はじめに
今回のアンケート実施期間は10月28日~10月30日でした。
10月の国内株市場を振り返ると、月末の日経平均は前月末比で127円安(0.88%安)となりました。結果的に小幅下落にとどまった格好ですが、月中の動き自体は浮き沈みが大きい展開で、月間の値幅は1,000円を超えています。
10月は、一部政府機関の閉鎖など、米財政問題をめぐる議会の協議が進展しない中、国内株市場も下落基調で始まり、日経平均は一時14,327円まで下げる場面がありました。その後は、米与野党の財政協議の合意観測や、欧州・中国の景況感の改善とともに切り返す展開に転じ、月の半ばは徐々に切り上げていく動きとなったものの、7月と9月の戻り高値である14,800円の水準を抜け切れなかったことや、円高などが重石となり、伸び悩みました。
今回のアンケートは、国内企業決算の見極めムードや、米金融政策の継続観測を背景に、前回調査からあまり大きな動きは見られませんでした。株式、為替の見通しともに、「変わらず」や「中立」という見方が多く、ひとまず様子見という姿勢が感じられる結果となりました。
次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之
1.日経平均の見通し
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Q1:10月28日と1カ月後の日経平均の見通し DI=15.64
(9月30日と1カ月後の日経平均の見通し DI=16.97) -
Q2:10月28日と3カ月後の日経平均の見通し DI=27.17
(9月30日と3カ月後の日経平均の見通し DI=30.73)
今回の日経平均見通しDIは、1カ月先のDIが15.64、3カ月先のDIが27.17となり、前回の結果(それぞれ16.97、30.73)から低下しました。
ただ、DIの内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見ると、1カ月先と3カ月先の両方において、強気派が減少する一方で、実は弱気派も減少しているため、DIの低下ほど弱気に傾いていないことが感じられます。懸念材料だった米財政問題がひとまず落ち着き、国内外の株式市場が持ち直したことが背景にあると思われますが、日本株は米金融緩和政策の継続観測によって円安が見込みにくく、最高値を更新した米NYダウやS&P500、独DAXなど、海外株市場に比べてイマイチ乗り切れていない面があります。
こうした状況を受けて、今回のDIの内訳で目立っていたのが中立派の増加です。1カ月先の中立派が55%を超えたほか、3カ月先についても40%を超えており、ともに今年でいちばん多くなっています。今回のアンケート実施期間(10月28日~30日)の日経平均の動きは、前日の急落のインパクトが残る中で戻りを試す展開で、急落の下げ幅自体は埋めたものの、上値を追う勢いは出ませんでした。本格化する国内企業決算を控えた見極めムードも中立派増加の要因になったと思われます。
やや長い期間をテクニカルで見てみても、日経平均の日足チャートは5月下旬の急落後、6月に底を打ったあたりから、下値を切り上げつつも、上値は7月、9月、10月と14,800円水準が抜けきれずに次第に株価が収斂していく、いわゆる「三角保ち合い」の格好となっています。週足チャートでも同様の形となっており、「三角保ち合いの上放れで日経平均は大きく上昇」という見方が多くあります。一般的に株価が収斂していく過程で市場にエネルギーが溜まり、トレンドの発生とともにそのエネルギーが解放されて相場に弾みがつくという考え方です。
ただ、ボリンジャーバンドで見てみると、バンドの幅があまり縮まっておらず、「スクイーズ(バンドの幅が狭くなる状態)」と呼ばれるほど、市場のエネルギーの蓄積を示すサインが見られません。そのため、現在のレンジ相場がしばらく続くシナリオも想定しておいた方が良いかもしれません。
また、11月にヘッジファンドの決算が多いことや、来年の証券税制の変更に向けた年内の利益確定売りなど、需給面でも重石となりそうな材料があるため、売買代金の増加や新たな買い要因が出てくることが相場上昇のカギを握ると思われます。
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
2.為替相場の見通し
基準日 | ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 |
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10月28日 | DI=19.03 | DI=22.94 | DI=22.94 |
9月30日 | DI=14.68 | DI=14.53 | DI=14.68 |
10/31の日銀金融政策決定会合で日銀はコアCPIを2014年+1.3%、2015年+1.9%と今年4月の見通しとほぼ同等の水準としました。結果、アベノミクスでの日銀の物価安定目標である2%の実現性を強調したことになりました。CPIの上昇が見えていますので、直近の追加金融緩和は考えがたいところですが、2014年4月からの消費増税による景気落ち込みをソフトランディングさせるため、来年の追加緩和がどうなるかが今後の日本経済に与える影響が大きそうです。
