はじめに

今回のアンケート実施期間は、6月29日~7月1日でした。

5月は「セル・イン・メイどこ吹く風」で上昇してきましたが、6月末の日経平均は前月末(20,563円)比で約1.6%安となり、月足ベースでは6カ月ぶりに下落に転じました。

その6月の相場展開を振り返ってみますと、月初は日経平均12連騰後だったこともあって、もみ合いながらのスタートでしたが、その後は、為替に関する黒田日銀総裁発言やギリシャ問題などが相場の重石となり、日経平均が2万円を割れる場面もありました。

月末にかけては、ギリシャ問題の動向が下旬の値動きに影響を与え、楽観ムードが強まった際には2000年4月のITバブル時の高値を更新する水準まで上昇したものの、月末にかけては警戒ムードに転じ、一気に値を下げました。結果的に「前月高値を更新」する相場のリズムは維持しましたが、月間を通じては軟調な場面が目立ちました。

今回のアンケート結果ですが、実施期間中の日経平均が軟調だったことで、日経平均の見通しDIが大きく悪化しました。また、為替の見通しについては、外部要因の不透明感が強まり、各通貨が揃って円高の見通しが強まりました。特に、ギリシャ情勢を反映してか、ユーロ/円に対しての円高見通しが際立っています。

次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

1.日経平均の見通し「堅調な見通しも買い場を探る動きが中心」

  • Q1: 6月29日と1カ月後の日経平均の見通し DI=2.65
    (5月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI=31.28)
  • Q2: 6月29日と3カ月後の日経平均の見通し DI=20.92
    (5月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI=23.65)

今回の日経平均の見通しは、1カ月先のDIが2.65、3カ月先のDIが20.92となりました。前回調査がそれぞれ31.28、23.65でしたので両者ともに悪化する結果ですが、とりわけ1カ月先の悪化が顕著です。

1カ月先の回答比率の内訳を見てみますと、強気が26.88%(前回41.48%)、弱気が24.23%(同10.20%)、中立が48.88%(同48.32%)でしたので、強気派の減少分がほぼ弱気派に移った格好です。一方の3カ月先DIについては、悪化は小幅に留まっているため、今回の調査結果からは、「日経平均は短期的には調整含みだが、中長期的には上昇基調が続く」という見通しの個人投資家が多かった印象です。

短期的な見通しに暗雲を立ち込めさせたのはギリシャと中国です。今回のアンケート期間の初日(6月29日)の日経平均は前日比で596円安と大幅下落となりましたが、そのきっかけになったのは、前週まで楽観的だったギリシャ支援協議の行方が一転し、EUが提示した緊縮財政策に対する国民投票が行われることになって、不透明感が強まったことです。特に前週の6月24日の日経平均はITバブル時の高値(2000年4月)を更新するなど、強い動きを見せていた分、下落幅が大きくなったものと思われます。

また、中国株市場が軟調になっていたことも不安視されたようです。上海総合指数は、6月12日に高値(5,178ポイント)をつけて以降、6月末には3,800ポイント台まで下落し、わずか10営業日あまりで3割以上も急落しました。アンケート開始直前の週末には、中国人民銀行(中銀)が利下げの実施を発表するなど、中国当局がその後も次々と株価対策を打ってきましたが、なかなか下げ止まりませんでした。

アンケート開始から一週間経った7月6日(月)は、こうした二つの懸念材料に動きがありました。ギリシャでは7月5日に行われた国民投票で、EUからの緊縮財政策に対してNoという意思が示され、中国ではあからさまな株価対策がようやく効を奏し、上海総合指数が大きく反発してスタートしました。

ギリシャの国民投票に対しては、Noという結果になったことで、7月20日のギリシャ国債の償還に向けて支援協議や、ギリシャのユーロ離脱という「バッドシナリオ」が現実味を帯び、まだまだ情勢の変化に予断が許されないことや、中国株についても、その前提に中国の景気減速が懸念されているため、目先の株価対策が効いたとしても、中長期の株価安定には結びつかない可能性があります。アンケートでは短期の調整を意識する結果となりましたが、懸念の払拭には思ったよりも時間がかかるのかもしれません。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之

2.為替相場の見通し

基準日 ドル/円 ユーロ/円 豪ドル/円
6月29日 DI=▲ 2.96 DI=▲ 44.70 DI=▲ 10.53
5月25日 DI=39.60 DI=1.76 DI=10.94

6月末のドル/円終値は1ドル=122.421円
6月は初旬堅調な米雇用統計の数値を受けて、2002年12月以来となる125.85円レベルのドル高となりましたが、オバマ大統領のドル高牽制発言等から円安推移一転、1.7円の円高となりました。現在はギリシャ情勢も懸念点です。

5/25実施のDIはドル/円▲2.96(前回は39.60)、ユーロ/円▲44.70(前回1.76)、豪ドル/円は▲10.53(前回10.94)という結果で、6月中旬からの円高の動きに、円高継続をみる投資家が増加したようです。

ドル/円

ドル/円DIは▲2.96、前月比マイナス42.56ポイント、円高、変わらず、円安派が3分割した状況となりました。

冒頭にも記述したとおり、堅調な米雇用統計を受け1ドル=125.848円のドル高値をつけました。 その後、6/8から6/10の3日連続陰線となり、3円超の円高進行となりました。

