9月相場入りで、優待権利取りの動きに注目

 9月相場入りに伴い、月末の配当権利取りの動きなども今後強まってくると考えられます。加えて、個人投資家にとっては、配当のほかに株主優待の権利取りにも関心が向かうこととなるでしょう。

 機関投資家にとっては、ほとんどが株主優待の恩恵を受けられないとみられますが、個人投資家の優待権利取りによる株価上昇を見込んだ短期的な売買行動などは行われる可能性もあります。優待の権利を取得したいと考える個人投資家は、権利取りによる株価上昇というキャピタルゲインの獲得もにらんで、早めの投資行動を起こしたいタイミングでもあるでしょう。

 ちなみに、9月は400社弱の企業が株主優待を実施する予定になっており、年間では3月に次いで多い時期となります。なお、今年は月末実施企業の株主優待権利付き最終売買日は9月26日となります。

 株主優待制度導入の大きな目的としては株主数の確保が挙げられていました。ただ、2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴って、上場維持基準の一つである株主数が2,000人以上から800人以上に引き下げられました。

 これによって、上場維持のために株主数を増やす必要性は薄れ、優待制度を廃止する企業も増えつつあります。機関投資家サイドでも、株主優待が一定の株価の下支えにつながっていると評価する声もありますが、優待の分を配当に回した方がより良い施策と捉えられることで、今後も優待実施企業は減少していく方向と考えられます。

 とりわけ、QUOカードなどは換金性が高く個人投資家には好まれやすいですが、自社製品のPRなどにもつながらないため、配当へのシフトを促すような機関投資家のプレッシャーが強まっていくでしょう。

 こうした中、自社製品を知ってもらう、使ってもらうための株主優待、あるいは、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から地域貢献活動としての地元商品の提供などは、今後も継続していく、かつ企業価値向上につながりやすい株主優待になると考えられます。

 また、単に株主数を増やすのではなく、個人投資家に長期間の保有を促す意味から株主優待の意義は高まります。こちらはQUOカードなどにも当てはまるでしょうが、保有期間が長ければ長いほど優待価値を引き上げていくような施策が、これからは増えていく可能性が高そうです。なお、こうした施策は優待権利落ち後の株価下落を抑えることにもつながります。

 株主優待にはさまざまな内容がありますが、楽天証券のホームページからは優待内容、権利確定月、優待獲得最低金額などで、銘柄をスクリーニングすることができるようになっており、自分が欲しい優待銘柄を選択することができるようになっています。

 また、人気順のランキングもあり、注目度の高い株主優待の内容をチェックすることも可能になっています。以下は、時価総額1,000億円以上の大型株の中で、9月の株主優待人気が高い銘柄を業績動向と共にコメントしています。

9月末に株主優待実施の人気銘柄(オリエンタルランドやANAHD、日産自動車など15選)

オリエンタルランド(4661・東証プライム)

 3月末、9月末の株主に対して、「東京ディズニーランド」または「東京ディズニーシー」どちらかのパークで利用可能な1デーパスポートを贈呈しています。9月末は2,000株以上保有株主が対象で、保有株数が2,000株増えるに従って、パスポートの贈呈が1枚ずつ増えます。

 1万2,000株以上の株主6枚が最多となります。3月末株主は500株以上で1枚贈呈、4,000株以上は2枚(9月末株主と同数)になります。また、100株以上保有を3年以上継続している9月末株主にもパスポート1枚が贈呈されます。

 2025年3月期第1四半期営業利益は333億円で前年同期比13.8%減となっています。入園者数の増加で増収となったものの、人件費や諸経費、減価償却費などコストの増加が響きました。

 2025年3月期通期では1,700億円で前期比2.8%増の見通しです。ファンタジースプリングス開業によるテーマパーク事業、ホテル事業の増収を見込んでいます。年間配当金は前期比1円増の14円を計画しています。

ANAホールディングス(9202・東証プライム)

 3月末、9月末時点で100株以上保有の株主に、ANA国内線の搭乗優待、グループ各社・提携ホテルで利用できる株主優待を提供しています。搭乗優待券の回数は保有株数に応じて増加します(3月末、9月末ともに、100株以上1枚、200株以上2枚、300株以上3枚、1,000株以上7枚など)。優待割引運賃は通常の50%程度になるもようです。

 また、グループ優待クーポン18枚が入った冊子を発行しています。提携ホテル、国内・海外ツアー商品、空港内売店での買い物券、ゴルフプレー料金などが割引となります。

 2025年3月期第1四半期営業利益は303億円で前年同期比30.7%減となっています。国内・国際旅客、貨物ともに需要回復が継続し、売上高は第1四半期として過去最高になりましたが、燃油費・燃料税の増加、整備部品・外注費の増加などが響きました。

 2025年3月期通期では1,700億円、前期比18.2%減の見通しです。燃油費・燃料税、その他コストなどが膨らみ、営業費用が増加するようです。第1四半期は通期計画に対し順調な推移となっているようです。年間配当金は前期比横ばいの50円を計画しています。

日本航空(9201・東証プライム)

 3月末、9月末の株主に対して株主割引券と旅行商品割引券が発行されます。株主割引券は、日本航空、日本エアコミューター、日本トランスオーシャン、琉球エアーコミューター各社の国内線全路線を対象に、割引券1枚で片道1区間を50%割引で利用できます。

 3月末株主は100~299株保有株主が1枚、9月末株主は200~399株保有株主が1枚贈呈され、保有株数に応じて発行枚数が増加します。

 3年以上300株以上保有の株主は、各基準日ごとに1枚、追加で割引券が発行されます。また、100株以上株主には、海外、国内旅行の商品割引券がそれぞれ2枚ずつ年に1回、200株以上株主には年2回発行されます。パッケージ料金が3%の割引となるようです。

 2025年3月期第1四半期財務・法人所得税前利益は221億円で前年同期比29.5%減となっています。国際旅客やLCC(格安航空会社)などの売上が増加しましたが、燃油費や人件費、運航施設利用費などのコスト増が減益要因となっています。

 2025年3月期通期では1,700億円で前期比17.1%増の見通しとなっています。需要の増加、供給のタイト化によって、下期に向けて単価が上昇すると見込んでいるようです。年間配当金は前期比5円増の80円を計画しています。