10月末実施の為替DIは、米ドル19.03(前回は14.68)、ユーロは22.94(同14.53)、豪ドルは13.53(同14.68)という結果で、米ドルは円高を見る向きが減少し、変わらずの回答が41.65%と前月から6.5%増加しました。
米ドル
米ドルは、日本の金融緩和による長期金利低下、対してアメリカの長期金利上昇していることもあり、足元は10月末の97円台から98.50円超えと円安で推移しています。ただし、9月高値の100.60円(9/11)、10月高値の98.99円(10/17)から見れば上昇基調の回復とはなっていません。
DIは、19.03(前回比+4.35)。9月末実施のDIと比較すると円高をみる投資家が5.4%減少し、変わらずとした投資家が6.5%増加しました。また円安方向に見る向きも1.1%減少していることから、方向感のない動きとみているようです。
11/06現在、98.50-70円で推移しています。この日(11/6)はTOYOTAの業績の上方修正に株高→円安の動きもあり、アベノミクスの戦略はいまだ継続のようです。
一目均衡表をみると、雲の上に顔をだしたばかり、確かに方向感のない様にみえます。さらに10月に頭を抑えられた99円のオプション攻防の売り注文は、11月も現存しているといわれ、この売り注文をどう攻略していくか、または後押しする経済指標がでるかどうかが、1ドル=100円にむかう大きなカギとなりそうです、
ユーロ
10月ユーロDIは22.94と前回より8.4ポイント上昇しました。
円高方向を予測する投資家が6.3%減少していますが、10月末の欧州利下げ観測により、直近では円高方向で推移しています。
ただし10月月足をみると陽線で引けていること、一目均衡表を日足でみると雲の下限で下げ止まっている(11/6 19:30現在)ことから、DIでみる方向感と一致しているようです。
ドラギECB総裁は、ユーロ圏経済は金融・再見聞きから緩やかに改善しているとコメントするものの、欧州委員会の秋季経済見通しでユーロ圏成長率(GDP)を+1.1%、インフレ率はECB目標を下回るとしおり、ユーロ安(円高)の可能性も否めません。11/7のECB理事会に注目です。
豪ドル
豪ドルDIは前回の14.68から13.53とほぼ横ばいでした。DIの内容は、円高、円安とも2%程度減少し、変わらずの回答が4.3%増加しました。
オーストラリア中央銀行(RBA)は、11/5の政策金利発表で金利据え置き(2.5%)するとともに豪ドル高をけん制しており、それを嫌気して直近の豪ドルは弱含んでいるようです。
ただし、11/6の豪貿易収支(9月)では予想5.0億豪ドルの赤字が2.8億豪ドルの赤字となり、8月の8.15億豪ドルの赤字も6.93億豪ドルと修正されており、豪ドル高で推移しています。ことらもユーロ同様、方向感ない動きとなりそうです。
楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭
3.今後注目する投資先
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 47.46% | 45.26% | ↑2.20% |
EU諸国 | 14.38% | 11.16% | ↑3.21% |
ブラジル | 19.34% | 21.41% | ↓△ 2.06% |
ロシア | 6.34% | 9.17% | ↓△ 2.83% |
インド | 20.51% | 17.74% | ↑2.77% |
中国 | 9.62% | 8.26% | ↑1.36% |
中東・北アフリカ | 7.93% | 8.26% | ↓△ 0.33% |
東南アジア | 41.44% | 39.30% | ↑2.14% |
中南米 | 7.61% | 8.41% | ↓△ 0.80% |
東欧 | 4.55% | 3.67% | ↑0.88% |
4.今後注目する投資商品
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 78.01% | 77.06% | ↑0.95% |
外国株式 | 23.68% | 23.24% | ↑0.44% |
投資信託 | 40.49% | 37.61% | ↑2.87% |
ETF | 20.40% | 16.67% | ↑3.74% |
FX(外国為替証拠金取引) | 14.06% | 13.61% | ↑0.45% |
国内債券 | 8.14% | 6.57% | ↑1.56% |
海外債券 | 10.15% | 11.93% | ↓△ 1.78% |
金 | 17.55% | 15.60% | ↑1.95% |
原油 | 2.85% | 2.91% | ↓△ 0.05% |
商品 | 1.80% | 1.99% | ↓△ 0.19% |
REIT | 17.23% | 16.67% | ↑0.56% |
CFD | 1.27% | 1.38% | ↓△ 0.11% |
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。