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原油、ついに12年前の水準へ今後は“材料の変化”に留意せよ
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

原油、ついに12年前の水準へ今後は“材料の変化”に留意せよ

2016/1/8
ニューヨーク原油先物価格(期近)は、ついに12年前の水準まで下落した。リーマンショックが起きた2008年に急落した際、同年12月につけた32.40ドルをつけた。それが未曾有の金融危機となったリーマンショック後の最安値となっていた。
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1月10日(日)に行われた「新春講演会」内の特設ブースセミナーで、
「2016年の原油相場を見通すためのアイディア集」をお話しさせていただきました。
資料はこちらからご覧いただけます。

  • 原油、ついに12年前の水準へ 今後は“材料の変化”に留意せよ
  • 原油価格の急落によって、生産国から消費国へ大規模な“富の移転”が行われた。
  • 輸入国、輸出国、それぞれの今後の動きが2016年の原油相場を占うカギ。
  • 原油相場を取り巻く “投機の買い”は長期の、“投機の売り”は短期の変動要因
    参考図:想定される次の3つのサポートライン

原油、ついに12年前の水準へ 今後は“材料の変化”に留意せよ

図1:ニューヨーク原油、ブレント原油、TOCOMドバイ原油先物月足チャート

出所:各種データソースより筆者作成

ニューヨーク原油先物価格(期近)は、ついに12年前の水準まで下落した。

リーマンショックが起きた2008年に急落した際、同年12月につけた32.40ドルをつけた。それが未曾有の金融危機となったリーマンショック後の最安値となっていた。

その歴史的な安値を、昨日、割り込んだのである。背景にはいくつかの要因があげられよう。

  • 中国株式市場の混乱からのリスク回避の動きの高まり・再燃
  • 中東における懸念が実際の原油供給途絶あるいは減少に至っていない、懸念の高まりの中での安堵感
  • 弱い経済指標が示す中国を中心とした新興国の景気の先行きの不透明感
  • 米国が踏み切った同国の利上げにより強含みつつあったドルの動向
  • 投機筋の買いポジションの減少傾向と売りポジションの積み上がりの継続
  • 制裁解除後のイランからの原油供給再開見通し
  • 米国の40年ぶりの原油輸出再開見通し
  • 米国のシェールオイル生産地域の一部で生産効率の向上により供給量が増加している点
  • フル生産を続けるサウジアラビアが抱える財政面の不安が映す次の一手の手詰まり感
  • 価格下落時に2度減産を見送ったOPECへのスウィングプロデューサーとしての立ち位置への疑問と、現在OPECが抱える足並みがそろわない問題への手立てのなさ。

当然、弱材料だけでなく、米国の景気拡大見通し、積み上がった投機筋の売りポジションの取り崩しの可能性、歴史的安値レベルでの推移による割安感の醸成、などの反発要因となる材料も見え隠れするものの、中長期的な弱材料に今年に入って出現・再燃した弱材料が拍車をかけ、原油価格は下落したものと思われる。

先に挙げたいくつかの下落要因は、今年に入って発生・再燃したもの(①から③)と、昨年から継続しているもの(④以降)、に分けられよう。

2016年は大きな変動を伴ってスタートする格好となったが、現在認識しているこれらの弱材料がどのように変化するかが、本年の原油相場を予想する上で重要なカギになってくるものと思われる。

どのように変化するか?とは、現在弱材料と見られている材料が、さらにマーケットを下落させるより強い弱材料になるのか、逆に現在の弱材料が価格を反発に向かわせる強材料に変わるかということである。

一つの例として、現在の中東情勢についてだが、情勢が緊迫しており、以前であれば中東での有事は原油供給への懸念となりこの懸念が価格を上昇させたとされたことがあったが、現在は中東の緊迫化を横目に価格はむしろ下落している。

現在のマーケットは、中東情勢の“懸念”では価格の反発要因になりえていないことから考えるに、この懸念が“実際の供給障害に発展すること”で価格を反発させる要因になり得るものと考えることもできよう。

また、材料の変化というよりは、市場参加者のとらえ方ということになるが、⑦の米国の原油輸出再開という材料は、市場に出回る原油が増加し、そのジャブジャブ感および他の原油との価格競争が価格下落の要因となると目されている一方、原油輸出再開の一因とも考えられる歴史的に積み上がった米国の原油在庫について、米国の原油輸出再開が“在庫の取り崩し”と市場参加者がとらえれば、米国の原油輸出再開は強材料となることも考えられよう。

