• 産油国の要人の発言はまだ短期的な材料
  • 米中の原油需要の増加見込みが、供給過剰感を解消させるカギ

 

産油国の要人の発言はまだ短期的な材料

 

今年2月の半ばごろから騒がれた増産凍結について、4月17日(日)の産油国の会合にむけて産油国の要人達からさまざまな声が聞かれた。

結果は増産凍結への合意を見るものではなかったが、会合までの過程で要人達の増産凍結へ取り組みへの発言が原油価格の短期的な変動要因になった場面があったことは、現在の原油価格が足元の需給だけではなく“将来の原油需給が引き締まっていくことへの期待”で動いていることを示していると言えよう。

また、増産凍結をめぐる産油国間の方針は、今後の6月2日のOPEC総会あるいはまた別の会合まで結論を出すことが先送りとなったことから、今後も要人の発言による原油価格の短期的な変動がみられるものと考えられる。

産油国の動向はまだ一定の方向性が示されていないため、発言に左右される場面があるものの、将来的に仮に世界の供給過剰を解消させるのに資する方向に産油国がまとまって動いていくことが決まれば、今度は産油国の動向は中長期的な原油価格の変動要因としてとらえていくこととなるだろう。

原油価格の反発には、2014年後半からの急落とそれ以降の価格低迷の主因と見られる中長期的な供給過剰を、(短期的ではなく)中長期的に解消に向かわせる材料が必要であると言えるが、現在、その中長期的に解消に向かわせる材料と目されているのが、米中の原油需要の拡大期待である。

米中の原油需要の増加見込みが、供給過剰感を解消させるカギ

米エネルギー情報局(EIA)が公表しているデータは、世界の原油需給は、2016年5月ごろから本格的に供給過剰が解消する方向に向かい始めると見込んでいる。

また、同データでは2016年5月ごろから供給過剰が解消する方向に向かい始め、2017年夏ごろに供給過剰が解消する(供給不足に転じる)としている。

図:世界の原油需給(供給-需要)(単位:百万バレル/日)

出所:米エネルギー情報局のデータを元に筆者作成

原油価格低迷の主因と見られる供給過剰が本格化するということは、それは原油価格が反発することを意味することとなるが、その主な要因は、主要原油消費国の原油需要の増加見込みであると考えられる。

図:米国(左)、中国(右)(単位:百万バレル/日)

出所:米エネルギー情報局のデータを元に筆者作成

同じく米エネルギー省のデータによれば、米国・中国の原油需要は2017年夏ごろにかけて増加すると見込まれている。

原油価格の低迷による米国内のガソリン価格の低位安定を背景に、米国では排気量の大きい自動車の売れ行きが好調であること、中国において一時は景気減速がささやかれたものの、IMF(国債通貨基金)が直近で成長率見通しを引き上げた等、合計で世界のおよそ3割を占める両国の原油需要おいては好材料が出始めているようである。

供給過剰の解消に向けた兆しが見え始めているが、今後、この長期の変動要因の変化の兆しが、兆しや見込みではなく、現実のものとなってくれば、原油価格は現在の低位安定から一段上の価格帯を目指す展開になっていくと考えられよう。