• 資源国通貨とその国の資源との関わり

    足元、連動性が見られる資源国通貨と資源価格の例(南アフリカランド・白金など)

    パターン1:資源国通貨安が輸出増加を促して資源価格を押し下げる

    パターン2:資源安がもたらす自国経済不安による通貨安

    資源国通貨安による資源価格安の背景にある資源の「偏在」

  • 資源国通貨と当該国が輸出する資源の関わりが切り開く新しい売買アイディア

    関わりあう通貨と資源価格が上昇トレンドに入った場合、どちらを買うか選択できる

    関わり方に逸脱した動きが見られた場合、もとに戻ろうとする動きを利用する

  • 騰落率ランキング
  • 国内先物主要銘柄の値位置

資源国通貨とその国の資源との関わり

足元、連動性が見られる資源国通貨と資源価格の例(南アフリカランド・白金など)

図1:2015年4月10日現在、連動性が見られる資源国通貨と資源価格

出所:筆者作成

図2:資源国通貨と資源価格の値動き(2015年年初から2015年4月8日
左軸:資源価格  右軸:資源国通貨(1ドルあたり)
出所:ブルームバーグより筆者作成

上記のグラフのとおり、その資源国の通貨とその国の資源の値動きは、2015年年初より、連動する傾向が見られている。

この連動する値動きは、大きく分けて2つのパターンがあると筆者は考えている。

パターン1:資源国通貨安が輸出増加を促して資源価格を押し下げる

パターン1の資源国通貨安が輸出増加を促して資源価格を押し下げるについては、資源国通貨の下落は、その資源国にとって輸出に有利に働くため、自国で生産される資源の輸出が活性化を促すきっかけとなり、同国からの供給量増加が予想されて価格が下落する、という考え方である。

例:南アフリカランド下落→同国からの輸出に有利な状況→同国の主要生産品である白金の輸出拡大観測→白金価格下落

パターン2:資源安がもたらす自国経済不安による通貨安

パターン2の資源安がもたらす自国経済不安による通貨安については、世界経済の動向が変動することで資源需要が変動し価格が上下する、その資源価格の上下によって獲得できる外貨の額が変動してその国の経済に影響を与える、という考え方である。

例:原油価格下落→輸出の60%以上をエネルギーが占めるノルウェー経済に打撃→ノルウェーの通貨ノルウェークローネ下落

資源国通貨安による資源価格安の背景にある資源の「偏在」

先述のパターン1の特徴として、その資源が世界中では生産されておらず「偏在」している(世界生産において上位数カ国がその資源のほとんどを生産している)点が上げられる。

この「偏在」は、その資源の世界の供給はほとんどその国に依存し、かつ他国からの代替が利きづらい(供給に弾力性がない)ことを意味している。

このためその国の通貨が下落して輸出拡大観測が生じる(あるいは通貨が上昇して輸出が手控えられる状況になった場合)世界レベルでの供給へ影響を及ぼす可能性が出てくる。

「偏在」背景は、資源国通貨の動向が資源価格の変動要因となりやすくさせる一因となっていると考えられる。

図:3 銀・サトウキビ・アラビカコーヒー・ロブスタコーヒー・白金・すずの生産国

「パターン1:資源国通貨安が輸出増加を促して資源価格を押し下げる」の詳細

「銀とメキシコペソ」
「白金と南アフリカランド」
「砂糖・コーヒーとブラジルレアル」
「コーヒーとベトナムドン」
「すずとインドネシアルピア」
「銀とメキシコペソ」

銀は、歴史的に通貨・食器として用いられ、1900年代後半には写真のフィルム用に、近年では電子部品、消臭用の素材などで用いられることが多くなってきている。

世界生産第一位のメキシコの通貨動向は同国からの輸出動向に影響をもたらしている。

図4:銀とメキシコペソの値動き
銀(NY銀先物)(左軸)単位:1トロイオンス/セント
メキシコペソ(右軸)単位:1メキシコペソ/セント
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「白金と南アフリカランド」

