ゴールデンウイークの中日(なかび)となる今週4月30日(火)~5月2日(木)の日本株は、29日(月)の為替介入によると思われる急速な円高進行の影響を受け、神経質な展開になりそうです。
日本が祝日だった29日午前、海外の外国為替市場では一時1ドル=160円台まで急速な円安が進んだものの、一転、29日夕方には154円台まで円高が急速に進行しました。
29日のニューヨーク外国為替市場で一時的に円が急騰する場面もありながら円安ドル高にやや戻し、30日(水)の東京市場では156円台後半で推移しています。
日本政府の為替政策の実務を取り仕切る財務省の神田真人財務官は29日午後、為替介入の有無について「申し上げない」と報道陣に答え、介入したかどうか明らかにしませんでした。
しかし、最近の為替変動は異常な値動きで看過できないとも述べ、介入を否定はしませんでした。今週以降も、再び1ドル=160円を超える水準まで円安が進むと、為替介入らしき動きが出るのか出ないのか。今週、来週以降の日本株は為替相場に大きな影響を受けそうです。
連休明け30日(火)の東京株式市場の日経平均終値は前週末比470円高となる3万8,405円で、主力株に買いが集まりました。
前日の米国株式市場では、中国で自動運転を行う条件が整ったと報じられたテスラ(TSLA)が前週末比15%近く上昇するなど、米国株は主要3指数が小幅ながら続伸したことが好材料となりました。
日本銀行が26日の金融政策決定会合で政策の現状維持を決め、日銀が円安対応のための早期利下げに動くとの見方が後退したことも買いを誘いました。
先週末に自社株買いや今期の増益計画を発表した日立製作所(6501)や今期の純利益予想で最高益更新見通しを公表した三菱電機(6503)、自社株買いを明らかにしたコマツ(6301)が急騰し、上場来高値を更新しました。
今週の日本株市場は3営業日のみの取引ですが、4月30日と5月1日(水)には、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、2024年の利下げ開始時期や利下げ回数についてネガティブな意向が示される恐れがあります。
また4月30日(火)にはアマゾン・ドット・コム(AMZN)、5月2日(木)にはアップル(AAPL)など、多数の米国企業が2024年1-3月期の決算を発表。
5月3日(金)には米国の4月雇用統計も発表されます。
連休の谷間の3営業日とはいえ、米国株の反発を受けて日本株も急反発しやすい状況といえるでしょう。
一方、5月1日終了のFOMCで2024年の利下げについて悲観的な観測が優勢になると米国株の急落も考えられる、本当に忙しい1週間になりそうです。
先週:米ハイテク株はグーグル親会社好決算で急反転! 日本株も不安定ながら反発
先週の日経平均株価は乱高下しつつも、26日(金)終値は前週比866円(2.3%)高の3万7,934円でした。しかし、先々週の半導体株急落による6.2%の大幅下落の半値戻しには至りませんでした。
先週は「マグニフィセント7」といわれる米巨大IT企業の決算発表、そして26日(金)終了の日銀の金融政策決定会合に振り回された1週間でした。
米国株は週間としてはかなり大きなリバウンド上昇になりました。機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週比2.67%高。ハイテク株が集まるナスダック総合指数にいたっては前週比4.23%も急騰するなど、ともに2023年11月第1週に米国株の上昇相場が始まって以来の大幅な上昇率でした。
24日(水)に決算発表したフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)は2024年1-3月期の業績は市場予想を上回ったものの、4-6月期の売上高見通しが予想を下回りました。
AI向け設備投資の増加が今後、収益の圧迫要因になることも嫌気され、翌25日(木)には前日比11.0%安と急落。日米の全体相場にも大きな悪影響が及びました。
それを救ったのが25日(木)発表のグーグルの親会社アルファベット(GOOG)やマイクロソフト(MSFT)の決算。ともにAI(人工知能)サービスを提供するクラウド事業が好調で予想を上回る決算を発表し、全体相場の上昇にも大貢献しました。アルファベットは初の株主配当実施を発表したことも好感されました。
25日に発表された米国の2024年1-3月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率換算で1.6%の伸びにとどまり、前四半期の3.4%の伸びから大きく減速。
