3月10日の日経平均は153円安の15,120円。その中で、建設業の株価指数は+0.48%上昇しました。再び、建設セクターを見直す動きが出ています。アベノミクスが掲げる国土強靭化政策が、建設・土木業の利益けん引役であることは間違いありませんが、それだけではありません。東日本大震災をきっかけに、全国で老朽化した建物を建て替える動きが出ています。

(1)建設業は「利益なき繁忙」を脱することができるか?

建設株はこれまで、「期待で上げて決算で下げる」を繰り返してきました。2011年からの流れを振り返ると、以下の通りです。

  • 2011年3月:東日本大震災が起こり、復興需要の思惑で株価上昇
    ⇒ 復興への取り組みは遅く、その後、株価下落
  • 2011年12月:ガレキ処理など、復興需要が一部動き出したことをきっかけに株価上昇
    ⇒ 復興の進展は遅く、その後、再び株価下落
  • 2012年12月:安倍政権発足で、国土強靭化政策への期待で株価上昇
    ⇒ 東北復興だけでなく、全国的に老朽インフラの建て替え需要が出始める。ただし、建設業では仕事はたくさんあるが人手不足で工事進展は遅く、建設業の利益は期待ほど上がらない状況が続く。
  • 2013年9月:2020年の東京オリンピック開催が決定。東京再開発が加速する思惑で建設株の上昇が加速
    ⇒ 公共投資だけでなく、民間でも耐震補強や老朽建築物の建て替えが増加。建設業では、仕事はいくらでもあるが人出不足と資材費高騰の影響で、利益は期待ほど上がらない状況が継続。

足元、ようやく着工単価が上昇し、建築粗利が改善する期待が出ています。2014年3月期はまだ利益率改善の途上になりますが、2015年3月期には成果が表れて、増益率が高くなる可能性もあります。

(2)東京オリンピックで、東京再開発が加速

東京オリンピックの波及効果はかなり大きくなりそうです。オリンピック需要を、競技場や選手村施設などの建設だけととらえると、実態を見誤ります。オリンピックはたかだか20日程度のイベントです。直接必要になる建設需要はたいしたことがありません。しかも、実際の建築工事は2015年以降に出るわけで、まだ先の話です。

大きいのは、オリンピック招致をきっかけに、東京のインフラ再構築を一気に進める動きが出ていることです。高速道路や地下鉄の拡張・耐震補強、老朽化した建築物の建て替え、通信網の再整備や電線の地中化など、これまで懸案になって手がつけられていなかったことが、オリンピック誘致をきっかけに一斉に動き出す気配があります。オリンピックで訪れる外国人観光客の「おもてなし」を口実に、東京を新しい都市に作り替えてしまおうとしているようです。私は、オリンピック誘致にこだわった東京都の狙いはそこにあるのだと思います。

(3)建設・不動産・セメント株を見直し

相場全体は、しばらく上下とも大きくは動きにくい展開となりそうです。4月から消費増税の影響で、消費が落ち込むことが予想されることが、相場の重しとなります。そのような中、個別に材料のある銘柄を物色する動きは継続しそうです。当面は、公共投資と民需の両輪が動きはじめた国土強靭化のテーマに乗る建設・不動産・セメント株を見直す動きが続くと予想します。

参考銘柄
1801 大成建設
1802 大林組
1824 前田建設工業
1881 NIPPO
1926 ライト工業
5233 太平洋セメント