白金は、電子部品・自動車のマフラーの排気ガスを浄化する触媒装置などの工業関連の他、宝飾品に使われている。

世界生産第一位の南アフリカの通貨動向は同国からの輸出動向に影響を与えていると見られる。

図5:白金と南アフリカランドの値動き
白金(NY白金先物)(左軸)単位:1トロイオンス/ドル
南アフリカランド(右軸)単位: 1南アフリカランド/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「砂糖・コーヒーとブラジルレアル」

ブラジルは、砂糖・コーヒーをはじめとした農産物などさまざまな資源を供給する資源国である。

近年では植物由来のエネルギー開発が進みサトウキビの利用が進んでいること、歴史的に上質なコーヒーの種類とされるアラビカコーヒーの世界一の生産国であることなどで知られる。

このブラジルでもまた、通貨(ブラジルレアル)安・同国の主要作物である砂糖・コーヒーの価格の下落という動きが見られている。

図6:砂糖とブラジルレアルの値動き
砂糖(NY砂糖先物)(左軸)単位:1ポンド/ドル
ブラジルレアル(右軸)単位:1ブラジルレアル/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

図7:コーヒーとブラジルレアルの値動き
アラビカコーヒー(NYコーヒー先物)(左軸)単位:1ポンド/セント
ブラジルレアル(右軸)単位:1ブラジルレアル/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「コーヒーとベトナムドン」

ベトナムで生産されているコーヒーは先述のブラジルのアラビカコーヒーと異なる、「ロブスタコーヒー」である。

平地の暖かい地域での生産が可能であるため、ベトナムのほか、インドネシアなどの東南アジアでの生産も行われている。

現在のところ、このロブスタコーヒーとベトナムドンもまた、通貨安による輸出増加、それにともなう供給増加予想による価格下落という関係となっている。

図8:ロブスタコーヒーとベトナムドンの値動き
ロブスタコーヒー(ICEヨーロッパ ロブスタコーヒー先物)(左軸)単位:1トン/ドル
ベトナムドン(右軸)単位:100,000ベトナムドン/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「すずとインドネシアルピア」

すず(錫)は、加工しやすさ、無味・無害・無毒などの性質から缶詰の缶、その他ハンダ、トタン板などに用いられる金属である。

このすずの主要生産国であるインドネシアルピアとすずにも上記のコーヒー・銀・白金などと同様の関係が見られるようである。

図9:すずとインドネシアルピアの値動き
すず(LMEすず)(左軸)単位:1トン/ドル
インドネシアルピア(右軸)単位:1,000インドネシアルピア/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「パターン2:資源安がもたらす自国経済不安による通貨安」の詳細

「銅とチリペソ」
「原油とノルウェークローネ」
「鉄鉱石とオーストラリアドル」
「銅とチリペソ」

銅は世界的に広くインフラ設備など利用されているため、世界の景気動向が銅価格を動かす要因になっている。

このため、世界の銅需給の変化による銅価格の動きの変化は、同国の外貨獲得へ大きく影響し同国の経済情勢・引いては通貨(チリペソ)動向に影響を与える要因となっている。

図10:銅とチリペソの値動き
銅(LME銅)(左軸)単位:1トン/ドル
チリペソ(右軸)単位:100チリペソ/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「原油とノルウェークローネ」

ノルウェーは、石油・天然ガスを生産し欧州諸国を中心に輸出する資源輸出国である。

同国のGDPの約21.5%、輸出の約66.7%を石油・天然ガスなどのエネルギーが占めるため、エネルギー価格の変動による同国経済への影響は大きい。

2014年半ばからの原油価格の下落が同国の通貨(ノルウェークローネ)の下落要因となったとされるのは、上記の理由からである。

図11:原油とノルウェークローネの値動き
原油(ブレント原油)(左軸)単位:1バレル/ドル
ノルウェークローネ(右軸)単位:1ノルウェークローネ/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「鉄鉱石とオーストラリアドル」

オーストラリアは、鉄鉱石生産世界No2である。

生産ランキングで1位は中国であるが、これは自国での消費が盛んであることが一因であると考えられる。

オーストラリアはその他の鉱物、農産物などをはじめとしたさまざまなものを輸出している資源国の代表格であり、その中でも鉄鉱石は世界中で建物や乗り物など幅広く使われていることもあり同国の重要な外貨獲得手段として位置づけられている。

