リバウンドの気配を見せる白金(プラチナ)

  • 統計で見る白金(プラチナ)は、南アフリカ、欧州の自動車がキーワード
  • 白金と金の価格の「ねじれ」解消へ
  • 白金投資には先物・現物、などバリエーションがある
  • 騰落率ランキング
  • 国内先物主要銘柄の値位置

リバウンドの気配を見せる白金(プラチナ)

昨年後半から今年1月にかけて、原油、金をはじめとしたさまざまなコモディティ(商品)銘柄の価格が大きく下落した。

この一連の下落の後、2015年2月に入り徐々に価格が横ばいあるいは反発し、リバウンドへ向かう気配を見せつつある銘柄が出始めている。

図1:貴金属価格の推移(2013年7月から2015年2月)いずれも東京商品取引所の先物価格(期先)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

特に図1のとおり2月の後半からは貴金属銘柄が反発を見せつつある。

今回はこのリバウンドの気配を見せつつある「白金(プラチナと同義だが本レポートでは白金とする)」に注目してみたい。

まずは「統計」から見える白金について見ていき、そこから見える白金相場を見る上でのポイントを探ってみたいと思う。

統計で見る白金(プラチナ)は、南アフリカ、欧州の自動車がキーワード

白金(プラチナ)と聞くと何を思い浮かべるだろうか?

おそらくは、指輪・ネックレスなどの宝飾品、というイメージが強いのではないだろうか。

銀色で硬くてキラキラしていて、身に付ける人を飾る宝飾品としての白金は、我々の生活において身近な存在である。

その白金は一体どこで採掘されているのだろうか?

図2:白金の鉱山生産の内訳(2013年)

出所:トムソン・ロイターGFMS「プラチナ・パラジウムサーベイ2014」を元に筆者作成

南アフリカとロシアの鉱山生産は世界の約85%ものシェアを占めている。

生産国は偏っていることは持続的な安定供給を実現できないリスクをはらんでおり、これまでにも政情不安で白金供給に支障がでるとの見方から白金価格が上昇したケースも見られている。

以下は、その鉱山生産の量について、同じ貴金属の金(ゴールド)と比較している。

図3:白金・金・銀の鉱山生産量(2013年) 単位:トン

出所:トムソン・ロイターGFMS「プラチナ・パラジウムサーベイ2014」

「ゴールド・サーベイ2014アップデート2」を元に筆者作成

白金の鉱山からの生産量は金の約16分の1である。銀との比較では約135分の1である。

金や銀と同じ「宝飾品」という需要を持つ貴金属であるものの、鉱山生産量は金や銀を大きく下回ることから、その数量という意味では白金は貴金属の中でもより希少な金属ということもできるだろう。

では白金の需要面を見てみよう。

図4:世界の白金と金の需要の内訳 左:白金需要内訳(2013年) 右:金需要内訳(2014年上半期)

出所:トムソン・ロイターGFMS「プラチナ・パラジウムサーベイ2014」

「ゴールド・サーベイ2014アップデート2」を元に筆者作成

「工業の白金」「宝飾の金」といっても過言ではないだろう。

白金は、実際は先述のイメージのような宝飾品としてではなく、むしろ工業に欠かせない貴金属としての色合いが強い。

ではその「工業の白金」の内訳を見てみたい。

図5:白金の工業需要の内訳(2013年)

出所:トムソン・ロイターGFMS「プラチナ・パラジウムサーベイ2014」を元に筆者作成

実に70%以上が自動車触媒である。

※自動車触媒とは、ガソリン車のマフラーの中にある、排気ガスを酸化・還元させて浄化するための装置。

こんどはその「自動車触媒の国別需要」をみてみたい。

図6:自動車触媒の国別需要(2013年)

出所:トムソン・ロイターGFMS「プラチナ・パラジウムサーベイ2014」を元に筆者作成

ディーゼル規制などを背景に自動車触媒需要が大きい欧州の動向は白金価格をうらなう上で重要な要素になりえる。

ここまで統計で見てきた白金について、以下のようにまとめられよう。

  • 白金の供給(鉱山生産)

南アフリカとロシアで世界の85%・金の16分の1、銀の135分の1生産国が偏っており、かつそれらの国では地政学的リスクが起きやすいため、供給懸念が生じる可能性をはらんでいる。

他の貴金属に比べて生産量が少なく、このことは一度供給懸念が生じた場合のインパクトは他の貴金属よりも大きくなることも考えられる。

  • 白金の需要

宝飾品のイメージが強い一方、実は工業需要が高い。工業用需要70%は車の排ガスを浄化させるマフラーの一部分である自動車触媒に使われている。自動車触媒需要の最大の地域は欧州である

このことは自動車という景気の動向に左右されやすいものに使われているため、景気による需要の減速(加速)が進んだときに価格動向に大きな影響を与えることを意味している。

需要と供給の両面をまとめて言えば、白金は、偏在が生む供給懸念の可能性と、景気不景気に左右される需要先を持つがゆえに需要動向の不安定さの上に絶えずさらされているといえるのかもしれない。

白金と金の価格の「ねじれ」解消へ

  • 4,500円が一つの心理的節目(サポート)となっている模様

2013年以降の白金価格は、4,500円がその心理的節目のサポートラインとして意識されることがおよそ5回みられた。

図7:白金価格の推移(2013年7月から2015年2月)  単位:円 / グラム

出所:ブルームバーグのデータを元に筆者作成

ここ1年半の白金相場はおおむね4,500円がサポート、あるいは4,500円を素通りするような大幅に下落した時は4,300円、このいずれかが反発のきっかけとなるサポートラインとなっていたようである。

