自民党総裁選で波乱も見られたが、日経平均は一時4万円大台を回復

 直近1カ月(9月20日~10月18日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで3.3%の上昇となりました。9月27日までの上昇では、いったん4万円大台前に跳ね返されましたが、その後の調整も25日移動平均線水準が下支える形となって反発、10月15日には一時4万0,257円まで上昇し、7月19日以来の4万円台回復となりました。

 期間終盤にかけては、目先の達成感も重なって、やや伸び悩んで終えています。なお、この期間(9月20日~10月18日)のダウ工業株30種平均は2.9%の上昇となっています。

 期間前半は、大幅利下げを決定したFOMC(米連邦公開市場委員会)後のドル高円安進行、米半導体株の好決算発表、中国の景気刺激策への期待感などで買いが先行しました。さらに、9月27日に行われた自民党総裁選で、財政拡張派の高市早苗氏が優勢とみられたことも、一段の上値追い材料とされました。

 しかし、27日引け後に実施された総裁選決選投票では石破茂氏が逆転勝利し、直後の日経平均株価(225種)は急反落する形となりました。石破氏は金融所得課税や法人税などへの課税強化に対して前向きな姿勢を示していたほか、金融政策もタカ派と捉えられていたことで、為替市場では一時急速な円高が進むこととなりました。

 ただ、総裁決定後、政策の「独自色」を薄れさせるような石破氏の発言が目立ち始め、それに伴って過度な警戒感は後退する状況となりました。米国の景気指標の改善による利下げペースの鈍化観測でドル高円安が進んだほか、中国の景気対策への期待も重なり、10月15日には4万円大台回復を果たしました。

 なお、期間終盤にかけては、オランダの半導体製造装置メーカー大手であるASMLが決算を発表、受注高の下振れや来年度ガイダンスの下方修正を発表し、半導体関連株を中心にネガティブサプライズが強まりました。

 この期間では、中東情勢の緊迫化による地政学的リスクの高まりを映して、日本製鋼所(5631)三菱重工業(7011)川崎重工業(7012)IHI(7013)など防衛関連株の上昇が目立ちました。半導体関連株は高安まちまちとやや上値の重さが意識されましたが、中ではアドバンテスト(6857)が独歩高する展開となっています。

 また、小売企業を中心とする6-8月期の決算発表シーズンとなり、パルグループホールディングス(2726)アダストリア(2685)ビックカメラ(3048)ファーストリテイリング(9983)などが決算評価の動きとなっています。日本ペイントホールディングス(4612)などは中国の景気刺激策に対する期待感が先行しました。

 半面、ASMLの決算ショックがストレートに響いたのはレーザーテック(6920)でした。ほか、半導体関連ではKOKUSAI ELECTRIC(6525)なども大きく下げています。ネクステージ(3186)は決算が弱材料視され、神戸物産(3038)は8月の月次動向が売り材料となりました。

当面の最大の注目ポイントは米国の大統領選、半導体関連株などの行方を左右

 ここ1カ月で最も注目されるイベントとしては米国の大統領選挙が挙げられるでしょう。直近での選挙の賭けサイトなどでは、トランプ氏の巻き返しが目立ち始めているもようです。トランプ氏が大統領に選出された場合、上院、下院も共和党が支配する、いわゆるトリプルレッドとなる可能性が高いと指摘されています。

 株式市場を取り巻く外部環境の変化を考えても、相対的にトランプ大統領誕生の方が大きくなるとみられます。仮に、トランプ氏が勝利した場合、直後は減税期待などによる米国株高、米長期金利上昇に伴うドル高円安が進む公算が大きく、日本株にとっても買いが優勢になっていく可能性が高いでしょう。

 ただし、長期金利上昇に伴う米国の利下げペース鈍化、対中関税の大幅な引き上げによる半導体関連企業への影響を考慮すれば、すぐに先行きの不透明感が勝ってくる公算も大きいと判断されます。米国の「自国主義」の強まりは地政学的リスクの高まりにもつながるほか、再生エネルギーの市場縮小なども、中期的な懸念要因となってきそうです。

 10月下旬から11月中旬にかけては、7-9月期の決算発表が本格化します。市場の注目度が高い半導体関連ですが、ASMLの決算を見る限り中国での需要減速継続が意識され、かつ、米大統領選後の対中半導体規制の強化を考えれば、強いガイダンスなどは期待しにくいとみられます。

