「市場の効率性」は関係あるか?

運用業界にとって不都合だが、強力な事実がある。(事実1)アクティブ運用の平均はインデックス運用に劣る、(事実2)優れたアクティブ運用を「事前に」見分けることはできない、の2つだ。

これは、米国等の外国でも、あるいは日本の投資信託などでも変わらない。2つの事実を論理的に組み合わせると、「アクティブ・ファンドに投資することは経済合理的ではない」という反論できない結論が出る。これは、手数料がより高いアクティブ運用を売りたい運用業界にとって不都合だし、対面営業の証券会社のセールスマンのような手数料の高い投資信託を売りたい人々にとっても具合が悪い。

では、なぜアクティブ運用は、インデックス運用に勝てないのか。

よくある説明は、市場が効率的で、株価は情報を短期間に織り込んで概ね正しく形成されており、アクティブ運用にはチャンスがないのだ、とする金融論の教科書で「市場の効率性」と呼ばれる概念を持ち出すものだ。

確かに、情報が瞬時に反映して株価が常に正しく形成されているような世界では、アクティブ運用にチャンスがないことは分かる。

しかし、内外の株式市場では頻繁に大規模なバブルが発生するし、現実に、個々の銘柄のリターンが大きく異なる事から見ても、市場全体のレベルでも、個々の銘柄の株価のレベルでも、「市場が効率的なので株価形成は概ね正しい」とする世界観に違和感を覚える人が多いだろう。

「私どもは、株式市場が常に効率的だとは考えていません。アクティブ運用には、十分チャンスがあります」とアクティブ運用者やファイナンシャル・アドバイザーなどにいわれると、頷いてしまいたくなる。だが、これは、「市場が効率的」という極端な状態を対立仮説に祭り上げて、反感を上手く引き出した、アクティブ運用側の作戦なのだ。

筆者の思うに、たぶん市場は「効率的」ではない。しかし、市場が効率的であるか否かは、インデックス運用とアクティブ運用の優劣に殆ど関係ない。

残念なことに、市場が非効率的であるとしても、アクティブ運用側がダメな理由が少なくとも2つあるのだ。

11人のファンドマネジャー・モデル

状況を分かりやすく説明するために、投資家は、11人のファンドマネジャーだけで、彼らが運用パフォーマンスの競争をしているという状況を考えてみよう。この中の、1人が(ミスター・アベレージと名付けよう)、アクティブに運用する残り10人(アクティブ10人衆と名付ける)のポートフォリオを知ることが出来て、彼らの「平均」(以下、正確には金額加重平均)のポートフォリオで運用することに決めたらどうなるだろうか。

架空世界「11人のファンドマネジャーだけの市場」

ミスター・アベレージの身に起こるのは、以下のような状況だ。

  • 単年のパフォーマンスでは、ほぼ毎回「無難」な結果が出る。順位の期待値は11人中6番前後だ。相対的にひどく悪くはなりにくいので、スポンサーからクビにされるリスクはごく小さい。
  • 残りの10人はお互いに持ち株を売買するが、ミスター・アベレージは売買の必要がない。長期的には売買に掛かる手数料が無い分だけ、ミスター・アベレージのパフォーマンスが有利になる。長期的には、11人中6位よりもかなり上位に来る公算が大きい。
  • ミスター・アベレージのポートフォリオは、傾向として他の10人よりも投資銘柄とウェイトが分散化されたものになるので、「シャープ・レシオ」(金利を超過するリターンをリターンの標準偏差で割った比率)パフォーマンス指標による評価で有利になる。
  • 加えて、ミスター・アベレージの運用手数料が、他の10人のアクティブ・マネージャー達よりも安いとしたらどうだろうか。ミスター・アベレージは顧客が得るリターンで見たパフォーマンス評価上ますます有利な立場に立つ。

そして、ミスター・アベレージのポートフォリオは、全上場銘柄で構成し時価総額ウェイトで作った株価指数に連動するインデックス・ファンドと同じだ。