サポートラインは、ここまで下がれば(だいぶ下がったから)そろそろ買い場か?との見方から買う向きが増え、その結果価格が反発していったとする考え方である。

この2年、図7のとおり4,500円が5回、4,300円が2回サポートラインとなったが、2015年2月の反発では4,500円を素通りしてさらに下落するような値動きになっているとは考えにくく、これまでの経緯より今回は4,500円がサポートラインになるものと推測している。

  • 金との比較においては「ねじれ状態」

まずは、白金と金の価格の推移を見ていただきたい。

図8:白金と金の価格推移 (2013年8月から2015年2月)  単位:円 / グラム

出所:ブルームバーグのデータを元に筆者作成

おおむね同じような山と谷を描いているように見える。

しかし、統計の箇所で見ていただいたとおり「白金は工業、金は宝飾」であるため2つの貴金属には似て非なる要素がある。

2014年半ばからの下落時は景気後退で工業用需要の減少が意識され白金が(金よりも大きく)下落するなど、2つの価格は動く方向は同じでも強弱に差が生じながら動いている。

図9:白金と金の価格差の推移(月足) (白金価格 マイナス 金価格) 単位:円 / グラム

出所:ブルームバーグのデータを元に筆者作成

統計の箇所で見ていただいたとおり鉱山生産量において白金は金の約16分の1である。

このことが一因となり、以下の図9のとおり白金と金の価格で「白金>金」の関係がおおむね常態化している。

価格差0(ゼロ)円を示す赤いラインは、白金と金の価格が同じ値段であることを意味している。

2003年から2008年半ばまで、白金価格は金価格を大きく上回ったが、これは景気拡大局面における各国の自動車需要が増加し、それに伴う自動車触媒としての白金需要の増加したことがあげられる。

また、2011年半ばから2013年前半にかけて起きた白金と金の価格の逆転(ねじれ)(a)は、自動車触媒の最大の需要地域の欧州(図6参照)の景気後退が原因と考えられる。

当時PIIGSと呼ばれたポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペインを中心とした欧州の景気後退のため、最大の需要地域での自動車触媒需要が落ち込んで白金価格は弱含んだ。

一方、欧州の通貨不安の影響から通貨代替として金を買う動きが広がり白金価格が金価格よりも安い「ねじれ」(白金<金)が生じることとなった。

このねじれについては、欧州通貨不安の緩和、生産量の差の面より、2013年には「白金>金」のもとの状態に戻る(ねじれ解消)。

そして、2015年1月から現在(2月末時点)にかけてギリシャの信用不安の再燃により「ねじれ」が生じる状況となっている(b)。

現在の「ねじれ」の背景にもギリシャをはじめとした欧州の混迷が取りざたされているが、現在は前回の2011年のねじれの時と異なり、ギリシャ以外のPIIGSの国々の経常収支に占める名目GDPの割合は改善しており(IMF発表)、不安要素のインパクトは前回ほど大きくないのが実情である。

欧州の状況が前回よりも悪くないという意味では、今回のねじれ(白金<金)は前回ほど長引かず、かつねじれの度合い(値幅)は軽微なものになるとなり、いずれ通常の「白金>金」の状態に戻るだろう。

上述のとおり、白金単体の心理的な節目(サポート)で反発しつつあること、そして金との価格の「ねじれ解消」に向けた動きが予想されることから、現在の白金の値位置は今後の反発のきっかけとなるのではないだろうか。

白金投資には先物・現物、などバリエーションがある

本レポートでの白金価格については東京商品取引所の白金先物(期先限月)の価格を利用している。

この価格は「先物」の価格であるが、この東京白金先物とは別に以下に示す「現物」の白金でも同様の傾向が見られる。

いずれも個人投資家の皆様が楽天証券で取引を行うことができる白金である。

「円建て現物」の白金・・・白金現物

図10:白金・金現物の価格推移

出所:楽天証券提供の金・プラチナ取引のデータより筆者作成

図11:白金現物と金現物の価格と価格差の推移

出所:楽天証券提供の金・プラチナ取引のデータより筆者作成

取引に必要な資金の額の大小、取引の期限の有無など取引のルールが異なる点に留意したい。

図12:楽天証券で取引ができる白金の例(2015年2月28日現在)

出所:筆者作成

本レポートが今後の皆様の取引の参考になれば幸いである。

騰落率ランキング

図13.2015年2月20日(金)始値と2月26日(木)終値の騰落率ランキング

出所:ブルームバーグのデータを元に筆者作成

原油、大幅反落。

円安方向に振れたドル円の流れを受け、円建て銘柄がおおむね強含み。

国内先物主要銘柄の値位置

金、短期移動平均線回復

チャートはすべて以下の条件で掲載

限月:期先(先限)
種類:日足
移動平均線:紫「9日」・緑「26日」
出所:商品先物取引ツール「Formula(フォーミュラ)」より筆者作成

図14. 東京金  (単位:円/グラム)

・短期移動平均線回復
・短期・中期移動平均線は引き続き右下がり

図15. 東京白金  (単位:円/グラム)

・金同様、短期移動平均線回復
・短期・中期移動平均線は引き続き右下がり

図16. 東京ガソリン  (単位:円/キロリットル)

・60,000円近辺のレンジ相場
・短期・中期移動平均線はともに右上がり。

図17. 東京とうもろこし  (単位:円/トン)

・27,000円近辺のレンジ相場
・短期・中期移動平均線の傾きはともに横ばいへ

※レポート内で使用しているデータについて
特にことわりがない限り、国内商品先物銘柄は6番目の限月(期先)を、海外商品先物はその時点で取引量が最も多い限月(中心限月)のデータを採用。