はじめに
今回のアンケート実施期間は3月25日~27日でした。
3月の株式市場も日銀新体制による金融緩和観測やリスクテイクの動きなどを背景に上昇基調が続きました。序盤は為替の円安進行に歩調を合わせる格好で、日経平均は8日続伸となり、リーマン・ショック直前の水準(12,214円)を回復。その後も、米国NYダウが連日で史上最高値を更新する動きに引っ張られて上値を伸ばし、21日の取引時間中には、約4年半ぶりに12,650円台をつけました。
結局、3月末の日経平均は前月末比で約838円高、月間ベースでも8カ月連続で上昇となりましたが、さすがに買い疲れや期待先行の手詰まり感からか、終盤にかけては売りに押される場面も目立ち始めています。また、キプロスの混乱をはじめ、難航するイタリアの新政権樹立交渉、冴えない経済指標など、欧州発の不安の芽も警戒材料となりました。
また、3月の為替市場ですが、ドル円については前半に円安進行、後半はやや円高に戻すという展開でした。とりわけ、注目されていた米雇用統計(非農業部門雇用者数)が予想を大幅に上回る結果となったことがきっかけとなり、96円台の後半をつけました。その後も米国から堅調な経済指標の発表が相次ぎ、ドル円相場を支援する材料となりましたが、欧州情勢の影響で一時93円台半ばまで円が買われる場面がありました。月末にかけては94円台を中心とするレンジでの推移となりました。
こうした状況を受けて、今回のアンケート結果は前回調査に比べて全体的にDIがやや低下したものの、あまり大きな変化は見られませんでした。堅調な相場基調が続く中、次の展開を冷静に見据えていると思われます。
次回も是非、本アンケートにご協力頂ければ幸いです。
楽天証券 経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田 雅之
1.日経平均の見通し
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Q1:3月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI=43.33
(2月25日と1カ月後の日経平均の見通し DI=49.18) -
Q2:3月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= 41.39
(2月25日と3カ月後の日経平均の見通し DI= 38.46)
日経平均の1カ月先の見通しDIおよび3カ月先の見通しDIは、それぞれプラスの43.33、41.39となりました。前回のDI(それぞれ49.18、38.46)と比べると、強気の見通しが1カ月先は低下する一方、3カ月先についてはやや上昇したことになります。
さらに、内訳となる回答比率(強気、中立、弱気)を見てみると、1カ月先は強気の割合が減少した分だけ中立が増加、弱気は横ばいでした。3カ月先は強気と中立が増加し、弱気が減少しています。弱気の回答比率が依然として低水準であり、「目先の上昇一服や調整はありそうだが、引き続き相場の先高感は変わらない」という見方が反映された結果だったと言えます。
今回のアンケート期間(3月25日~27日)の日経平均は12,500円を挟んだ小動きが続き、安定的に推移していました。ただ、その前週に約4年半ぶりの12,650円台を取引時間中につけており、その後も積極的な上値トライの動きが見られず、買い上がる材料不足が意識されるようになっています。
前回調査のコメントでも触れましたが、これまでの日経平均は、日銀新体制による金融緩和や、企業業績の上振れ、アベノミクス「3本目の矢」である成長戦略などの期待を先取りしていく国内要因と、金融緩和とリスクをとれるようになった外国人の買いという海外要因によって上昇してきました。特に、3月に入ってからの日経平均の節目(12,000円、12,250円、12,500円)突破は、いずれも米国株の上昇がきっかけとなっています。不動産や土地持ち企業など、金融緩和や政策関連株が買われる動きはありましたが、循環物色にとどまっており、確かに国内要因だけで株価を押し上げるのは厳しく、次の材料待ちの状況と言えます。
確かに、日銀新体制が発した大胆な金融緩和により、もう一段の株高と円安が進行しましたが、さらに上値を伸ばしていくためには、先取りしてきた期待感に現実がどこまでキャッチアップしていけるかもポイントになってきます。その見極めは、4月の半ば以降に控える決算発表シーズン次第となりそうです。また、アベノミクスに対しても、冷静な評価が行われる場面がそう遠くない未来にやってきます。これまでは「3本の矢」の「矢」そのものが評価の対象でしたが、これからは放たれた「矢」の強さや向かう先である「的」が焦点となります。
楽天証券 経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
2.為替相場の見通し
ドル/円 | ユーロ/円 | 豪ドル/円 | |
---|---|---|---|
3月25日 | DI=49.90 | DI=20.89 | DI=36.94 |
2月25日 | DI=54.12 | DI=31.59 | DI=38.19 |
米ドルは月足ローソク足チャートでみると、昨年10月以降3月末まで6カ月連続で陽線引けとなりました。
