米大統領選でトランプ氏優勢の見方強まる

 米国では6月27日、大統領候補による第1回討論会が開催されました。全般的には、バイデン現大統領の「高齢不安」にスポットが当たる形となり、支持率が1週間としてはここ約3年で「最大の落ち込み」を記録したとも一部で報道されています。

 直後の世論調査(NYタイムズとシエナ大学が3日公表)でも、トランプ氏の支持率は49%、バイデン氏は43%となり、前回6月調査でのトランプ氏48%、バイデン氏44%から、差が広がる状況となっています。さらに、7月13日にはトランプ氏への銃撃事件が発生し、直後の「強い姿勢」が拡散されたことで、結果的に大統領選挙の優位性が高まる形ともなっています。

 バイデン大統領撤退の可能性も含め、今後も大統領選に向けて紆余曲折はありそうですが、市場ではひとまず、トランプ大統領の復権を想定した動きが強まるものと考えられます。銘柄選別でも、トランプ氏の政策でメリットを受けそうな銘柄群への資金シフトが強まる見通しです。配当利回り3.5%以上の高配当利回り銘柄の中で、米国市場での売上構成比が高い銘柄、エネルギー関連銘柄、防衛関連銘柄などを選定しています。

(表)トランプ氏の政策でメリット期待の高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り(%) 7月12日終値(円) 時価総額  (億円) PER (倍) 騰落率 (%)
2768 双日 3.88 3,868.0 9,681 7.64 21.4
5021 コスモエネルギーホールディングス 3.72 8,065.0 6,836 8.58 42.3
5105 TOYOTIRE 4.11 2,554.0 3,935 8.74 8.2
5444 大和工業 4.97 8,045.0 5,229 9.32 8.1
6301 コマツ 3.52 4,745.0 46,175 12.94 28.7
注:騰落率は年初来

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが3.5%以上(7月12日現在)
  2. 時価総額が3,000億円以上
  3. トランプ氏の政策でメリットが期待できる銘柄

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 双日(2768・東証プライム)

 総合商社の一角で、2003年にニチメンと日商岩井が統合して発足しました。収益構成比上位事業は自動車、化学、リテール・コンシューマーサービス、金属・資源・リサイクルとなっています。

 加えて、ボーイング代理店として航空機取り扱い実績では国内トップです。国内総合商社で唯一、炭鉱操業を行っており、石炭市況の影響を受けやすくなっています。また、三菱商事と鉄鋼事業を統合したメタルワンは国内鉄鋼商社の大手企業でもあり、株主還元は、調整後DOE(株主資本配当率)4.5%を基本とする方針を発表しています。

 2024年3月期親会社の所有者に帰属する当期利益は1,007億円で前期比9.4%減となっています。石炭事業の市況下落とコストの増加などによって、金属・資源・リサイクル事業が足を引っ張る形となりましたが、年間配当金は5円増となる135円です。

 一方、2025年3月期の親会社の所有者に帰属する当期利益は1,100億円で9.2%増の見通しとしています。石炭市況下落のマイナス影響が続く見通しですが、自動車、航空・社会インフラ、エネルギー・ヘルスケア事業が総じて増益となる見込みです。年間配当金は15円増の150円を計画しています。

 また、民間航空・宇宙・防衛事業を手掛ける専門商社の双日エアロスペースをグループ会社に抱えています。同社では2021年にJALUXを持分法適用のグループ会社としており、双日エアロスペースの民間航空事業をJALUXにシフトさせています。

 それに伴うリソースの強化によって、双日エアロスペースは防衛事業を強化する方向にもなっています。防衛装備品を欧米各国より輸入・販売しているほか、戦闘機、ヘリコプター、艦艇をはじめ、海上自衛隊運用のエアクッション艇、戦闘機などの運用には欠かせない緊急時の着陸拘束装置など幅広く扱っています。

2 コスモエネルギーHD(5021・東証プライム)

 コスモ石油からの株式移転により、2015年10月に発足した持株会社です。燃料油の国内販売シェアは12%程度と推定されます。原油処理能力は1日当たり40 万バレル程度で、千葉、堺、四日市の3製油所で展開しています。

 石油精製・販売のほかに、エチレンやパラキシレンなどの石油化学、アブダビ首長国での石油開発事業などを行っています。また、再生エネルギー事業なども手掛け、陸上風力発電の国内シェアは第3位です。2024年4月に資本業務提携を行い、岩谷産業が筆頭株主となっています。

 2024年3月期経常利益は1,616億円で前期比1.8%減ですが、在庫影響を除いたベースでは1,622億円で過去最高を更新しています。石油事業がマージンや経費の改善で増益となり全体業績を下支えしましたが、石油化学事業は市況の悪化、石油開発事業は原油価格の下落などでそれぞれ減益となっています。

 年間配当金は前期比75円増の150円としています。2025年3月期経常利益は1,650億円で前期比2.1%増の見通しです。前年度に発生したプラスのタイムラグ影響の剥落などで在庫影響を除いたベースでは若干の減益を見込んでいるようです。なお、年間配当金は前期並みの300円を計画しています。

 トランプ氏は再生エネルギー否定派とされ、化石燃料優遇策などが実施されてくると予想されます。米国では石油株などの上昇が予想され、同社など国内石油株にも短期的に連想感が働いてくる公算が大きいでしょう。

 その他注目点としては、2026年3月期までの中期経営計画で、3カ年累計の総還元性向を60%以上としているなど、石油業界の中ではトップクラスの還元姿勢が挙げられます。中期的には、岩谷産業の推進する水素事業の展開において、重要な役割を担っていく可能性などが期待材料となります。