先週の日経平均は、悪材料に対しやや過剰反応とも取れる下げを演じた後だけに、今週は自律反発が期待できます。ただし、上値は重いままになると思います。

(1)NYダウは、一連の悪材料に対して落ち着いた動き

3月に入ってから、世界の株式市場を揺さぶる悪材料が続いています。大きなものは以下の3つです。

  • ウクライナ情勢緊迫
    3月2日にロシアがクリミア半島に軍事介入してから、欧米とロシアの対立が深まりました。
  • 中国「理財商品」への不安が世界に広がる
    中国で残高が急増している「理財商品」が不良債権化しているとの不安が高まる中、3月13日李克強首相から「理財商品のデフォルトを容認せざるを得なくなる」との発言がありました。
  • イエレン・ショック
    3月19日のFOMC(アメリカの金融政策を決める会合)で、予想通り、金融緩和の縮小が決定されました。その後の記者会見で、米国FRBのイエレン議長が「金融緩和の縮小が終了する秋から半年後(来年春ごろ)に金融引き締めに転じる可能性がある」と発言したことが、世界の金融市場にショックを与えました。

一連の悪材料に対して、NYダウは、比較的、落ち着いた動きをしています(グラフA)。

(グラフA)NYダウ日足(2014年1月~3月21日)

(2)日本株の、下落率が一番大きい

日本は、3つの悪材料から直接の影響を受けるわけではないのに、3つの悪材料による下落率は、とても大きくなりました。

  • ウクライナ情勢の緊迫化で、一番影響が大きいのは欧州です。
    ドイツは天然ガスの約4割をロシアからの輸入に依存しており、ロシアへの経済制裁に参加すると自国経済がダメージを受けかねない状況です。スウェーデン・フィンランド・バルト3国など、天然ガスを100%ロシアからの輸入に依存している国もあります。ところが、ドイツなど欧州株は、クリミア情勢緊迫化後も、アメリカ株と同様に落ち着いた動きです。
  • 理財商品の不良資産化で、直接影響を受けるのは中国です。
    上海総合指数は軟調に推移していますが、日本株ほど大きく下落しているわけではありません。
  • FRBが金融引き締めに転じた場合、直接影響を受けるのは米国です。
    ところが、既に見た通り、NYダウは比較的落ち着いた動きになっています。

年初来の、米国株(NYダウ)と、中国株(上海総合株価指数)と、日本株(日経平均)の動きを比較すると以下の通りです(グラフB)。

(グラフB)日米中の株価変動比較

(注)昨年12月30日を100とした指数によって表示

(3)外国人投資家のポジション調整は終わったか?

日本株が一番大きく売られた理由は、明らかです。外国人投資家が、世界情勢の変化に対応して日本株を大量に売ったからです。3月10日から14日にかけて外国人の売り越し額が約1兆円に達したことが判明しました(出所:東京証券取引所)。17~20日の週も外国人は日本株を大量に売り越している模様です。

世界情勢の変化に応じて機動的に資産配分を変更する海外のヘッジファンドやグローバル・アセット・アロケーション・ファンドでは、株式リスクの調整に日本株を使っている節があります。日本は、製造業中心の国で、世界景気の影響を強く受けるからです。これらの海外ファンドは、トレーディング・ベースで以下の2つの取引を行っていると推定されます。

  • 世界的にリスク要因が増える
    →株式市場では、リスクに弱い日本株を売る
    →為替市場では、リスクに強い日本円を買う
  • 世界的にリスク要因が減る
    →株式市場では、日本株を買う
    →為替市場では、日本円を売る

現時点で、外国人投資家による、リスク・オフの日本株売りが完全に終わったか確信を持つことはできません。ただし、NYダウが落ち着き、日本円がやや円安に戻ったことを考えると、今週は、外国人投資家の日本株売りの勢いは、低下すると予想されます。

(4)日本株は割安、「ここは買い場」の判断継続

日経平均は下値支持線14,180円を大きくは下回らないと予想しています(グラフC)。

(グラフC)日経平均週足(3月20日まで)