26日の東京市場で、アークランドサカモト(証券コード9842)株が140円高の1,822円と急伸しました。25日に発表した2014年2月期決算が好感されました。売上高は前年比2.2%増の992億円、営業利益は6.5%増の87億円と、売上・利益とも過去最高を更新しました。

続く2015年2月期も、会社計画によると売上高は2.8%増、営業利益は5.6%増と最高益を更新します。アークランドサカモトは、新潟県地盤のホームセンターで、消費税が引き上げられる4月以降、売上が落ちることが心配されていますが、来期予想を増収増益で出してきたことから買い安心感が広がりました。

小売業は2月決算が多いが、アークランドサカモトのように消費税増税の不安で株価が下がっているところで、新年度増益の予想を出すと買われる可能性が高く、3~4月は2月期決算小売株の決算発表が注目です。

(1)消費増税で売上が急増・急落する小売業

今年は4月1日に消費税引き上げ(5%→8%)がありますので、増税前後で小売業の売上高が、急増・急減します(表A)。

(表A)2014年の小売業の売上動向(筆者のイメージ)

1-3月 増税前の駆け込み買いがふくらみ、小売業の売上高は大きく伸びる。特に、耐久消費財・高額品の売上が好調。
4-6月 駆け込み買いの反動で、小売業の売上高は大きく落ち込む。特に、耐久消費財・高額品の売上高が落ちる。
7-12月 増税の影響が低下し、小売業の売上は復調。

投資家は通常、決算発表では済んだ期の実績よりも、新しい年度の業績予想に注目します。

2月決算だと、消費税増税前の駆け込み買いが集中する3月が、新年度に入るので、新年度増益の予想を出しやすくなります。ところが、3月決算企業では、3月までの実績が過去のものとなり、売上が落ちると予想される4月からが新年度になるので、新年度の増益を出しにくくなります。

今年は、こうした特殊要因があって、これから本格化する2月決算小売株の決算発表に注目が集まります。

(2)2月決算が多い小売業

以下の表Bでわかる通り、小売業には2月決算が多くなっています。

(表B)小売業時価総額の上位20社の決算期

決算期 証券コード 銘柄名
2月決算 2651 ローソン
2670 エービーシー・マート
3086 J.フロント リテイリング
3382 セブン&アイHLDG
7453 良品計画
7649 スギHLDG
8028 ファミリーマート
8227 しまむら
8233 高島屋
8267 イオン
9843 ニトリHLDG
3月決算 3092 スタートトゥデイ
3099 三越伊勢丹HLDG
8252 丸井グループ
9831 ヤマダ電機
9989 サンドラッグ
5月決算 3391 ツルハHLDG
6月決算 7532 ドンキホーテHLDG
8月決算 9983 ファーストリテイリング
12月決算 2702 日本マクドナルドHLDG

(3)例年3月後半~4月前半は小売株が注目されやすい

毎年、この時期には小売株が注目される傾向があります。これには2つの理由があります。

  • 小売業には2月決算銘柄が多い。
    この時期は2月決算小売業の決算発表が続きます。日本の上場企業はほとんどが3月決算で、まだ決算発表は始まっていません。決算発表前で3月決算企業に積極的な売買を仕掛けにくい中、先に決算発表が終わる小売株に注目が集まりやすくなります。
  • 小売業は新年度予想を増収増益で出す傾向が強い
    日本企業は新年度の業績予想を低め低めに出す傾向があります。後から、業績予想を下方修正しないでいいように、できれば上方修正できるように、わざと低めに出すようです。ところが、小売業は増収増益で予想を作る傾向が強いのです。3月期決算企業の新年度予想がわからない中、いち早く増収増益で予想を出してくる小売株には注目が集まります。

(4)今年は、特に注目度が高い

今年の2月決算小売株の、新年度予想には例年以上に注目が集まっています。消費税増税の影響で3月の売上は大きく、4~6月の売上は小さくなる可能性が高いからです。こうした特殊要因を踏まえて、どのような新年度予想を出してくるか注目されます。

すべての小売業で、駆け込み需要と反動が大きいわけではありません。食品スーパーやコンビニエンスストアは、相対的に駆け込み需要が小さいと考えられます。家電量販店や百貨店では、駆け込み需要が大きくなる可能性があります。

駆け込み需要が大きくなる業態では、4月から予想される売上落ち込みに備え、さまざまな対策を講じています。4月のみ使えるクーポンを配ったり、新商品を増やしたり、いろいろな方法があります。ただし、「消費税還元バーゲン」と銘打った安売りは政府からお咎めが来るのでできません。お咎めをうけないように、知恵をしぼって4月の売上落ち込みを防ごうとしています。さて、4月から実際にどれだけ売上が落ちるか注目です。