にあることを考えると、JFE株は非常に割安な好業績株として再評価の余地があります。

(2)市場予想は妥当と考える理由

私は、JFEホールディングスの今来期業績の市場予想は妥当と考えます。以下の4つの理由によります。

  • 国内で鉄鋼需要の拡大が続くと予想されること
    国土強靭化・東京再開発が進み、国内の鉄鋼需要を押し上げます。自動車生産も懸念されたほど落ち込まない見込みです。消費税引き上げの影響で4月以降、国内の自動車販売・国内生産が落ちることが予想されていましたが、足元の落ち込みは懸念されたほどは大きくないようです。また、円安で国内造船業の受注獲得が再開しており、厚板需要も回復が期待されます。
  • 国内で利ザヤ(メタル・プレッド)の改善が見込めること
    円安(韓国ウォン高)が進んだメリットで国内の鉄鋼製品の値上げが通りやすくなっています。これまで、国内の鉄鋼市況を引き下げる要因となってきた韓国からの安値品も値上げに動いており、原料(鉄鉱石・石炭)価格が下がる中でも、製品値上げを通す余地があります。
  • 輸出競争力が改善していること
    円安が進んだお蔭で、輸出競争力が改善しました。日本の大手鉄鋼業の輸出品は、自動車用鋼板など高級品主体で差別化ができています。中国で慢性的に過剰生産が続く建設資材とは一線を画しています。円安によって価格面での競争力も徐々に回復しつつあります。中国・アジアの景気停滞が続いているため、輸出数量の大幅な拡大は見込めなくなっていますが、先行き、アジア景気が回復すれば、輸出数量も回復が見込めます。
  • 輸出品の利ザヤ(メタルスプレッド)悪化にも歯止めがかかりつつあること
    中国鉄鋼産業の過剰生産は続いていますが、中国の鉄鋼市況は下限(限界メーカーが生産を継続できなくなる価格)に近づいており、中国でも鉄鋼市況は下げ止まりつつあります。

(参考)業績改善が続くと期待される鉄鋼業の参考銘柄

コード 銘柄名 24日株価 市場予想に基づく今期予想PER
5401 新日鉄住金 269円 8.7倍
5406 神戸鋼 134円 9.4倍
5411 JFEホールディングス 1,917円 8.5倍
5413 日新製鋼 1,079円 7.6倍
5423 東京製鉄 503円 8.1倍

(参考)日本の大手鉄鋼業が、期初に業績予想を公表しない理由

期初に大手鉄鋼株が業績予想を公表しないのは、4月から適用される製品の販売価格および原料の購入価格が決まっていないからです。トヨタなど大手自動車メーカー向けの販売価格は今まさに交渉中です。鉄鉱石・原料炭などの購入価格も交渉中です。ひどい時には、決着までに3~6か月かかります。価格が正式に決定するまでは、仮価格で会計処理しておいて、後で価格が決まってから差額を清算します。これが鉄鋼産業の「価格後決め方式」といわれるものです。