「長期積立投資」で検証する時価資産が最高水準を維持

 3月末に過去最高値を更新したS&P500は、4月にいったんの調整モードを余儀なくされました。とは言っても、厳密には米国市場で一般的に言われる「Correction」(直近高値から10%以上の下落)に及ばない「調整」にとどまっています。

 一方、「先進国で独り勝ち」とも言われる米国経済の堅調とインフレ収束ペース鈍化を反映して債券金利が上昇。為替市場ではドル高円安が進行したことによる「為替差益」(ドル高・円安によるメリット)拡大が寄与して「円建てS&P500総収益指数(為替ヘッジなし)」は過去最高値を更新しました(4月26日)。

 S&P500が高値から下落した分を、為替のドル高・円安進行が補った形です。

 もちろん、今後の金利動向、景気動向、企業業績、地政学的リスク、大統領選挙の行方などにより、米国株価も為替相場も投資家心理や需給の変化に応じ一時的にせよ揺れる可能性があります。

 こうした中で再認識したいプリンシパル(原則)は、長期積立投資で最も大切にしたい「市場が短期的に揺れても投資を途中で止めない」というマインドです。「積立投資を始めた初期段階や途中で資産が一時的に目減りしたり、思ったように資産が増えなかったりしても、動揺したり諦めずにコツコツと投資を継続していくことが大切」と筆者は考えています。

<図表3>為替差益も追い風に米国株式の長期積立実績は好調を維持

*上記は長期市場実績に基づく検証であり、将来の投資成果を保証するものではありません。
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年4月末時点)

 長期目線に立った「米国株への積立投資(定時定額投資)効果」を市場実績で検証したいと思います。図表3は、約30年前の1994年1月に5万円を米国株式(S&P500総収益指数/円ベース/為替ヘッジなし)に投資。その後も毎月末に5万円ずつ継続的に投資してきた場合をシミュレーションしたものです(2024年4月末時点)。

 1994年1月から364回の定時定額投資を実践してきた結果、累計投資額は簿価ベースで1,820万円(=5万円×364回)となりました。この間の「ドルコスト平均法」と「複利運用」(雪だるま)効果で、投資元本の時価資産は、4月末時点で約1億5,500万円に膨らんできました。これは、時価資産が累計投資額(累計投資元本)の約8.5倍に成長してきた投資成果を示します。

 1994年以降の約30年の間にはITバブル崩壊(2000年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)、インフレショック(2022年)などを受けた、幾度もの株価下落や為替変動を交えてきました。

 長期投資を実践していく間には、株式や為替が、大なり小なりの変調に巻き込まれるケースは珍しいことではありません。

 1994年1月以降の約30年で振り返ると、S&P500の円ベース総収益(配当込みトータルリターン=年率平均で+14.0%)が、国内の預貯金はもちろん債券(確定利回り証券)や日本株のパフォーマンスを大きく上回り、時価資産を増やすことができた市場実績が見てとれます。

 大小のリスク(リターンのブレ)を乗り越えながら米国株に長期積立投資を続けていくにあたり、資産形成効果をイメージする参考情報にしていただければと思います。

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