その後も円高方向へのトレンドは収まらず、6/30には6月の最安値121.938をつけ、そのまま終値ベース最安値の122.421円で6月の取引を終了しました。

6月の円高の主要因は、2点。1. 要人発言と 2. リスクの台頭。

6/8にオバマ大統領は、ドル高による米国の輸出価格が上昇し価格競争力が低迷していることから「ドル高は問題」と強いドルの進行に対して牽制発言しました。また、ほぼ同時期の6/10に黒田日銀総裁が円の実質実効為替レートに触れ、今後の円安進行に余地がない主旨の発言をしました。これにより、ドルは上値が高い展開となりました。

6月中旬以降、ドルは上値が重い展開が続きましたが、6/27にギリシャのチプラス首相が、ドイツ、フランスといったEU各国が求める財政再建案を受け入れるかどうかを7/5に国民投票を実施すると表明しました。また、それまでの間、債権者側に金融支援の期限延長を要請するとともに、ギリシャは、銀行休業と預金引き出し規制を含む「資本規制」を実施することを決定しました。これを受け、6/29のマーケットオープンでユーロは暴落大きくGAPを開けました。また、7/5に実施された、ギリシャ国民投票では、財政再建案を拒否する結果となりました。チプラス首相は、ユーロ各国との交渉に対し強気の姿勢を見せていますが、依然デフォルトリスクおよびギリシャのユーロ離脱リスクがあることから、リスク回避が市場のセンチメントとなっています。

一目均衡表でみると、7/6の日足が122円上空にあった雲に足を突っ込んでいます。終値ベースで122円を割り込むようであれば、120円までの下落も考えられそうです。
ギリシャのリスクを考えると、円高派の増加は否定できません。

注目ポイント:

  • 7/8米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
  • 7/10イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長、発言
  • 7/15日銀金融政策決定会合、終了後決定内容発表 、その後黒田総裁会見
  • 7/16欧州中央銀行(ECB)政策金利 、その後ドラギ総裁会見
  • 7/29米連邦公開市場委員会(FOMC)、終了後政策金利発表
  • 7/304-6月期四半期実質国内総生産(GDP、速報値)(前期比年率)

※ 経済指標は、是非当社経済カレンダーで確認してください。
星★付きが重要度大です

ユーロ/円

ユーロ/円DIは▲44.76、前月比マイナス46.46ポイント。円高派が63.21%と前月比プラス36%となりました。

円高の予想および円高の進行の理由は、ドル/円の項で記載したとおりでギリシャのデフォルトリスクです。ユーロそのものの在り方をしめすものとなり、ドイツもフランスもギリシャの尻拭いはしたくないものの、ユーロを安定的に存続させるためにはなんらかの救済策が必要となりそうです。

前回のコメントで、「終値ベースで140円を抜けてくると、力強く上昇する気配です。」としましたが、見誤りました。ギリシャのいわゆる「開き直りに」、大きく円高が進行しました。
テクニカルで見ると、ドル/円同様に一目均衡表の雲の上限を支持線としています。135円をどう攻略するかが今後のポイントでありますが、ギリシャ問題がくすぶっている限り、134円割れも視野におく「円高派」に分がありそうです。

豪ドル/円

豪ドル/円DIは▲10.53で前月比マイナス21.47ポイントとなりました。
変わらず派が49.93%と半分を占めていますが、円高派が前月比プラス14%の30.3%と増加しました。

ドル/円、ユーロ/円同様に、DIが下降しましたが、主要因はギリシャデフォルトリスク回避からの豪ドル売りです。また、隣国ニュージーランドにおいては、景気悪化やデフレリスクから政策金利を現在の3.25%からさらに利下げを予想されており、ニュージーランドドル売りに連動した豪ドル売りもあるようです。

90-95円が7月のレンジ予想としますが、90円割れには十分注意が必要です。

楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭

3.今後注目する投資先

  今回 前回 前回比
アメリカ 54.71% 50.45% 4.26%
EU諸国 12.55% 13.11% △ 0.55%
ブラジル 10.04% 11.56% △ 1.52%
ロシア 5.54% 6.03% △ 0.48%
インド 30.51% 33.42% △ 2.91%
中国 9.48% 12.30% △ 2.82%
中東・北アフリカ 5.02% 5.87% △ 0.85%
東南アジア 34.27% 37.31% △ 3.04%
中南米 5.09% 5.56% △ 0.47%
東欧 3.21% 3.68% △ 0.47%

4.今後注目する投資商品

  今回 前回 前回比
国内株式 78.07% 74.71% 3.35%
外国株式 25.84% 27.51% △ 1.67%
投資信託 42.78% 43.40% △ 0.62%
ETF 19.18% 19.54% △ 0.36%
FX(外国為替証拠金取引) 13.49% 13.76% △ 0.26%
国内債券 5.82% 6.12% △ 0.30%
海外債券 7.11% 8.78% △ 1.67%
14.78% 14.78% 0.01%
原油 5.20% 7.91% △ 2.72%
商品 1.88% 1.64% 0.24%
REIT 11.23% 12.74% △ 1.51%
CFD 1.26% 1.30% △ 0.04%