「買われすぎ」「売られすぎ」を表す騰落レシオ

相場全体の過熱状態がどのくらいかを表す指標として「騰落レシオ」というものがあります。この騰落レシオが、12月9日に163.4%をつけ、データが残る1977年以降で最も高い水準となりました。
一般に、騰落レシオは東証1部上場銘柄の25日平均のものが使われます。当日を含めた過去25営業日の値上がり銘柄数合計を分子に、値下がり銘柄数合計を分母において計算します。

騰落レシオ(%)=過去25日間の値上がり銘柄数合計/過去25日間の値下がり銘柄数合計

騰落レシオが130%を超えると買われすぎ、70%を下回ると売られすぎといわれます。
例えば、25日間を平均して値上がり銘柄が850銘柄、値下がり銘柄が650銘柄となれば、騰落レシオが約130%になります。逆に、25日間平均の値上がり銘柄が620銘柄、値下がり銘柄が880銘柄であれば、騰落レシオが約70%になります。
今回の騰落レシオ163.4%は、25日間を平均すると値上がり銘柄930銘柄、値下がり銘柄570銘柄という状況であったということです。

騰落レシオ以外の相場の過熱状態を表す指標にも要注目

ところで、12月9日に騰落レシオが過去最高の水準に達したにもかかわらず、個別銘柄の株価をみる限りでは過熱感はそれほど感じられません。おそらくその理由は、騰落レシオ以外の指標が過熱状態まで達していないからであると考えられます。
例えば日経平均株価の25日移動平均線からの乖離率がプラス10%以上となると「買われすぎ」とされますが、今回騰落レシオが最高値をつけた12月9日の乖離率はプラス3.35%に過ぎませんでした。
また、ゼロ%に近づくと買われすぎと判断される信用評価損益率も、12月3日現在でマイナス10.88%であり、まだ過熱状態にはなっていません。
「騰落レシオ」に加え、「日経平均株価の25日移動平均線からの乖離率」、「信用評価損益率」もが過熱状態となれば、株価が短期的な高値をつける可能性がますます高まるといえます。

日経平均株価の高値は騰落レシオのピークより後につけやすい

今年の4月5日には騰落レシオが153.2%となり一旦のピークをつけましたが、同じ日に日経平均株価も11,408円17銭の高値をつけました。しかし騰落レシオのピークと日経平均株価の高値が同じ日となるケースは多くありません。通常は、騰落レシオがピークをつけたあとも、日経平均株価はしばらく堅調な動きを続けることがよくみられます。
このように、騰落レシオが「買われすぎ」の水準に達したからすぐに株価が下がるかといえばそうではありません。しかし、少なくとも短期的には「買われすぎ」なのは事実ですから、騰落レシオが「買われすぎ」の水準まで達してからの新規買いはできるだけ控え、仮に新規買いするにしても損切り価格を設定のうえ買うようにしましょう。特に、騰落レシオがピークアウトした後は、それまでのような全面高とはならず、株価が下落に転じる銘柄も増えてきますから注意してください。

保有する個別銘柄はすぐに売るべきなのか?

騰落レシオは市場全体の過熱感を示すものですから、騰落レシオがピークをつけた後下落していく過程で、すべての個別銘柄も同じように下落するわけではありません。銘柄によっては、騰落レシオがピークアウトした後も株価が上昇を続けるものもあります。
したがって、騰落レシオが過熱感を示す数値となっても、即座に保有している銘柄を売却する必要はありません。手持ちの個別銘柄を売却するかどうかはあくまでも個別銘柄の動き次第といえます。株価が上昇トレンド(移動平均線上向き+株価が移動平均線の上に位置する)にある限りは、無理に売る必要はないというのが筆者の考えです。

筆者が考える保有銘柄への対応法とは

筆者であれば、上昇トレンドが継続する限りは保有を続け、株価が25日移動平均線を下回った時点で一旦の売却を検討します。ただし、株価が短期間に2倍、3倍と上昇し、明らかに過熱感が感じられるときは上昇トレンド途中であっても持ち株の一部を利食いすることもあります。
投資期間を中期(6カ月~1年程度)で考えている方ならば、上記の25日移動平均線を13週移動平均線に置き換えてもよいと思います。
また、今回のように、株価が大局的な底値圏から立ち上がったばかりと考えられる場合は、株価が底割れするか、あらかじめ設定した損切り価格(買値から10%マイナスの水準など)になるまでは売らずに保有を続けるのも一策です。株価が移動平均線を下回ったらとりあえず半分を売却し、残り半分は底割れもしくは損切り価格に抵触するまで保有し続けるというのも一つの手です。

底値圏から株価が立ち上がるときに、騰落レシオは異常値を示しやすいといわれています。今回の過去最高水準の騰落レシオが、短期的な調整を挟みつつも中長期的には先々の株高を暗示しているものであってもらいたいですね。