 中国向けウエートの高い電子部品、FA機器なども同様でしょう。相対的に内需系企業のほうが、好決算に素直に反応しやすそうです。また、今回の決算では、8月以降の円高反転の影響も見極めたいところです。7-9月期の実績やガイダンスに与える影響が限定的にとどまれば、これは輸出関連企業への安心感につながるとみられます。

 なお、最近の決算発表では、自社株買いや増配がプラス材料となるケースが多く見られていますが、こうした還元強化の動きはさすがにピークアウトしてくるとみられ、過度な期待は高めにくいと考えます。

 今後の物色動向としては、トランプ大統領誕生を見据えた場合、防衛関連株、米インフラ投資関連株、原油安メリット銘柄などに注目すべきでしょう。また、EV対応があまり進んでいないような自動車部品株なども妙味になってくる可能性があります。

 国内では総選挙が通過すれば、あらためて石破総理の政策期待銘柄が台頭してくる余地がありそうです。「地方創生」が看板となりそうですが、この観点でいうと、地方銀行株などの活躍余地が広がる公算もあるでしょう。ちなみに、銀行株の行方を左右する日本銀行の金融政策ですが、サービス価格の値上げが多くなる10月のCPI(消費者物価指数)が重要とみられています。

 10月25日には東京都区部のCPIがまず発表される予定となっています。また、セブン&アイ・ホールディングス(3382)の買収の行方も注目されます。仮に買収が成功した場合、海外企業による日本企業のM&A(買収や合併)増加につながる可能性もあり、日本株にとってはプラス材料につながる公算があるでしょう。

連続増益・増配が続く銘柄はNISAの主要投資対象に

 2024年からは新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートし、年間投資額が大幅に拡充されました。それに伴って個人投資家の裾野が広がる形となり、日本証券業協会によると、証券会社10社ベースで、1〜3月の新規口座開設数は170万件となり、前年同期比3.2倍に膨らんだもようです。

 同様に、NISA買付額もそのタイミングで大きく拡大する状況となりました。株式市場の先高感が強まれば、2025年も年明けからの早い段階で、NISA投資が活発化するものと考えられます。NISAにおける主要投資対象である高配当利回り銘柄などは、年明けからの資金流入、それに伴う株高をそろそろ見込んでもいい局面と判断します。

 高配当利回り銘柄はNISA投資の主要な投資対象と考えられますが、とりわけ、増配が続いている銘柄には、より中長期での投資妙味が高いとみられます。今回は、本業の好調が続いており(営業増益基調継続)、かつ、連続して増配を実施している高配当利回り銘柄をスクリーニングしています。連続増益・増配期間はともに、今期予想を含めて5期間以上としています。

(表)連続増益・増配が続く高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り (%) 10月18日終値 (円) 時価総額 (億円) PER (%) 騰落率 (%)
6432 竹内製作所 4.18 4,780.0 2,342 7.60 11.55
7817 パラマウントベッドホールディングス 3.83 2,533.0 1,564 14.40 ▲8.59
8098 稲畑産業 3.75 3,330.0 1,921 10.82 6.05
3003 ヒューリック 3.63 1,432.5 11,000 11.13 ▲2.98
6028 テクノプロホールディングス 3.20 2,808.5 3,045 16.09 ▲24.4
注:騰落率は2023年末終値比

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが3.0%以上(10月18日現在)
  2. 時価総額が1,000億円以上
  3. 今期予想含めて5期以上連続で営業増益
  4. 今期予想含めて5期以上連続で増配

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 竹内製作所(6432・東証プライム)

 建設機械の専業メーカーです。主力製品は、ミニショベル、油圧ショベル、クローラーローダーとなります。360度・全旋廻ミニショベル、クローラーローダーは世界初開発製品となっており、後者は不整地や雨でぬかるんだ場所での作業安定性が高く、粘土質の土地が多い米国で需要のほとんどを占めている状況にあります。

 また、同社製品の代表的な用途としては、主に居住区域での小規模な工事に使われているようです。売上はほぼ海外向けで占められており、ミニショベルでのシェアは欧州で2位、北米で5位の位置づけとなっています。

