3 稲畑産業(8098・東証プライム)

 化学品の専門商社で、住友化学が約10%を保有する大株主となっています。海外19カ国に約70拠点を展開し、とくに東南アジア地域で強固な事業基盤を構築しています。情報電子や合成樹脂が主力分野となり、ほかに化学品や建材、医農薬や農産物なども扱っています。

 2027年3月期までの新中期経営計画では、売上高9,500億円、営業利益270億円などの数値目標を掲げています。環境関連、自動車関連、半導体・電子部品関連に経営資源を重点投下していく方針です。2024年2月にはダイセルと合成樹脂の合弁会社を設立しています。

 2025年3月期第1四半期営業利益は68億円で前年同期比34.63%増となっています。情報電子事業がFPD(フラットパネルディスプレイ)関連商材やプリンター関連の販売回復で大幅増収となり、合成樹脂事業もOA向け需要の回復などで2ケタの売上成長となっています。円安効果も収益に寄与したもようです。

 2025年3月期通期では225億円で前期比6.2%増の見通しです。主に合成樹脂事業、生活産業事業での増益を見込んでいます。第1四半期では30%以上の好進捗(しんちょく)となっています。なお、年間配当金は前期比5円増の125円を計画しています。

 2025年3月期で5期連続営業増益となる見通しです。また、年間配当金は7期連続での増配計画となっています。2027年3月期までの中期経営計画期間中は、総還元性向の目安としておおむね50%程度を目指すとしており、配当金は前年度実績を下限とする累進配当制度をとっています。

 中期的には、太陽電池関連や二次電池関連など環境・エネルギー分野、自動車向け樹脂の売上成長を見込んでおり、前者では2024年3月期の261億円から2030年ごろには1,000億円、後者では1,314億円から2,000億円までの拡大を目指しています。

4 ヒューリック(3003・東証プライム)

 東京23区を中心としたオフィス、商業ビル、ホテル、老人ホームなどの「不動産賃貸」を中核事業としています。東証一部上場の不動産セクター内で、経常利益の水準はベスト5圏内にあります。

 銀座・有楽町エリアや渋谷・青山エリアなど、首都圏の駅近・好立地に多くの物件を保有しており(8割近くが最寄り駅から徒歩5分以内)、保有物件の空室率は1%以下になっていることが特徴です。都市型中規模コンパクト商業施設である「HULIC&New」シリーズの展開を積極的に行っています。完全子会社化を目指してレーサムのTOBを実施中です。

 2024年12月期営業利益は689億円で前年同期比3.4%増となっています。主力の不動産事業、ホテル・旅館事業とも順調に収益が拡大しています。ちなみに、賃貸等不動産の含み益は2023年12月期末で3,849億円となっています。2024年12月期通期営業利益は1,530億円で前期比4.6%増の見通しです。

 着実な案件取得が進められ、開発も順調に進行する中で、空室率も極めて低水準での推移が続いているようです。年間配当金は前期比2円増の52円を計画しています。

 新ヒューリックとして上場以降、増益・増配基調が続いており、2024年12月期は16期連続での増益・増配となるようです。長期固定の資金調達を行っていることで、金利上昇の影響も相対的に軽微であるとみられます。こども教育事業やアウトドア事業、海外事業など新規事業の創出も積極化させています。

 このため、リソー教育の連結子会社化、レーサムの完全子会社化など、足元ではM&A・資本業務提携などを積極活用している状況です。需要の高い都心型データセンターを都内3カ所で供給予定であることも、データセンター関連銘柄に対する市場の関心が高い中で注目されそうです。

5 テクノプロHD(6028・東証プライム)

 技術者派遣市場におけるトップ企業で、業界シェアは約7%と推定されています。IT技術者が約50%を占めていることなどが特徴となります。2024年6月末の技術者数は2万8,621名で国内最大、ソフト開発/保守、ITインフラ分野で稼働人員の半分を占めています。年間4,000人強の採用を行っています。

 国内取引企業数は2,500社超、輸送用機器や情報産業向けを筆頭に、幅広い顧客基盤を抱えています。中国、東南アジア、英国など海外展開も行っています。外国籍人材なども積極採用しています。

 2024年6月期営業利益は219億円で前期比0.4%増となっています。採用費増加や海外部門における販売管理費増加はありましたが、国内稼働人数増や派遣契約単価の上昇、受託業務拡大などで増益を確保しています。2025年6月期は270億円で同23.2%増の見通しです。

 高まる退職率によって技術者数の伸びは低くなるもようですが、賃上げに対応した十分な価格転嫁を推進して、売上単価は例年以上の改善を想定しているようです。年間配当金は、2024年6月期は前期比5円増の80円、2025年6月期は同10円増の90円を計画しています。

 2014年12月の上場以降、連続して増収営業増益が続く状況となっています。同様に年間配当金も、2015年6月期以降は増配が続いています。株主還元策としては、配当性向50%以上を目安として、累進配当も意識するとしています。また、2024年6月期の自己株式取得実施に続き、2025年6月期も第1四半期に自己株式の取得枠を設定しています。

 IT企業とそれ以外の企業に所属するIT人材の割合を見た場合、主要先進国の中で日本は、IT企業以外のIT人材比率が極めて低い状況になっています。IT系に強みを持つ同社にとっては、当面高水準の需要が継続する可能性は高いとみられます。