今後10年の成長ドライバーは「AI革命の進展」とみる

 米国株の成長を見込む上で重要なドライバー(原動力)となるのが「AI革命の進展」とその経済的効果と考えています。株式市場は大小のスピード調整や新陳代謝を経ながら、AIの進化が生み出す経済、社会、生活の変化に応じた付加価値を提供していく企業群がS&P500の長期トレンドに寄与していくと見込んでいます。

 米国の大手企業のCEO(経営者)は常にビジネスの効率化を考え、自社が保有しているデータの活用や業界データを分析し、事業やサービスの収益性を改善させることで(株価上昇を含む)株主還元と向き合っています。

 図表3は、世界のAI市場規模(ハードウエア、ソフトウエア、サービス分野の合計規模)の長期見通しを示したものです。2032年には2兆7,450億ドル(約440兆円)に拡大し、2022年の実績(1,290億ドル)に対して約21.3倍に成長していくと予想されています。

<図表3>世界のAI市場規模は急拡大していく見通し

(出所)Market.U.S.の長期予測を基に楽天証券経済研究所作成

 AIはチャットでの活用(生成AI)から広く製造業、サービス業、医療業界などに波及するAGI(汎用AI)に進化し、産業界の付加価値創造に寄与していくと見込まれています。こうした過程で、「AIが人類の英知を超えてくる局面(シンギュラリティー)」が想定していたよりも早く到来するとの見方が有力です。

 AIの英知は指数関数的に進化し人類の英知の総和を超え、ASI(人工超知能=Artificial Super Intelligence)に進化するとの説も浮上しています。

 ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は6月21日、「AGIを目指すことが先端のAI研究者のテーマであり、5年以内、場合によっては3年ぐらいでAGIの時代が訪れる」「AGIが脳の神経細胞のようにつながり、人間の1万倍賢くなるのがASIである」と述べました。

 AIの進化がロボティクス(ヒューマノイド)、自動運転、医療技術と結びつき、経済、社会、生活を変化させるダイナミズムを織り込む米国株式市場のトレンドを予想しています。

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