 2025年2月期上半期(3-8月期)営業利益は248億円で前年同期比46.5%増となっています。北米向けの売上高が好調推移となったほか、為替相場での円安進行、値上げ効果なども寄与しました。2025年2月期通期では445億円で前期比26.1%増の見通し、従来予想の385億円から上方修正しています。海上運賃の減少および円安の影響を上振れの背景としています。

 下期の前提為替レートは、ドルが1ドル=138円、ポンドが1ポンド=179円、ユーロが1ユーロ=152円としています。為替前提は減少からみて保守的と捉えられるでしょう。なお、年間配当金は前期比42円増の200円を計画しています。

 2025年2月期で5期連続営業増益となる見通しです。また、年間配当金は9期連続での増配計画となっています。株主還元方針としては、配当性向30%を目安として安定した配当の継続に努めるとしているほか、株価水準や資本効率を勘案の上に自己株式の取得も適宜実施するとしています。

 為替の円高反転は今後の収益鈍化要因につながる可能性も残りますが、欧米では利下げステージに入っていることで、今後は住宅需要の回復が望めるとみられ、トップラインの成長確度は高まっていく見通しです。米大統領選次第では、インフラ投資拡大なども期待材料となってくる公算があります。

2 パラマウントベッドHD(7817・東証プライム)

 医療・介護用ベッドでシェア7割と推定されているトップ企業です。病院用ベッドの専業メーカーとしてスタートし、その後は高齢者施設や在宅介護分野にも事業領域を拡大しています。また、ベッドなどの点検・メンテナンス、福祉用具のレンタル卸など、事業の多角化にも取り組んでいます。

 海外展開では、東南アジアや中近東、中国などをはじめ、近年ではインドや中南米にも進出、納入実績国は110カ国以上にのぼっています。病院向け常駐サービスなどのリカーリングビジネスの拡大、睡眠改善商品拡充など健康事業の進化に注力しています。

 2025年3月期第1四半期営業利益は15.9億円で前年同期比51.1%減となっています。診療報酬の改定時期が従来に比べて2カ月後ろ倒しの6月となったことが影響し、設備投資に対する様子見の傾向が広がったため、ベッド・備品などの販売が低調に推移したもようです。中国におけるゼロコロナ政策明け特需の反動減も影響したようです。

 新製品発売に伴う販促費用などもコストアップ要因となりました。2025年3月期通期では、営業利益は前期比1.3%増の140億円となる見通しです。第1四半期は通期計画に対しておおむね計画通りの推移となったようです。配当方針の見直し実施に伴い、年間配当金は前期比32円増の97円を計画しています。

 2025年3月期で5期連続営業増益となる見通しです。また、年間配当金は5期連続での増配計画となっています。とりわけ、株主還元方針として、2025年3月期からDOE(純資産配当率)4.0%、配当性向50%を目安に変更しており、足元での増配ペースは拡大する形となってきています。

 これから高齢化社会の到来を迎える中、現段階で高水準の業界シェアを握っている点から、今後の展開において優位性が強いと考えられます。インドネシア、中国、インドなどを中心に海外需要も着実に拡大していく可能性が高いことから、中期的な安定成長期待は高いと考えられます。

3 稲畑産業(8098・東証プライム)

 化学品の専門商社で、住友化学が約10%を保有する大株主となっています。海外19カ国に約70拠点を展開し、とくに東南アジア地域で強固な事業基盤を構築しています。情報電子や合成樹脂が主力分野となり、ほかに化学品や建材、医農薬や農産物なども扱っています。

 2027年3月期までの新中期経営計画では、売上高9,500億円、営業利益270億円などの数値目標を掲げています。環境関連、自動車関連、半導体・電子部品関連に経営資源を重点投下していく方針です。2024年2月にはダイセルと合成樹脂の合弁会社を設立しています。

 2025年3月期第1四半期営業利益は68億円で前年同期比34.63%増となっています。情報電子事業がFPD(フラットパネルディスプレイ)関連商材やプリンター関連の販売回復で大幅増収となり、合成樹脂事業もOA向け需要の回復などで2ケタの売上成長となっています。円安効果も収益に寄与したもようです。

