米国株式の「長期積立投資」を続ける意義を検証

 今年前半に最高値を更新してきたS&P500が、上述した不確実性で夏場に調整を余儀なくされる可能性も否定できません。ただ、相場見通しで売り買いを繰り返して成果を出し続けるのは「言うは易く行うは難し」です。現代投資理論に沿えば、長い時間をかけて積立分散投資(定時定額投資)を続けていくことが「資産形成」の王道と考えます。

 短期的な市場の変動で利ザヤを稼ごうとせず、10年、20年、30年という「時間」を味方につけて「投資資金に働いてもらう」「誰でも長期で資産を形成できる」との考えは古くから投資教育のプリンシパル(原理)として米国で普及してきました。

 図表3は、約30年前の1995年1月に5万円を米国株式(S&P500総収益指数/円ベース/為替ヘッジなし)に分散投資。その後も毎月末に5万円ずつ継続的に投資してきたケースをシミュレーションしたものです(6月末時点)。1995年1月から354回の定時定額投資を実践してきた結果、累計投資額は簿価ベースで1,770万円(=5万円×354回)でした。

 この間の「ドルコスト平均法」と「複利運用」(雪だるま)効果で、投資元本の時価資産は6月末時点で約1億5,298万円に膨らんできました。これは、時価資産が累計投資額の約8.64倍に成長してきた積立投資による成果を示しています。

<図表3>米国株の長期積立投資で時価資産は増加してきた

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1995年1月~2024年6月)

 30年の間には幾度もの株価下落や為替変動を交えてきました。実際、株式や為替が大なり小なりの変動に直面するケースは珍しくありません。

 1995年1月以降の長期で振り返ると、S&P500の円ベース総収益(配当込みトータルリターン指数)の年率平均(前年同月比騰落率の算術平均)は+14.2%と国内の預貯金はもちろん債券(確定利回り証券)の利回りや日本株のパフォーマンスを大きく上回り、時価資産を増やすことができた市場実績を検証できます。

 今後も大統領選挙動向、金利、景気、地政学リスクを巡る不透明感が顕在化すると、株価も為替も需給変化に応じ一時的に揺れる相場はありそうです。そうした場面でも「Stay Invested」(ステイ・インベステッド=市場が変動しても投資をやめない)というマインドが大切だと思います。

 大小のリスク(リターンのブレ)を乗り越え米国株式に連動を目指す公募投資信託の積立投資やETF(上場投信)の積み増しや買い持ちを続けていくことが資産形成に寄与すると考えています。

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