株価の下値不安は過ぎ去ったのか?

 このように、足元の相場は株価の落ち着きどころを探りにいくような感じですが、先週の安値が大底となって、中長期的に株価が戻っていくのでしょうか?

 先週9日(金)付で、トウシルに掲載したレポート(『3分でわかる!今日の投資戦略』)でも言及したのですが、過去においても株価が想定以上に急落する場面があった時、「ITバブル崩壊」や「リーマン・ショック」、「コロナ・ショック」といった具合に、株価の下落にネーミングがつけられるあたりで相場が落ち着くという経験則があります。

 足元の相場も、「令和のブラックマンデー」や「円キャリー・ショック」など、いくつかの候補が登場し始めていることもあり、そろそろ足元の荒い値動きが落ち着いてくると思われますが、直近の安値が大底となるのかについては、史上最大の下落幅と上昇幅という、誰も経験していない事象が発生した直後でもあり、現時点で結論づけるのは少し危険かもしれません。

 そこで、過去の相場で押さえておきたい場面があるので、ここで確認していきます。

図3 日経平均(週足)の動き(2006年~2009年)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図3は、2005年から2009年にかけての日経平均の週足チャートになります。

 実は、この期間のあいだに「〇〇ショック」と呼ばれる場面が3回ありました。

 最初は、2006年1月の「ライブドア・ショック」です。この時は、株価の下げも一時的で、その後も早い段階で上昇に転じ、下落前の高値も更新していて、相場に与えるショックとしては軽微だったケースと言えます。

 むしろ、同年3月の日本銀行の量的緩和解除をきっかけとする株価下落の方が大きくなっています。それでも、株価は52週移動平均線がサポートとなり、これ以降も52週線を発射台として株価の回復基調が1年以上にわたって続き、日経平均の株価水準も1万8,000円台をうかがうところまで切り上げて行きました。

 続いて、この日経平均1万8,000円台超えが意識されたところで起きたのが、2007年8月の「パリバ・ショック」です。

 このショックの背景には、いわゆる「サブプライム・ローン問題」があり、米国の住宅ローン債務の焦げ付きが顕在化し始めたことで景気も悪化していきました。時折、株価が反発する場面が見られたものの、移動平均線が上値の抵抗となり、相場は中期的な下落トレンド入りとなっています。

 そして、この下落トレンドに追い打ちをかける格好となったのが、2008年9月の「リーマン・ショック」です。金融システムの危機を招いたことで、さらに株価が大きく下落して行きました。

 したがって、「〇〇ショック」などの株価急落時につけた安値が大底となるのかについては、(1)「その後に景気後退が進行するか?」、(2)「金融不安につながる問題(債務問題、金融商品の売買が機能不全に陥る)が浮上するか?」の2つが、重要な判断ポイントになると言えます。

 実際に、冒頭でも紹介した1987年10月の「ブラックマンデー」は、下げ幅は大きかったものの、その後の景気後退が回避されたことで、日経平均は6カ月程度で急落前の高値を更新しています。

 したがって、今後の株式市場が回復基調を辿るのか、それとも、さらに下落していくのかは、(米国をはじめとする)景気の状況次第ということになり、しばらくのあいだは、米経済指標などの結果に敏感に反応しやすい相場地合いが続くことになりそうです。