為替のDIは、米ドル49.90(前回は54.12)、ユーロは20.89(同31.59)、豪ドルは36.94(同38.19)という結果で、継続する上昇トレンドからの調整見通しがさらに多くなってきているようです。
米ドル
DIでみると、昨年末12月をピークに4か月連続で減少(65.95-62.11-54.12-49.90)しています。ただし、円高方向の回答は10.06%と1-3月をみても10%近辺で推移しており、投資家は円高方向で相場を見ているというよりは、円安に動くとみる投資家が減少し、中立とみているようです。
3月は12日に月中のドル高値1ドル=96.70円をつけ93.50円付近まで下落した後、94.22円で引けていますのでこうした回答になったのではないでしょうか。調整とみるならば、どこまで下落し、どれくらい上昇するかということがポイントとなりますが、年初来安値90.90円近辺が下値ライン、上値は心理的な節目となる100円ターゲットとなります。実際にインターバンク(銀行間)市場では、100円手前のストップロスのドル買い注文と、節目(100円)の大量のドル売り注文が見え始めているようであり、DIでみても60%の投資家は円安をみており1ドル=100円の「売り」「買い」の攻防戦はその後のトレンドを見ていくうえで重要となりそうです。直近のリスクは、北朝鮮ミサイル問題でしょうか。
ユーロ、豪ドル
さて、3月ユーロDIは20.89と1月の53.05から大きく下げています。これはユーロがキプロスの問題が浮上する中、円高方向での回答が20%を上まわってきているからで、リスクオフからの円高を見ているようです。
しかし3月においては月末に向けて、キプロスショックでユーロドルが下落し、ドル円が調整かねて若干円高方向に向かう方向感でありましたが、4月に入るとキプロス問題がどこ吹く風になっており、ドル、ユーロの上昇でユーロ円は月初の寄付き120.75円から130円(4/9)と10円近い円安方向への動きを見せています。キプロスをはじめとする欧州小国の財政問題がいつ台頭してくるのか、または忘却されるのか慎重に見ていく必要があります。
豪ドルのDIは、2月とほぼかわらずの状況で、円高方向をみている投資家は11%と少なく円安(48%)もしくは変わらず(41%)とみているようです。経済成長は鈍化傾向にあるようですが、中国経済の急速な減速は回避されていることや、資源輸出が持ち直しつつあることもあり、最近のドル円の急上昇に3月に突破できなかった1豪ドル=100円のラインを抜けさらに上昇しています。
いずれにせよ、ユーロ豪ドルは個別のリスクとドルの上昇をみていく必要がありそうです。
楽天証券 FX本部長 永倉 弘昭
3.今後注目する投資先
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
アメリカ | 44.68% | 43.68% | ↑1.00% |
EU諸国 | 7.74% | 7.14% | ↑0.59% |
ブラジル | 26.31% | 28.57% | ↓△ 2.27% |
ロシア | 6.58% | 13.46% | ↓△ 6.89% |
インド | 25.53% | 24.18% | ↑1.36% |
中国 | 6.96% | 7.69% | ↓△ 0.73% |
中東・北アフリカ | 6.96% | 5.77% | ↑1.19% |
東南アジア | 49.71% | 49.18% | ↑0.53% |
中南米 | 8.32% | 10.16% | ↓△ 1.85% |
東欧 | 3.29% | 3.85% | ↓△ 0.56% |
4.今後注目する投資商品
今回 | 前回 | 差 | |
---|---|---|---|
国内株式 | 81.82% | 77.20% | ↑4.62% |
外国株式 | 21.08% | 27.20% | ↓△ 6.11% |
投資信託 | 34.04% | 31.59% | ↑2.45% |
ETF | 16.63% | 14.01% | ↑2.62% |
FX(外国為替証拠金取引) | 13.93% | 18.96% | ↓△ 5.03% |
国内債券 | 7.16% | 6.59% | ↑0.56% |
海外債券 | 8.32% | 9.34% | ↓△ 1.02% |
金 | 16.05% | 16.21% | ↓△ 0.15% |
原油 | 3.48% | 4.40% | ↓△ 0.91% |
商品 | 1.74% | 4.12% | ↓△ 2.38% |
REIT | 20.12% | 17.86% | ↑2.26% |
CFD | 1.35% | 1.65% | ↓△ 0.29% |
「DI(Diffusion Index)」とは
景気判断に用いられる諸指標を選定し、現状認識がどちらの方向に向いているかを示す指数。『楽天DI』では、日銀短観と同じ計算方法を採用し、「(強気回答数-弱気回答数)÷全回答数×100」、「(円安回答数-円高回答数)÷全回答数×100」で算出いたします。
【各指標の見方は以下の通りです。】
日経平均 DIがプラス→強気、DIがマイナス→弱気
為替 DIがプラス→円安、DIがマイナス→円高
すべての回答が中立だった場合、DIは0となります。