このため、鉄鉱石価格の変動は同国の通貨へ影響していると考えられる。

図12:鉄鉱石とオーストラリアドルの値動き
鉄鉱石先物(大連取引所)(左軸)単位:1トン/元
オーストラリアドル(右軸)単位:1オーストラリアドル/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

「商品と通貨」の関わりに着目することは売買アイディアを拡大させることにつながる

「商品と通貨」の関わりについて、上述の傾向はあくまで現在のものであるが、今後のさまざまなマーケットを見渡す上で、「商品と通貨」という組み合わせを意識していくことで、実際の取引においてさまざまなメリットも生まれてくるものと考えている。

関わりあう通貨と資源価格が上昇トレンドに入った場合、どちらを買うか選択できる

例えば、白金と南アフリカランドの組み合わせにおいて、今のところは南アフリカランド安がきっかけとなり白金価格も連れ安になっていると書いたが、今後、南アフリカランドがドルの一時的な弱含みなどで上昇した場合、その局面で南アフリカランドが上昇してしまい、買い時と思っていた値段をこえてしまったとしよう。

もし仮に、そのとき白金が南アフリカランドと連動性があるならば、白金を買うというアイディアが生まれてくることだろう。

また、別の例では、銀とメキシコペソの組み合わせにおいて、現在の日本のFX投資においてはメキシコペソの取引を扱う業者は多くないが、こうした環境においても「商品と通貨」の組み合わせを意識をしていれば、何らかの要因でメキシコペソが上昇した場合、メキシコペソの取引は難しくても銀であれば取引ができるということも考えられる。

関わり方に逸脱した動きが見られた場合、もとに戻ろうとする動きを利用する

通貨と資源間のサヤ取引のアイディアである。

2つの価格に連動性が見られることを前提に、連動性が見られる状況から逸脱した動きになった場合、一方を売り・もう一方を買う、その後もとの(連動性が見られる)状況に戻った時にともに仕切る、という考え方である。

図13:白金と南アフリカランドの値動き
白金(NY白金先物)(左軸)単位:1トロイオンス/ドル
南アフリカランド(右軸)単位: 1南アフリカランド/ドル
期間:2015年年初から同4月8日まで

出所:ブルームバーグより筆者作成

どちらか一方を買う(あるいは売る)場合でも、通貨・商品を同時に取引をする場合でも、通貨の取引と商品の取引では取引ルールが異なる点に注意が必要であるが、通貨あるいは商品どちらか一方のマーケットに注目するのではなく、双方の値動きを追っていくことは将来の取引のアイディアの幅を広げるきっかけになるものと考えている。

騰落率ランキング

図14.2015年4月3日(金)始値と4月9日(木)終値の騰落率ランキング

出所:筆者作成

国内先物主要銘柄の値位置

チャートはすべて以下の条件で掲載

限月:期先(先限)
種類:日足
移動平均線:紫「9日」・緑「26日」
出所:商品先物取引ツール「Formula(フォーミュラ)」より筆者作成

図15. 東京金  (単位:円/グラム)

・一時4,650円超。その後下落するも短期移動平均線がサポート
・短期移動平均線は右上がりへ
・中期移動平均線はほぼ横ばいへ

図16. 東京白金  (単位:円/グラム)

・4,500円台を維持
・短期移動平均線はやや右上がりへ
・中期移動平均線は引き続き右下がり

図17. 東京ガソリン  (単位:円/キロリットル)

・58,000円割れ
・短期移動平均線はやや右上がりへ
・中期移動平均線は引き続き右下がり

図18. 東京とうもろこし  (単位:円/トン)

・一時25,000円割れ
・短期・中期移動平均線はともに右下がり継続

※レポート内で使用しているデータについて
特にことわりがない限り、国内商品先物銘柄は6番目の限月(期先)を、海外商品先物はその時点で取引量が最も多い限月(中心限月)のデータを採用。