⑤の投機筋の売りポジションの積み上がりについては、積み上がりの過程は弱材料となり得ることもあろうが、一方で投機の売りの性質上、買いとは異なり売りポジションについては増加も解消も比較的短期間で行われる傾向があることから、高水準に積み上がった“売りポジションが解消(買戻し)に向かえば”短期的な強材料にもなり得るだろう。

材料の変化という点に時間軸という見方を加えれば、②の中東情勢について、仮に情勢が激化し供給障害に陥った場合、その障害の規模(減少する供給量の多さ)とその障害がおよぶ想定される期間も影響も価格に与える影響は大きくなるだろうし、⑦の米国の原油輸出再開が高水準に積み上がった在庫を減少させ、この在庫減少が強材料視される可能性については、同国の在庫減少のスピードが急激であれば短期的なインパクトのある強材料となることもあるだろう。

在庫減少のスピードが緩やかで長期的なものになるのであれば、価格に与える影響としては、緩やかで長期的な強材料ということになるだろう。

このような材料の変化・見方の変化(時間面を含め)はあくまでも材料がどのようにマーケットに影響を与えるかを考えるためのツールの一例であり、かつ、今後、当然のことながら新たに強弱ともに材料は発生していくものであるため、変化に着目するだけではマーケットを網羅するには十分でないかもしれない。

しかし、年々(というよりも日々)、材料は発生し、変化し、中には消滅していくものもあり、目まぐるしく状況は変化している。マーケットは24時間動き(特に日本の夜間が欧米のコアタイム)、インターネットを通じて情報が瞬時に世界を飛び交う状況に我々は置かれているという、どんどん世界が狭くなっている状況でやるべきことは、情報の収集もさることながら、その情報(材料)がどのように変化していくかということを、時間軸という要素を加味した上で、想像し、さまざまな仮説をたて、マーケットが動く方向の可能性を模索することなのだと思う。

筆者の話になり恐縮だが、原油相場の歴史的な安値を割れて2016年がスタートした折、気持ちを新たに、本年も情報配信にまい進していきたいと思う。

原油価格の急落によって、生産国から消費国へ大規模な“富の移転”が行われた。

図2:2015年原油輸出額上位15か国の原油輸出による収益(輸出額-輸入額)とNY原油価格の推移

出所:各種データソースより筆者作成・推計

“移転した巨額の富”により、損をした国は原油価格の下落によって、下落前に得られるはずだった収益を得られなかった原油輸出国であり、得をした国は下落前に負担しなくてはならなかった費用を負担しなくてよかった原油輸入国である。

図3:2015年1年間で原油輸出国から原油輸入国に移転した富の額(筆者推計)とその主な国

出所:各種データソースより筆者作成・推計

以下は原油輸入国と輸出国の貿易収支である(2015年は筆者推計)。

図4:原油輸入国の貿易収支(2015年は筆者推計) (単位:百万ドル)
2015年の各国の貿易収支を、2014年の貿易収支の額に、2015年の原油輸出による収益とNY原油価格より推計した額を加減して推計。

中国米国日本

出所:各種データソースより筆者作成・推計

図5:原油輸出国の貿易収支(2015年は筆者推計) (単位:百万ドル)
2015年の各国の貿易収支を、2014年の貿易収支の額に、2015年の原油輸出による収益とNY原油価格より推計した額を加減して推計。

ロシアイランサウジアラビア

出所:各種データソースより筆者作成・推計

輸入国では、2015年は最終的に、中国はさらに貿易収支を黒字化させ、米国が赤字の改善、日本も原油安が「第四矢」に例えられるとおり、貿易収支改善に寄与する結果となると考えられる。

輸出国では、サウジアラビアの貿易収支の悪化が深刻なものになると推計される。ロシア・ランはサウジアラビアよりも軽微になると推計。

輸入国、輸出国、それぞれの今後の動きが2016年の原油相場を占うカギ。

上述のとおり、貿易収支に大きな輸出国と輸入国には大きな差が生じているが、それぞれの主要国はどのような状況におかれているのだろうか。

輸入国の現状 低位安定が居心地がよい → 基本的に現状維持

中国 ・・・
成長目標を下げたこと、足元の景気不透明さが原油下落に一役買い、結果的に原油下落のメリットを享受。
米国 ・・・
原油輸入国であるが、2016年より原油輸出国に変貌予定。輸出量より輸入量の方が大きくなる見込みで、原油価格下落のメリットを享受することには変わりなし。
日本 ・・・
自ら原油価格を上下させる変動要因にはならないが、 引き続き、居心地がよい原油価格の低位安定を望むか。

