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著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「「トランプなら買い、ハリスなら売り」に異変?10月のビットコイン見通し」
9月のビットコインイベント
NEW! 9月17日 | ブータン政府、水力発電でマイニング、1.3万BTC保有 |
NEW! 9月18日 | トランプ氏、BTCでハンバーガー代支払い |
NEW! 9月23日 | ハリス氏、立候補後、初めて暗号資産に言及 |
*2024年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た10月見通し
9月の振り返り
9月のビットコイン価格(円)とイベント
9月のBTC相場は上昇。5万9,000ドル近辺から5万2,000ドル台半ばに下落、そこから切り返すと6万6,000ドル台半ばまで上値を伸ばした。ざっくり言えば、7,000ドル下がって、1万4,000ドル下がった格好だ。
8月後半から見ると、25日に6万5,000ドルで上値を押さえられると、5万2,000ドルまで下がり、6万6,000ドルまで戻す、いわゆる下に行って来いの展開となっている。
BTC/USD(日足)
エヌビディア株急落
レイバーデイ明けの金融市場はリスクオフに揺れた。日本銀行の植田和男総裁が経済財政諮問会議の資料で経済・物価が見通し通りなら追加利上げをする方針と従来の主張を繰り返したところ、円高が再燃。
円キャリー取引の巻き戻しを懸念したせいか、エヌビディア株が急落、史上最大の時価総額喪失を記録した。これを受けBTCは5万2,000ドル半ばまで急落、同社株が反発するとBTCも値を戻していった。
0.5%利下げ
8月の高値6万5,000ドルと、9月の安値5万2,000ドル台半ばとの半値戻しとなる5万9,000ドル台で上値を押さえられると、トランプ氏の暗殺未遂を受けたリスクオフでいったん値を下げた。
しかしFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ幅が0.5%となり、またトランプ氏が大統領候補として初めてBTCで支払を行ったことも好感され6万ドル台に乗せると、全値戻しとなる6万5,000ドルを目指して上昇していった。
中東情勢の悪化
ただし、イスラエルがヒズボラへの攻撃をエスカレートさせ、また6万4,000ドル近辺の200日移動平均線にも上値を押さえられていた。ところが、これまで暗号資産に対する言及を控えていたハリス氏がデジタル資産などの先端産業を支持すると表明したことを受けBTCは6万5,000ドル乗せに成功、6万6,000ドル台半ばまで値を伸ばした。
しかし自民党の総裁選後の円高の影響で日本株が急落するとリスクオフ気味に値を下げ始め、さらにイスラエルがレバノンに地上侵攻や10月に入りイランがイスラエルに報復攻撃を実施し、中東戦争への懸念が浮上したため、一時6万ドル近辺まで値を落とした。
BTC相場のリスク要因
先月のこちらのレポートで7月29日の7万ドルから8月5日の4万9,000ドルへの下落は3つの要因に分けられると申し上げた。
第1フェーズの7万ドルから6万5,000ドルまでの下落は中東情勢の悪化とハリス氏の追い上げ、第2フェーズの6万5,000ドルから6万1,000ドルへの下落は米国の景気悪化懸念、第3フェーズの6万1,000ドルから4万9,000ドルに至る急落は円高と日本株の暴落が主な要因だった。
円高リスク
9月のBTC相場もおおむねこうした要因で説明可能だ。まず第3の要因、円高。これはFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げと日銀の利上げによるものだが、市場に流動性を供給してきた円キャリートレードが巻き戻されると、世界中の脆弱(ぜいじゃく)なバブル相場が巻き戻される。その代表的な例が日本株とエヌビディア株だった。
PER(株価収益率)で見れば日本株は割高ではないという見方もできるが、その日本企業の収益が円安によって水増しされているとの見方もできる。
エヌビディアも確かにAIブームの中で驚くほど業績を伸ばしているが、2年前にETHのマイニングが終了し、GPUの需要が減るといわれていた頃から株価は10倍以上に膨れ上がり、一時アップル、マイクロソフトを抜いて時価総額で世界一になったことを適正と考えるかは見方が分かれる。
ただし、9月の日銀政策決定会合で植田総裁が景気・物価が見通し通りなら利上げを継続するとしつつも、市場が混乱している間は利上げをしないし、円高により物価上昇圧力が後退し時間的余裕が生じたとしたことから市場に安心感が広まった。
ただ、自民党総裁選後の円高で市場に不安が入った様に、今後はこの円高によるリスクオフという局面が度々現れ、BTC相場の変動要因となり続けそうだ。
米景気懸念
米景気後退懸念も後退した。9月FOMCでの利下げ幅は0.25%と0.5%で見方が分かれていたが、FRBは0.5%の利下げを実施、年内あと2回利下げをするとの予想を公表した。
8月は経済指標が悪化し、FRBが0.5%利下げに追い込まれるという見方からリスクオフとなったが、今回は指標はそれほど悪化していないがFRBは0.5%利下げで景気を支えてくれるという見方からリスクオンで反応した。何よりもFRBが金融緩和にかじを切ったことは長い目で見てBTC相場の転換点になると考える。
この様に、9月は第2、第3の下落要因に一応のめどがついたことに加え、ハリス氏の暗号資産への態度にやや改善が見られたことから8月の戻り高値6万5,000ドルをクリアしたが、中東情勢がむしろ悪化、上値を押さえられた格好となっている。