米景気は急速に弱含み

 それでは、足元、どれだけ米景気が弱含んでいるか確認しましょう。8月に入って発表された、7月の雇用統計・ISM(米サプライマネジメント協会)景況指数は、米景気軟化を示すものでした。

【1】7月のISM景況指数は製造業が50割れ

 かなり弱く見えるのが、ISM景況指数です。50を割ると景況が悪いと判断しますが、8月1日に発表された7月の製造業景況指数は、前月比1.7ポイント低下して46.8となりました。

 ただし、5日発表のISM非製造業景況指数は、前月比2.6ポイント上昇して51.4となり、50を超えました。

 米国は製造業が早くから空洞化しているので、製造業が50を割っても非製造業が高ければ、米景気は堅調を保ちます。7月は、非製造業が辛うじて50を上回っています。この先どうなるか、9月に発表される8月の数字が注目されます。

ISM製造業・非製造業景況指数:2020年1月~2024年7月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

【2】雇用が緩む

 人手不足が続き、雇用は逼迫(ひっぱく)が続いてきましたが、7月は緩む兆しが見えました。完全失業率は4.3%まで上昇、非農業部門の雇用者増加数は20万人を割り、11.4万人となりました。

米雇用統計:完全失業率

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

非農業部門の雇用者増加数(前月比):2021年1月~2024年7月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所が作成

 米国では、インフレは徐々に低下しつつあります。それでも、これまでのインフレの累積効果で、生活必需品の価格が高くなり過ぎ、米国の消費に悪影響を及ぼす可能性があります。来年にかけて、米景気はさらに減速することが予想されます。

 ただし、それは循環的な景気低下であり、いわゆる「バブル崩壊」とは異なります。つまり、金融危機を伴う景気後退局面であったリーマン・ショックや、世界中で人々が巣ごもりする異常事態を招いたコロナショックとは、異なります。通常の循環的な景気悪化となると私は予測しています。米景気不安を震源とした、日経平均の暴落は行き過ぎと考えています。