輸出国の現状  低位を脱した方がよいものの、各国の思惑は異なる。

ロシア ・・・ 
中国向け原油輸出が堅調であるため、価格下落によるデメリットは他国ほど大きくない
イラン ・・・
核開発関連の制裁が解け、原油輸出を本格化させる模様。原油価格が低位でも生産量を増やす意向。
サウジアラビア ・・・
価格が低位で推移する中、OPECの盟主として“減産”をせず、フル生産を継続中。世界の原油生産シェア拡大を目論む。残された手札は少ないか。

ロシアにおける原油輸出の状況の変化に注目したい。ロシアにとって中国は重要な原油輸出先になってきており、中国はサウジアラビアからよりもロシアからの原油輸入を拡大させている。

2015年後半ごろより、ロシアの対中原油輸出額は、サウジアラビアの同輸出額を上回り、ロシアは中国の原油輸入における最大の相手国となった。(グラフは月間輸入量 単位:トン)

図6:中国が輸入するサウジアラビアとロシアの原油の量 (月間輸入量 単位:トン)

出所:各種データソースより筆者作成

また、サウジアラビアを取り巻く環境は日に日に厳しさを増していると見られるが、年初よりおきているイランとの問題も、次の一手の手詰まり感に原因があるのであれば、今後の同国の動向には十分注意が必要である。

【原油価格下落で財政悪化】
原油輸出は、同国の外貨獲得のための、ほぼ唯一といえる手段であり、原油価格の下落による同国の負のインパクトは大きい。

【増産も減産もできない可能性】
現在同国は生産余力上限付近で原油を生産している。また、他の産油国の増産傾向によりサウジアラビアのみで減産を行っても効果(価格上昇)が見込めない。

【同国の原油生産シェア低下】
米国のシェールオイル等、過去、高コスト生産を行ってきた生産者の生産効率が向上しつつある。事態は同国が原油価格の下落を容認してでも目論んだシェア拡大と逆の方向に向かっている。

【年々上昇する軍事費負担】
イラン、イエメンを含む周辺諸国との敵対関係を悪化させない抑止力、および紛争に発展した場合の準備として同国の軍事費負担は上昇、財政を圧迫する要因になっている。

【米中への原油輸出量減少】
サウジアラビアからの、中国および米国への原油輸出量が減少傾向にある。世界有数の原油消費国への原油輸出量の減少傾向は、同国の今後に影を落としはじめている。

「現在の状況」をまとめると以下のとおりとなろう

原油相場は上値を追いにくく、低位を維持する状況が続くか。

図7:現在の原油を取り巻く環境

出所:筆者作成

原油相場を取り巻く “投機の買い”は長期の、“投機の売り”は短期の変動要因

取引参加者は、“投機”と“実需”と大きく2つに大別され、それぞれが買い・売りのポジションを保有している。以下は前者の“投機”が保有する売り・買いのポジションについての記述である。

図8:原油相場を取り巻く “投機の買い”
投機の買いは、おおむね、長い期間のトレンドを作る役割を果たしてるようである。現在は、買い残高が減少傾向で、原油価格も下落傾向である。

出所:各種データソースより筆者作成

図9:原油相場を取り巻く “投機の売り”
投機の売りは、増減の波が激しい傾向がある。現在の“投機の売り”は過去最高レベルまで積み上がっている。基本的には“投機の買い”と異なり長い期間居座ることは少ない模様。

出所:各種データソースより筆者作成

図10:原油相場を取り巻く “投機”の買い比率
投機の買いの比率(買い÷売り)は、現在1(買いと売りが同じ枚数)付近で推移しており、現在は、投機の取引においては売りの割合が過去最高レベルに引き上がっていることを示している。

出所:各種データソースより筆者作成

参考図:想定される次の3つのサポートライン(2016年1月6日現在)

出所:各種データソースより筆者作成

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