 2025年3月期通期では225億円で前期比6.2%増の見通しです。主に合成樹脂事業、生活産業事業での増益を見込んでいます。第1四半期では30%以上の好進捗(しんちょく)となっています。なお、年間配当金は前期比5円増の125円を計画しています。

 2025年3月期で5期連続営業増益となる見通しです。また、年間配当金は7期連続での増配計画となっています。2027年3月期までの中期経営計画期間中は、総還元性向の目安としておおむね50%程度を目指すとしており、配当金は前年度実績を下限とする累進配当制度をとっています。

 中期的には、太陽電池関連や二次電池関連など環境・エネルギー分野、自動車向け樹脂の売上成長を見込んでおり、前者では2024年3月期の261億円から2030年ごろには1,000億円、後者では1,314億円から2,000億円までの拡大を目指しています。

4 ヒューリック(3003・東証プライム)

 東京23区を中心としたオフィス、商業ビル、ホテル、老人ホームなどの「不動産賃貸」を中核事業としています。東証一部上場の不動産セクター内で、経常利益の水準はベスト5圏内にあります。

 銀座・有楽町エリアや渋谷・青山エリアなど、首都圏の駅近・好立地に多くの物件を保有しており(8割近くが最寄り駅から徒歩5分以内)、保有物件の空室率は1%以下になっていることが特徴です。都市型中規模コンパクト商業施設である「HULIC&New」シリーズの展開を積極的に行っています。完全子会社化を目指してレーサムのTOBを実施中です。

 2024年12月期営業利益は689億円で前年同期比3.4%増となっています。主力の不動産事業、ホテル・旅館事業とも順調に収益が拡大しています。ちなみに、賃貸等不動産の含み益は2023年12月期末で3,849億円となっています。2024年12月期通期営業利益は1,530億円で前期比4.6%増の見通しです。

 着実な案件取得が進められ、開発も順調に進行する中で、空室率も極めて低水準での推移が続いているようです。年間配当金は前期比2円増の52円を計画しています。

 新ヒューリックとして上場以降、増益・増配基調が続いており、2024年12月期は16期連続での増益・増配となるようです。長期固定の資金調達を行っていることで、金利上昇の影響も相対的に軽微であるとみられます。こども教育事業やアウトドア事業、海外事業など新規事業の創出も積極化させています。

 このため、リソー教育の連結子会社化、レーサムの完全子会社化など、足元ではM&A・資本業務提携などを積極活用している状況です。需要の高い都心型データセンターを都内3カ所で供給予定であることも、データセンター関連銘柄に対する市場の関心が高い中で注目されそうです。

5 テクノプロHD(6028・東証プライム)

 技術者派遣市場におけるトップ企業で、業界シェアは約7%と推定されています。IT技術者が約50%を占めていることなどが特徴となります。2024年6月末の技術者数は2万8,621名で国内最大、ソフト開発/保守、ITインフラ分野で稼働人員の半分を占めています。年間4,000人強の採用を行っています。

 国内取引企業数は2,500社超、輸送用機器や情報産業向けを筆頭に、幅広い顧客基盤を抱えています。中国、東南アジア、英国など海外展開も行っています。外国籍人材なども積極採用しています。

 2024年6月期営業利益は219億円で前期比0.4%増となっています。採用費増加や海外部門における販売管理費増加はありましたが、国内稼働人数増や派遣契約単価の上昇、受託業務拡大などで増益を確保しています。2025年6月期は270億円で同23.2%増の見通しです。

 高まる退職率によって技術者数の伸びは低くなるもようですが、賃上げに対応した十分な価格転嫁を推進して、売上単価は例年以上の改善を想定しているようです。年間配当金は、2024年6月期は前期比5円増の80円、2025年6月期は同10円増の90円を計画しています。

 2014年12月の上場以降、連続して増収営業増益が続く状況となっています。同様に年間配当金も、2015年6月期以降は増配が続いています。株主還元策としては、配当性向50%以上を目安として、累進配当も意識するとしています。また、2024年6月期の自己株式取得実施に続き、2025年6月期も第1四半期に自己株式の取得枠を設定しています。

 IT企業とそれ以外の企業に所属するIT人材の割合を見た場合、主要先進国の中で日本は、IT企業以外のIT人材比率が極めて低い状況になっています。IT系に強みを持つ同社にとっては、当面高水準の需要が継続する可能性は高いとみられます。