※本記事は2015年2月20日に公開したものです。

年金運用の特徴

 企業年金や公的年金など年金の積立金の運用は、運用業界にとって投資信託と並ぶ大きなビジネスだ。ビジネスとして、年金運用と投資信託を比較すると、年金運用は、顧客(年金基金)とやり取りが必要、運用手数料が安い、運用がやや窮屈、といった傾向性がある。

 投資信託も他人さまのお金の運用だが、投資家から直接お金を預かっている感覚なのに対して、年金運用では、他人(年金加入者)を代表する別の運用者(年金基金)から、さらに運用を受託する二重構造になっている。投資信託の投資家は、個別のファンドを直接理解し共感を持ってお金を投じてくれた人だが、年金の加入者にはさまざまな人がいて、個々の運用会社を理解している人ばかりではないと想定しなければならない。

 投資信託でも、顧客に対する説明責任はあるが、年金運用の場合、運用会社は年金基金の説明責任を満たすに足る形で運用サービスを提供しなければならないという特質がある。

 一方、年金基金は、一部の資産をインハウス運用(自家運用)することがあるが、多くの場合、運用会社に資産を委託する形で運用を行う。運用の成果は、運用会社のパフォーマンスに左右されるわけだが、パフォーマンスの大半(大規模基金では8〜9割といわれる)は、アセットアロケーションなど、年金基金側の意思決定で決まることが広く知られている。

 今回は、年金運用にあって、基金はどのように行動しなければならないかを取り上げる。

 個人投資家は、自分で個別の株式に投資する場合には運用会社に近い立場に立つが、投資信託などで運用する場合の立場が年金基金に近い。また、年金は公的年金、企業年金、さらに海外の年金基金も含めて、資本市場の大きなプレーヤーなので、年金基金のあるべき運用の姿を知っておくことは、個人投資家にとっても参考になるだろう。