その一方、GDP価格指数(GDPの数値から物価変動の影響を取り除くための指数)など物価指数は前期比で上昇。
市場には景気が減速しているのに物価の上昇が止まらないスタグフレーションに対する警戒感が台頭しています。
26日(金)発表の米国の3月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も前年同月比で2.7%の上昇と予想をわずかに上回り、粘着質な物価の高止まりが依然として続いていることが判明。
米国の長期金利の指標である10年国債の利回りも25日(木)以降、一時4.7%台まで上昇するなど高止まりしています。
本来、株価にとって金利上昇は天敵。それを見て見ぬふりをするかのように「かなり強引に」米国株はリバウンド上昇しているため、今週は揺り戻しもありそうです。
一方、日本株では、米国の長期金利の上昇が運用資産の収益向上につながる保険業が週間の業種別上昇率首位となり、主力の第一生命ホールディングス(8750)が前週比5.2%高。
保険や証券、銀行業など金融関連株に見直し買いが入りました。
半導体株では先々週に前週比15.1%安と急落した主力の東京エレクトロン(8035)が小幅に戻して前週比2.1%高。
しかし、半導体切断装置のディスコ(6146)は先々週の前週比11.5%安に続いて先週も前週比7.6%安と続落するなど、半導体株はこれまで上がり過ぎただけにまだ調整が続きそうな気配です。
26日(金)には日銀の金融政策決定会合が終了しました。
植田和男総裁は会合後の記者会見で、円安が物価上昇に大きな影響を与えているわけではないと発言。円安に対して「ゼロ回答」といえる姿勢が29日(月)に1ドル=160円まで急速な円安が進んだきっかけでした。
それだけに、今後も「為替介入のような」動きで強力な円安トレンドを食い止められるかどうかは非常に不透明といえるでしょう。
今週:連休の谷間の3営業日は米FOMC、日米企業決算、雇用統計発表で乱高下必至?
今週は、先週に引き続き、日米の2024年1-3月期の企業決算が相次ぎます。
特に、日本が連休入りする日本時間5月3日(木)早朝に決算発表するアップル(AAPL)は世界的にiPhoneの販売が頭打ちになり、AI(人工知能)ブームにも乗り遅れています。
その決算発表が全体相場の急落につながるかもしれません。
とはいえ、米国は好景気が続いているため、これまで発表された2024年1-3月期決算も大半は予想を上回る好調ぶりを示しています。
そのため、今後も調整気味の米国株の下支え役になる可能性の方が高いでしょう。
一方、日本でも4月30日(火)には半導体関連の人気株レーザーテック(6920)や東京エレクトロン・デバイス(2760)が決算発表。
5月1日(水)には三井物産(8031)、2日(木)には三菱商事(8058)や住友商事(8053)など大手商社の決算が発表予定です。
大株主である米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の意向に応えるべく、さらなる増配や自社株買いなど株主還元策の強化を発表すれば、全体相場にとっても好影響でしょう。
米国では何といっても、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル総裁が5月1日(水)のFOMC終了後の記者会見で、今後の利下げ見通しについて何を話すかに注目が集まりそうです。
米国では5月1日(水)にISM(全米供給管理協会)の4月製造業景況指数や3月の雇用動態調査(JOLTS)の求人件数、そして3日(金)には4月の雇用統計、4月のISM非製造業景況指数など、雇用や景気の現状が分かる重要指数が相次いで発表になります。
物価高と不景気が共存するスタグフレーション懸念がある中では、ISM製造業・非製造業景況指数が落ち込むと株価には悪影響でしょう。
ISMの指標には価格指数もあるため、その動向にも注目です。
また今週発表される、さまざまな米国の雇用関連指標が強すぎると、賃金の上昇を通じて物価の高止まりが続くことになります。
日本では、4月28日(日)に投開票が行われた衆議院補欠選挙の3選挙区全てで立憲民主党の候補が勝利。
3議席を失った岸田自民党政権にとっては痛撃で、今後は政治リスクが日本株の足を引っ張るかもしれません。
米国FOMCや雇用統計、為替介入の有無、アップル決算など連休中にもかかわらず、株式市場を急変動させる材料満載の1週間。
投資家の多くが休暇をとっているため、ちょっとした仕掛け的な動きで株価が急変動する可能性も高いので注意が必要といえるでしょう。